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●「温泉につかるニホンザル」で有名な長野県の「地獄谷野猿公苑」へ。最寄りの湯田中駅と渋温泉の魅力も併せてご紹介します。

 日本で暮らす人なら、人間のように温泉でくつろぐニホンザルの姿を、テレビやポスターなどで一度は見たことがあるでしょう。その場所こそが長野県北部の「地獄谷野猿公苑」です。世界で唯一、温泉に入るサルが見られる場所とあって、世界中からたくさんの観光客が訪れています。

 風光明媚でのんびりしたイメージなのに”地獄”と呼ばれている理由は、昔から険しい崖と深い雪に囲まれた土地のいたるところから温泉の湯気が立ち上る、どこか異世界的な風景に由来するそう。しかし、この温泉に浸かるサルの姿は地獄どころか極楽そのもの。


バス停「スノーモンキーパーク」から徒歩約10分で「地獄谷野猿公苑入口」に到着。車で行く場合は駐車場が2カ所あるが、そこからも20〜30分は歩く

 東京からは北陸新幹線で長野駅まで最速79分、そこから長野電鉄特急で38分の湯田中駅で下車。湯田中駅からはバスで15分。バス停「スノーモンキーパーク」からは徒歩25分ほど、約1.6kmの道のりです。

 「地獄谷野猿公苑入口」からは山道をハイキングすることになるので、歩きやすい服装と靴で行きましょう。きれいな空気いっぱいの新緑の中を歩くのもまた極楽です。


公苑の入口から見た風景。管理センターには休憩所と売店があり、サルの可愛いお土産物も販売中

 公苑の入り口には管理センターがあり、そこで入場料を支払って入ります。足を踏み入れると、目の前に高く吹き出す天然温泉が! 残念ながらここには人間が入れる温泉施設はありませんが、バスで下った先に全国的に有名な湯田中・渋温泉郷があるので、そちらで楽しみましょう。

おサルさんの大群がやってきた!


山から続々と降りてきたニホンザルの群れ

 着いた時、サルは一匹もいませんでした。山に住んでいる野生のニホンザルに施設のスタッフが餌を与えていて、サルは餌をもらうために公苑に下りてくるので、常にそこにいるとは限らないのです。


サルは人間に慣れているので近づいても逃げない

 絶対におサルさんが見たい! という人は出かける前に公式HPの「サルたち出勤予報」を確認するのがオススメ。出会える確率が上がります。また公苑内を映すライブカメラもあるのでご確認を。


カメラ目線ではいポーズ!

 この日は、餌の時間に合わせて向かったので、ちょうど次から次へとサルがやってきました。「お猿さんが来た! ここにも、あそこにも!」と興奮していたら、どこからともなく続々とさらに多くのおサルさんが出てきてあっという間にニホンザル天国に。


可愛らしい子ザルたち

 春から初夏はニホンザルの子育ての季節。子ザルたちはみんなで集まって遊んでいて保育園のよう。可愛い姿をたっぷり堪能できます。


ひょっこり飛び出す子猿

 今回、訪れた日がかなり暖かかったこともあり、残念ながらおサルさんが温泉に浸かる様子は見られませんでしたが、これほどニホンザルと近い場所で触れ合えて、その生態を見られただけでも、わざわざ来た甲斐があったと思えました。

湯田中駅の純喫茶で味わうクリームソーダは格別の味


湯田中駅近くの「ティーサロン都」。長野県下高井郡山ノ内町平穏2993-4。営9:00〜18:00

 おサルさんと遊んだ後は、バスで湯田中駅へ。駅の周辺には地元の人用の公衆温泉やレトロな商店のほか、おしゃれなカフェやクラフトビールの店もあります。その中で、ぜひ立ち寄ってほしいのが、懐かしい雰囲気の純喫茶『ティーサロン都』です。


「ティーサロン都」の昭和レトロ感溢れる店内

 夕暮れの光が差し込む店内はクラシックなインテリアで、とても落ち着く雰囲気。柔らかな物腰の優しいマダムが出迎えてくれます。


クリームソーダ500円

 ドリンクメニューは豊富ですが、山歩きの後でのどが渇いている人も多いと思います。そんなときにオススメしたいのは、レトロ喫茶の王道、クリームソーダ。グラス越しにキラキラ反射する光を愛でながらゆっくりいただけば、旅の疲れもじんわり癒されていきます。もちろん、オーダーごとにサイフォンで淹れてくれるコーヒーも最高です。


メニューには信州そばやうどん、お酒も

 ちなみに純喫茶ではありますが、食事メニューの美味しさにも定評があります。朝9時から18時までの通し営業なので、周りの飲食店が営業していない午後遅い時間帯に到着した場合の食事処としても便利です。

渋温泉で温泉巡りもまた楽し


湯田中駅から車で5分程の渋温泉の夜

 もちろん、最後は湯田中駅そばの渋温泉へ。地元の人が毎日利用する外湯(共同浴場)が九つあり、渋温泉の旅館に宿泊すると専用の鍵を借りて九つの外湯に入れる「九湯めぐり(厄除巡浴外湯めぐり)」が楽しめます。

 それぞれ源泉や効能が異なる外湯を、祈願手ぬぐいにスタンプを押しながらめぐります。風情溢れる温泉をぜひ味わって帰りましょう。

●著者プロフィール

工藤真衣子
Photographer:人物を中心に様々な媒体で撮影。グラビア、インタビュー、プロフィール、ドラマ映画スチールなど。ライター:食レポ、レシピ記事は現地系異国メシ、珍しい食材、味のある店など個人的に好きな店や料理を紹介。新宿御苑前で写真館「スタジオ アトリーチェ」経営。