総務省の有識者組織「公共放送ワーキンググループ(WG)」が2024年5月23日、NHKの国際放送に広告料収入の導入を検討する議論を始めた。この内容に、国内放送でも広告料を取るべきだという声がSNSで上がった。
現在の放送法では、NHKによる企業などの広告放送は禁止されている。もし国際放送に広告料収入が導入された場合、受信料制度にどのような影響が出るのか。
民間放送事業者から強い反発が予想される
NHKの国際放送には「NHKワールド JAPAN」がある。外国の衛星放送やケーブルテレビなどを通じて、英語でニュース・番組を24時間放送し、インターネットでも閲覧可能だ。ラジオでも17言語で放送している。
慶應義塾大学メディア・コミュニケーション研究所教授の津田正太郎氏に取材した。国際放送での広告導入が国内向け放送にまで波及することがあれば、広告を取り合う民間放送事業者からの強い反発が予想されると指摘する。また、民間放送と同様に広告を流し、視聴率重視の番組作りに傾くことを望まない視聴者も多いのではないかとみる。
しかし、国際放送での広告の導入をきっかけに、国内放送でも受信料以外の収入源を探して、利用者負担を軽減すべきだという声が上がることも考えられるという。
「万人を満足させることは不可能としても、利用者がNHKに向ける期待と、負担に対する納得感をなんとか両立させる制度設計が求められているのではないでしょうか」
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BBCの国際放送でも広告
一方、国際放送で新たな収入源を模索すべきだという論理は「一定の説得力がある」と、津田氏。国内向けサービスとは異なり、海外在住者や旅行者向けのサービスというだけではなく、日本の国際宣伝のために行われている部分も大きいからだ。
NHKと同じ公共放送の英国放送協会(BBC)は、すでに海外向けサービスで広告を入れているという。さらに、国内向けの一部サービスでも広告を入れようとする動きもある。「BBCの受信料をめぐっては議論が続いており、これまで通りのやり方では立ち行かないことが明らかになりつつある」。