横浜市営バスの運転手に対し、夏休みを1日1万円で買い取ると市の交通局が通知した。このことを市議がXで取り上げ、波紋が広がっている。

この通知では、人手不足が深刻なことを理由に挙げ、希望者を募っている。違法ではないかとの声が出ているが、交通局は、「有給休暇ではなく、公務員の特別休暇の買い上げのため、違法性はまったくありません」と説明している。

「お金を稼ぐチャンスだ」「安すぎる」「違法では」と様々な意見

「ついにここまで来たか!」。こうX上で投稿したのは、12期連続で当選している太田正孝横浜市議(無所属)だ。

2024年5月30日のこの投稿では、「バス乗務員の夏季休暇について」と題した市交通局の人事課長からの同日付通知の画像をアップして、人手不足で運転手の夏休み買い取りがあったとした。

その通知を見ると、まず、「2024年問題」と呼ばれる時間外労働の上限規制などの影響で、「人員不足が深刻な状況にあります」と説明した。そして、夏季休暇の期間は、「さらに厳しい状況になることが想定される」として、24年度に限って、付与された夏季休暇の5日間すべてを取得しない乗務員には、5日間で5万円を支給すると告知した。支給を希望する乗務員は、6月15日までに申し出を受け付けるとしている。

太田市議の投稿は、6000件以上リポストされて拡散している。バス運転手の夏休み買い取りについては、様々な意見が出ている。

買い取りに理解を示す声としては、「お金を稼ぐチャンスだと捉えるのも一つの考え方だ」「自分の生活スタイルに合わせて、賢明な選択をすればいい」といった書き込みがあった。一方、その内容については、「日給一万とかバイトかよ…」「安すぎる」などと疑問も相次ぎ、そもそも夏休みを買い取ることに対して、労働基準法などに違反するのではないかとの指摘も多かった。

横浜市交通局の人事課は31日、J-CASTニュースの取材に対し、投稿された通知を出したのは事実だと認めたうえで、次のように説明した。

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市交通局「支給額が見合わないと考えれば、夏休みを取ってもいい」

「違法性は、まったくありません。有給休暇の買い上げなら違法になりますが、公務員には、特別休暇がプラスされており、その1つに夏季休暇があります。それに代わる支給をありがたいと思う職員もいると聞いており、労働組合にも提案して円満に合意しています」

夏休み買い取りを考えた理由については、こう話した。

「乗務員には、民間と同様に、有給休暇を年間20日付与していますが、使い残す人が多いため、例年は3月に取得が集中します。6~9月に取得できる5日間の夏季休暇を取らなければ、有休で夏休みを取る人が増えるため、3月に人手が足りなくなるのをある程度は防ぐことができると考えました」

2024年問題などによる人手不足は深刻だといい、4月1日のダイヤ改正で市営バスを減便したほか、まだ不足が続いて、同月22日に保土ケ谷営業所で2回目の減便を実施したという。

「どの営業所も、人が足りておらず、このままでは年度末にもっと足りなくなると危機感を持っています。人が少なくなると減便になってしまうため、市民の足を守りたいと考えました。乗務員から反発の声は聞いていません。5万円では見合わないと考える場合は、夏季休暇を取ってももちろんいいわけです」

市の交通局では、有給休暇も夏季休暇も取りやすくしており、本庁では有休がなかなか消化できない職員もいるが、バスの乗務員はどちらも計25日間完全消化しているという。

「こうした取り組みは、他の自治体ではあまり聞いておらず、独自に考えて行うことにしました。しかし、あくまでも緊急避難的に行うものです。乗務員が集まらなくなることも考えられますので、やりたいわけではありません。来年度は、人手を確保して、こうしたことをやらないようにしたいと考えています」

(J-CASTニュース編集部 野口博之)