育て方の基本
ここまで、クチナシの基本情報や特徴、花言葉、栽培に適した環境など、多岐にわたってご紹介してきました。では、ここからはガーデニングの実践編として、クチナシの育て方について詳しく解説していきます。
種まき・苗の植え付け・植え替え
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種まき
クチナシの種は、ほとんど流通していないため手に入れるのが難しく、また種を採取して播いたとしても花が咲くまでには数年かかります。そのため、栽培は苗木を買い求め、植え付けから始めるのが一般的です。
苗の植え付け・植え替え
クチナシの植え付け・植え替えの適期は、4〜5月か9月頃です。
ただし、それ以外の時期にも苗は出回っているので、花苗店などで入手したら早めに植え付けるとよいでしょう。
【地植え】
土づくりをしておいた場所に、苗の根鉢よりも一回り大きな穴を掘り、根鉢をくずさずに植え付けます。最後にたっぷりと水を与えましょう。
地植えで育てる場合は、環境に合えば植え替える必要はありません。
【鉢植え】
鉢で栽培する場合は、入手した苗よりも1〜2回り大きな鉢を準備します。用意した鉢の底穴に鉢底ネットを敷き、軽石を1〜2段分入れてから草花用の培養土を半分くらいまで入れましょう。クチナシの苗をポットから取り出し、鉢に仮置きして高さを決めたら少しずつ土を入れて植え付けます。水やりの際にすぐあふれ出すことのないように、土の量は鉢縁から2〜3cmほど下の高さまでを目安にし、ウォータースペースを取っておいてください。土が鉢内までしっかり行き渡るように、割りばしなどでつつきながら培養土を足していきます。最後に、鉢底から流れ出すまで、十分に水を与えましょう。
鉢植えで楽しんでいる場合、成長とともに根詰まりして株の勢いが衰えてくるので、2〜3年に1度は植え替えることが大切です。植え替え前に水やりを控えて土が乾いた状態で行うと、作業がしやすくなります。鉢から株を取り出してみて、根が詰まっていたら、根鉢をくずして古い根などを切り取りましょう。根鉢を1/2〜1/3くらいまで小さくして、元の鉢に新しい培養土を使って植え直します。もっと大きく育てたい場合は、元の鉢よりも大きな鉢を準備し、軽く根鉢をくずす程度にして植え替えてください。
水やり
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水やりの際は、株が蒸れるのを防ぐために茎葉全体にかけるのではなく、株元の地面を狙って与えてください。
真夏に水やりする場合は、朝か夕方の涼しい時間帯に行うことが大切です。気温の高い昼間に行うと、すぐに水の温度が上がってぬるま湯のようになり、株が弱ってしまいます。
また、真冬に水やりする場合は、気温が低くなる夕方に与えると凍結の原因になってしまうので、十分に気温が上がった真昼に与えるようにしましょう。
【地植え】
根付いた後は、地植えの場合は下から水が上がってくるのでほとんど不要です。ただし、雨が降らない日が続くようなら水やりをして補います。
【鉢植え】
日頃の水やりを忘れずに管理します。クチナシは乾燥に弱いので、水切れに注意してください。ただし、いつもジメジメした状態にしておくと、根腐れの原因になってしまいます。土の表面がしっかり乾いたら、鉢底から水が流れ出すまで、たっぷりと与えましょう。茎葉がしおれそうにだらんと下がってきたら、水を欲しがっているサイン。植物が発するメッセージを逃さずに、きちんとキャッチしてあげることが、枯らさないポイントです。また、冬もカラカラに乾燥させることのないように、適宜水やりを続けてください。
肥料
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【地植え・鉢植えともに】
生育期に入る少し前の2〜3月に、成長を促すために緩効性化成肥料を株の周囲にまき、周囲を軽く耕して土に馴染ませましょう。また花が咲き終わった頃、開花のためにエネルギーを消耗した株の体力回復を目的に、お礼肥として同様に緩効性化成肥料を施します。
剪定・切り戻し
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クチナシの剪定適期は、花後の6月下旬〜7月上旬です。開花が終わった後、1カ月くらいすると、もう翌年に花を咲かせるための花芽が作られるので、剪定のタイミングを逃さないことが大切。花芽分化後に剪定すると、翌年の花つきが少なくなってしまいます。
自然に樹形が整うので、あまり刈り込んだり強く切り戻したりする必要はありません。枝葉が込み合っている部分があれば、枝の付け根で切り取って風通しをよくします。樹高は1mぐらいを目安にまとめるとよいでしょう。
夏越し・冬越し
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夏越し
【地植え】
真夏は強い日差しによって土壌が乾燥しやすいので、バークチップなどを株元にまいてマルチングをし、対策しておきます。
【鉢植え】
風通しがよく、涼しい半日陰に移動して管理します。真夏は乾燥しやすいので、特に水切れに注意してください。
冬越し
【地植え】
暖地では地植えのままで越冬できます。しかし、霜が降りたり凍結しやすい寒冷地では、鉢上げして暖かい場所に移動して管理しましょう。
【鉢植え】
暖地では霜や凍結の恐れのない、日当たりのよい軒下に移動しましょう。寒冷地では日当たりのよい室内や温室に取り込み、寒さにあてないように管理します。
増やし方
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クチナシは、挿し木、株分けで増やすことができます。
【挿し木】
挿し木とは、枝を切り取って地面に挿しておくと発根して生育を始める性質を生かして増やす方法です。植物のなかには挿し木ができないものもありますが、クチナシは挿し木で増やすことができます。
挿し木の適期は、6〜7月頃です。その年に伸びた新しい枝を10cmほどの長さで切り取ります。採取した枝(挿し穂)は、水を張った容器に1時間ほどつけて水あげしておきましょう。その後、吸い上げと蒸散のバランスを取るために下葉を2〜3枚切り取ります。3号くらいの鉢を用意してゴロ土を入れ、新しい培養土を入れて水で十分に湿らせておきます。培養土に穴をあけ、穴に挿し穂を挿して土を押さえてください。発根するまでは明るい日陰に置いて管理します。その後は日当たりのよい場所に置いて育苗し、大きく育ったら植えたい場所に定植しましょう。挿し木のメリットは、親株とまったく同じ性質を持ったクローンになることです。
【株分け】
クチナシの株分けの適期は3月下旬〜4月です。株を植え付けて数年が経ち、大きく育ったら株を掘り上げて数芽ずつ付けて根を切り分け、再び植え直しましょう。それらの株が再び大きく成長し、同じ姿の株が増えていくというわけです。あまり細かく分けると開花しにくくなるので注意してください。
病害虫
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【病気】
クチナシを育てる際に発生しやすい病気は、さび病、すす病などです。
さび病は、かびによる伝染性の病気です。葉にくすんだオレンジ色で楕円形の斑点が現れます。この斑点は、やや細長くイボ状に突起するのが特徴で、症状が進むと破れ、中から粉のように細かい胞子を飛ばします。発症すると株が弱り、枯死することもあるので注意。発病した葉は見つけ次第切り取って処分し、適用する薬剤を散布して防除します。
すす病は、一年を通して葉や枝などに発生する病気です。葉に発生すると表面につやがなくなり、病状が進むと黒いすすが全体を覆い、見た目もよくありません。また光合成がうまくできなくなり、樹勢が衰えてしまいます。カイガラムシ、アブラムシ、コナジラミの排泄物が原因ですす病が発生するので、これらの害虫を寄せ付けないようにしましょう。込んでいる枝葉があれば剪定して、日当たり・風通しよく管理します。
【害虫】
クチナシを育てる際に発生しやすい害虫は、オオスカシバの幼虫、カイガラムシなどです。
オオスカシバはガの一種で、クチナシに被害をもたらすのは幼虫です。独特のしっぽを持ったグリーンの幼虫は5〜6cmにもなり、見つけるとギョッとしてしまいます。クチナシの葉が大好物で、食欲旺盛のため一晩で丸裸にしてしまうこともあるほど。見つけ次第捕殺することが大切です。
カイガラムシは、ほとんどの庭木に発生しやすい害虫で、体長は2〜10mmほど。枝や幹などについて吸汁し、だんだんと木を弱らせていきます。また、カイガラムシの排泄物にすす病が発生して二次被害が起きることもあるので注意。硬い殻に覆われており、薬剤の効果があまり期待できないので、ハブラシなどでこすり落として駆除するとよいでしょう。
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代表的な品種
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クチナシは、昔から家庭園芸に取り入れられてきた人気の花木です。ここでは、クチナシの種類についてご紹介します。
コクチナシ
中国南東部原産。樹高が30〜40cmで、基本種のクチナシよりもコンパクトにまとまり、横に広がるような樹形になるのが特徴。花も葉もやや小ぶりで、鉢植えにも向いています。
マルバクチナシ
基本種よりも葉がやや小さく、丸みを帯びた愛らしいフォルムが特徴。花もやや小ぶりで、花径3cmほどです。
ヤエクチナシ
花が基本種よりもやや大きく、八重咲きになるのでより華やかな雰囲気をもっています。香りも強いのが特徴。クチナシの中で最もポピュラーな種類です。八重咲き種には実がつきません。