日本テレビ系でドラマ化された漫画「セクシー田中さん」の原作者・芦原妃名子さんが死去したことをめぐり、日本テレビは2024年5月31日に社内特別調査チームによる調査結果の報告書を公開した。そこで明かされたドラマ制作側による原作の改変内容に、批判の声が上がっている。

報告書で公表された改変内容は一部で、これでは事案の全容解明のためには不十分だという指摘もある。ほかに具体的な資料を公開する予定はあるのか。日本テレビは「今回のドラマ『セクシー田中さん』の調査報告については公表しているものが全てです」としている。

ドラマ制作側は「必要な改変しか行っていない」認識

芦原さんは23年10~12月に放送された「セクシー田中さん」のドラマで、第9・10話の脚本を担当した。放送後の12月末、第1~8話の脚本を担当していた脚本家の相沢友子さんがインスタグラムで「最後は脚本も書きたいという原作者たっての要望があり、過去に経験したことのない事態で困惑しましたが、残念ながら急きょ協力という形で携わることとなりました」などと言及。

芦原さんは24年1月26日にブログで、2話分の脚本を担当することになった経緯として、ドラマ化にあたっての条件などをめぐる制作側とのやり取りを説明した。その後、ブログ記事は削除され、同29日に芦原さんの死去が報じられた。

日本テレビの報告書では、芦原さんがドラマ化の条件だと認識していた「漫画に忠実に」、ドラマオリジナル展開の部分において「場合によっては、原作者が脚本を執筆する可能性もあること」といった内容が、ドラマ制作側には条件だと認識されていなかったなどの認識の齟齬、芦原さんがドラマ制作側への信用を失っていく過程、放送開始時点で原作者、脚本家との契約書が交わされていなかったことなどが明かされた。

報告書によると、ドラマ制作側はストーリーやキャラクター設定について「ドラマ化のために必要な改変しか行っていない」という認識だったとしており、芦原さんはドラマ化に当たり撮影上の都合やスポンサーへの配慮などやむを得ない改変があることは承知していたとしている。しかし、芦原さんは制作側が提案したプロットや脚本を、小学館を通じて何度も修正するよう戻している。

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短大ではリアリティに欠ける…専門学校への進学に変更する案提出

その改変の一例として、報告書では次のようなエピソードを挙げている。

登場人物の一人・朱里は、原作では短大に進学したという設定だ。しかし、ドラマ制作側は「短大に進学するよりも専門学校に進学する方が近時の 10 代、20 代としてはリアリティがあるのではないか」、「(短大進学の原因となっている)父親のリストラはドラマとしては重すぎるのではないか」として、「高校受験の際に、父親が勤める会社が不景気になり、母親から『高校は公立でいいんじゃない?』と言われて本当は友達と一緒に制服がかわいい私立校に行きたかったけど、『うん、そうだね』と笑って受け入れた」とする設定に変更する案を提出した。

これに芦原さんは小学館を通じて「かわいい制服の私立高校に行けなくなったことなどは『心底どうでもいい』ことである、原作のジェンダー要素も逃げずに書いて欲しい、制作サイドは短大での設定を避けているのか?といった趣旨」の返事をしたという。

ほかにも、「1 話プロットについて、朱里のキャラクターについて(ただの可愛くて軽い女に見えないようにしてほしい)」「4 話プロットについて、エピソードの順序を変えるならキャラブレしないように、もしくは出来る限り原作通り、丁寧に順番を辿っていって頂けたら」「ツッコミどころの多い辻褄の合わない改変がされるくらいなら、しっかり、原作通りの物を作って欲しい旨のメール」といった芦原さんの指摘も紹介されている。

なお、ドラマ制作側はこれに、「やむを得ない場合以外はできるだけ」といった表現が多かったことなどから、提案した改変は許されると認識していたという。 この報告書が公開されると、SNSでは「例にあげられているテレビドラマ制作側の原作から変更されたプロット案がひどすぎる」「あの世界観の原作からこれに変更しようとするとかびっくり」といった声が寄せられた。