「ブラインドメイク」という言葉を聞いたことがあるだろうか? 視覚に障害のある人が、鏡を使わずにひとりでフルメイクができる化粧療法のことだ。2010年に考案され、現在は一般社団法人日本ケアメイク協会が普及のための活動を行なっている。コスメブランドOSAJI(オサジ)代表の茂田正和氏が副理事長を務めていることもあり、OSAJIの社内向け研修会が開かれた。
ブラインドメイクを普及させる化粧訓練士
この日はOSAJIの店舗スタッフやメイクアップアーティストなど、有志のメンバーが参加。日本ケアメイク協会によるブラインドメイクの説明や資格取得のための講座、デモンストレーションが行われた。
OSAJI代表/日本ケアメイク協会副理事長の茂田正和氏(左から3番目)
日本ケアメイク協会が目指しているのは、多様性が当たり前に存在する、個人差を尊重できる社会を作ること。研修会の冒頭でOSAJI代表であり日本ケアメイク協会副理事長の茂田氏は「ブラインドメイクが特別なことではなくて、視覚障害者にとってもそうではない人にとっても、すぐに思い浮かぶ選択肢になってほしい。そのために普及活動に力を入れていく」と語った。
ブラインドメイクには「化粧訓練士」「認定化粧訓練士」「UBA(ユニバーサル・ビューティー・アドバイザー)」という資格制度がある。視覚障害者にブラインドメイクの方法を教えることができる資格で、日本ケアメイク協会が育成や研修を行っている。
「化粧訓練士」は対面でのメイクレッスン、「認定化粧訓練士」は対面に加えオンラインでのメイクレッスンを行うことができ、「UBA」は所属化粧品店内でのみ、化粧品選定や自社化粧品を用いたブラインドメイクを伝えることができる。
(広告の後にも続きます)
ブラインドメイクの役割とは?
私たちはなぜメイクをするのだろう? その答えには正解も不正解もなく、ただその人にとっての「メイクをすること」に対する意味や理由があるだけだ。メイクをすると自信が持てる。メイクをすると楽しい。メイクをすると安心する。そのどれもが答えだろう。
「視覚障害者だからメイクができない」。そういった状況や先入観をなくしてくれるのがブラインドメイクだ。日本ケアメイク協会は、メイクをしたい人が自分でメイクをすることができる環境を作ることで、QOL(生活の質)の向上を目指している。
イベント前にOSAJIスタッフ向けに行われた講習会の様子
イベントでは、化粧訓練士である協会メンバーの体験談が紹介された。高齢で目が見えにくくなっている女性にブラインドメイクのレッスンを行ったところ、以前よりも外出が増え、自信がついたのか猫背気味だった背中もしゃんと伸びるようになった。
全盲になり、コミュニケーションが困難なほどふさぎ込んでいた元ピアニストの女性は、レッスンを通して次第に心を開いていったそう。遠ざけていたピアノも再び弾くようになり、遠出をするたびに担当した化粧訓練士に写真付きで連絡をくれるという。
ブラインドメイクは、レッスンを通して親密なコミュニケーションが生じることも大きなポイントだ。そしてフルメイクを習得した暁には、より自信に満ちた笑顔を咲かせることができる。