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●老舗酒蔵『永井酒造』と日本酒ブランド『SAKE HUNDRED(サケハンドレッド)』がタッグを組んだ、氷温熟成14年の「礼比(らいひ)」が販売スタート。その魅力と日本酒の未来について話を伺った。
日本各地で続々と新しい銘柄が生み出され、年々人気を博している日本酒。また、注目したい日本酒が誕生しました。
それが日本酒ブランド『SAKE HUNDRED(サケハンドレッド)』から数量限定で登場した、氷温熟成14年のヴィンテージ日本酒「礼比(らいひ)」。国内外にファンを獲得している老舗酒蔵『永井酒造』とタッグを組むことで生まれました。
そもそも熟成酒というと、売れ残り? というイメージをお持ちの方も少なくありません。熟成酒のパイオニア『永井酒造』代表の永井則吉さんが手掛けた氷温熟成14年のヴィンテージ日本酒「礼比(らいひ)」(5月24日に発売)は、日本酒の新たな可能性と真価を世界に問う一本です。
そこで、「サケハンドレッド」を手掛ける『Clear』代表の生駒龍史さんと、『永井酒造』代表の永井則吉さんに、「礼比」の魅力と日本酒の未来について話を伺いました。
「礼比」の生まれ故郷、群馬県・川場村へ
群馬県利根郡川場村の水源付近 [食楽web]
醸造元である『永井酒造』は、創業138年目を迎える酒蔵。東京駅から車で2時間ほど、豊かな自然の風景を残す群馬県利根郡川場村にあります。
武尊山からの伏流水は手で直接すくって飲めるほど清らか
『永井酒造』は斬新なスパークリング日本酒や熟成酒など、従来の日本酒のイメージを覆すお酒を続々と世に送り出し、海外からのファンも多い酒蔵です。美酒の源である水源は武尊山からの伏流水。クリアの喉越しの中にも自然のミネラルを感じられる飲み口。この水が酒造りの要となっています。
左が『Clear』代表の生駒龍史さん、右が『永井酒造』代表の永井則吉さん
日本酒愛の強いお二人は、酒を片手に親睦を深める関係。そのきっかけは、『SAKE HUNDRED』を展開する『株式会社 Clear』の取り組みに永井さんが共感し、「このような熟成酒を手掛けている」と直々にオファーをしたことでした。
生駒さん自身も、業界では知らない人はいないほどの有名酒蔵からのオファーに、最初はすごく緊張したそう。しかし、他の熟成日本酒とは明らかに違う製法と味わいのスタイルに魅せられ、『SAKE HUNDRED』にて製品化が決定したのです。
何がそこまで違うのか。熟成酒研究のパイオニアである永井さんは、世界最高峰のワイン『ドメーヌ・ド・ラ・ロマネ・コンティ』の「モンラッシェ」で受けた感動を、日本酒でも実現できないかというところから熟成酒の研究をスタートさせています。
「礼比」は氷温環境で14年間熟成した稀有な一本
「礼比」16万5000円(税込)
永井さんの最初の研究は家業を継いで間もなくの頃。初任給をはたいて購入した数本の日本酒から始め、試行錯誤の末に辿り着いたのがマイナス5℃以下氷温環境での熟成でした。
氷温でゆっくりと熟成を進めることにより、その香り成分の発生が極端に抑えられ、瑞々しい華やかさを保ったまま。色も熟成といえばアンバーカラーを想起しますが、レモンイエローな点も魅力的です。
醸造の仕方にもこだわりがあり、仕込み水の一部に日本酒を使用し醸造する「累乗仕込み」を採用。深い甘みと旨味を重ねるように醸すことで、10年を有に越える熟成酒でありながら、新酒のようなフレッシュさを生んでいます。
もちろん、熟成酒ならではの甘みと複雑性のある味わいが共存しており、3年間貯蔵したフレンチオークの樽の甘い香りも余韻に残す、日本酒の新たな価値を示す一本に仕上がっています。
日本酒の価値に気が付く“予想を超える”テイスト
現状の課題としては、熟成酒の市場規模はまだまだ小さく、その評価も浸透していないという点があります。そして、熟成日本酒にマイナスイメージを持つ人もいるかもしれません。
しかし、「最初から長期熟成を目指して醸造された日本酒は素晴らしい価値を与える一本となりえる」ことを、「礼比」を高価格帯で販売することで、国内のファンのみならず、世界にアピールすることができるでしょう。
「礼比」に込めた情熱と、体験したことのない豊かな熟成酒の味わいは今後、市場規模の大きいワインやウイスキーと肩を並べる日もそう遠くないと感じさせる体験でした。
(取材・文◎亀井亜衣子)