港区を中心とした予約困難店のシェフたちが、営業終わりに一杯、ときにはお客さまと連れ立って……とプライベートで通うワインバー【終りの季節】から2024年2月、新店【根深】がオープンした。店主は、日本料理
自在にアレンジされるジビエにも注目
今回の撮影で使用した鹿は、長野県阿智村から直接仕入れている甲州鹿
鹿とヒグマ、猪などこだわりのジビエを安定的に仕入れるのも、小林さんの目利き。
「【感情】にいた時のお客さまが、ITの会社を経営しつつ狩猟をされる方で、北海道の弟子屈町(てしかがちょう)まで伺う機会があったんです。撃つだけのハンターもいますが、食べるまでを完結したいと考えていらっしゃる方で、鹿を仕留めた直後に、そのまま車に装着したクレーンのようなもので吊るして血抜きまでするので、肉がとても新鮮で臭みもない。さらにその場所自体がマイナス10℃くらいの極寒の地域なので、仕留めた直後から冷凍庫で処理しているような状態で、東京へ運ばれてくるまでの状態も完璧なんです」
「うちで卸してもらっているのはきれいな味の鹿肉なので、そのままがおいしい」と、ソースはあえて無し。基本は塩とオイルでいただく『鹿のロースト』
鹿肉のローストは、鮮度や柔らかさが見て取れる、薄いピンク色。しっとりと保湿された身は味わい深く、余韻まで楽しめる。
最後は、ジビエを煮込んだラグーソースを合わせたショートパスタ。小麦の香りが強く、ジビエの力強さにも合わせられる「ヴィチドーミニ」のパッケリをチョイス。
パルミジャーノチーズを削りかけて仕上げる『パッケリ ラグーソース』。コクのあるラグーは、魚醤のような旨みの集合体だ
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ワインバーとしてアラカルト利用もできる
【根深】の裏メニューとは?
夜営業のみで、15,000円のお任せコース一本勝負。料理人からも一目置かれるワインバー【終りの季節】の姉妹店だけあり、【根深】もワインの品揃えには余念がない。フランスを中心にイタリア、南アフリカ、オーストラリア、ニュージーランド、もちろん日本産まで、一貫して料理に合う、優しく綺麗な味のワインをラインナップする。
ワインはグラスでも1,500円から。料理に合わせるのは白ワインが多いが、ジビエやラグーと合わせるお客さまも多いため、赤ワインも豊富
特に「2017 サヴィニー・レ・ボーヌ レ・プランショ / ジャン・ピエール・ギヨン」(右から2番目)は、しっかりとした熟度ながら、ビオロジックでナチュラルにつくられているおかげで、飲み疲れのない滑らかな赤ワインだ。
コース終了次第(21時以降)、ワインバーとして利用もできる【根深】では、アラカルトメニューの注文も可能。
小林さんのお気に入りメニューは『千代幻豚の白味噌しゃぶしゃぶ』とのこと。アラカルトメニューが手書きされた原稿用紙には、「裏(に)メニュー」も
「常連のお客さまから「桜エビがあるならパスタで食べたい」などのご要望があれば、対応することもありますし、先日は「びっくりするほどおいしくて」と持ち込まれたかぶを即興で料理したり(笑)。ちょっとした無茶振りに応えることで自分の進化も感じているので、案外楽しいんです」と、小林さんは意気揚々。
抑揚のあるコース料理を組み立てつつ、ワインバーとしての自由度も備える【根深】。その振り幅を楽しむ余裕すら感じられる若き料理人の今後にも注目だ。