『ランチのアッコちゃん』『BUTTER』など、女心の機微を描き人々を魅了し続ける作家の柚木麻子さん。前編では、“強炭酸エナドリ短編集”と呼ばれ、読後の爽快感が話題を呼んでいる新刊『あいにくあんたのためじゃない』の裏側に迫る。
国や環境によって、求められるものは変わる
さらに、イギリスと日本の違いを感じたエピソードを話してくれた。
「イギリスで著者近影を送ってほしいと言われたので、とっておきの無邪気で若く見える写真を送ったんです。ところがこちらイギリスでは不評なようで、他になにか写真はないか、と(笑)。日本で女性作家の著者近影というと、少し少女っぽくて、優しい感じがあって、少し遠くを見ていて、空想の世界で遊んでいるようなものを求められる。ところがイギリスは、明るい小説を書いている人でもクールな写真が使われているんです。とんでもない豪邸の薄暗い部屋で、眉間に深いシワを寄せて、ふてくされているのが粋なんですよ(笑)」
場所によって、受け取られ方も求められるものも変わることを体感した柚木さん。
「悩みがあっても、その悩みは場所が変われば解消されるかもしれないという視点は、常に持っていていいのではないかと思います。ついつい自分のせいにしてしまいがちですが、自己否定せずに少し引いて見てみると、実は今いる環境のせいなのかもしれない。そう思うと、とてもラクになると思うんです」
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interview & text: Akiko Yoshida photo: Tomoko Hagimoto