オープン直後に乗り込んで。
やっとサンドイッチを買うことが出来た日、私は、鶏のココナッツカレーを選んだ。興味本位で、マヨネーズもお願いして、その日の温野菜だったもやしとカボチャに、大根とにんじんのマリネ、コリアンダーを加えてもらった。食べてみて、あ〜大好きなタイプだ、と理解した。カレーの汁気がパン生地の半分くらいまで染みこんでいる、それがまさに好みだった。私は、タレとか煮汁が染み込んだご飯が大好きなのだ。それは、バゲットでも同じなんだなぁ。どうだろう?と思っていたマヨネーズも、カレー味と自然に溶け合って、とてもおいしかった。ココナッツカレーを家で作ったときに、お米と食べる以外だと米麺を合わせることはよくするけれど、サンドイッチにしてみたことは一度もない。なんでしたことがなかったのか不思議なくらい、むしろ、バゲットに挟んだほうが好きかもしれないと思うくらい、好みの味だった。
入り口とおかずのショーケースの間に貼られている、選択の手順。サンドイッチに、プラス€3.50でデザートとドリンクが付けられる。
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そしてたどり着いた、牛ひき肉のココナッツミルク煮。
その2日後に再訪して、今度は、チキンのフライを食べてみた。もちろんおいしかったのだけれど、前回得たような発見をした気持ちにはならなくて、“ご飯のおかず然”としたものを、サンドイッチでもっと試してみたくなった。それで選んだのが、牛ひき肉のココナッツミルク煮。一度、ボウルで米麺に合わせて食べたことがあった。よく混ぜ合わせ、麺と絡めて食べるのはなじみのあるおいしさで、そのときは、今度はお米と食べよう、と思ったのだ。どちらかというと、サンドイッチには不向きなおかずな気さえしていた。それが、翻った。あれこそ、新たなおいしさを発見できるかもしれない。
予感は的中した。ご飯や麺より、パン生地のほうが、たぶん、水分の吸水性が高いのだろう。煮汁をしっかり吸い込んだ部分が多い。それでか、味付けをよりはっきりと感じたように思う。煮汁の染み込んだパンは、ココナッツミルクとトマトソースで煮込んでコックリした味わいに、ショウガが効いていて、爽やかさが存在した。聞けば、レモングラスペーストを加えているという。ショウガはその材料のひとつ。カンボジアではとてもポピュラーなペーストで、家庭で作って何にでも入れるらしい。『アンコール』では、ショウガの他にレモングラスはもちろん、エシャロットやコブミカンの葉などを一緒にみじん切りにして作っているそうだ。わりと粗みじんで、それが食欲を刺激するのに一役買っている気がした。
本誌連載で紹介した鶏とカシューナッツ炒めを挟んだサンドイッチ。もう、本当に、違和感なく、バゲットと合うのです。
こちらは、豚バラ肉。皮の部分がカリッカリで、それがバゲットの表皮と一緒に口の中で音を立てて、食欲をそそる。家でも作りたいと思った。
おかずとして大好きな鶏肉とカシューナッツの炒め物と、五香粉でマリネした豚バラ肉のカリカリ焼きもサンドイッチで食べてみたら、ご飯と一緒に食べるのと同じくらい、好きだった。バゲットサンドの懐の広さをこんなふうに改めて知ることになるとは、思っていなかったなぁ。いやぁ、うれしい発見だった。