「ブラインドメイク」という言葉を聞いたことがあるだろうか? 視覚に障害のある人が、鏡を使わずにひとりでフルメイクができる化粧療法のことだ。2010年に考案され、現在は一般社団法人日本ケアメイク協会が普及のための活動を行なっている。コスメブランドOSAJI(オサジ)代表の茂田正和氏が副理事長を務めていることもあり、OSAJIの社内向け研修会が開かれた。
デモンストレーションを実施
会場では、日本ケアメイク協会理事長で自らも全盲の視覚障害者である山岸加奈子氏による、ブラインドメイクのデモンストレーションを実施。
一般社団法人日本ケアメイク協会理事長の山岸加奈子氏 ©️Wakako Kikuchi
ブラインドメイクのポイントは、両手を同じ速さ、同じ力で左右対称に動かすこと。そうすることで左右のバランスを取りながらメイクをすることができる。
ブラインドメイクでは、アイメイクやチーク、リップなどが一つにまとまった「UDパレット(株式会社アデランス)」という専用のメイクアップアイテムを使うことがある。ブラインドメイクを習得した視覚障害当事者の声から誕生したものだ。円形のデザインで、12時の位置にリップ、3時にハイライトといったように、視覚障害者でもわかりやすい「クロックポジション」と呼ばれる配置になっている。
UDパレット ©️Wakako Kikuchi
ファンデーションは手で伸ばしてぬれるようにリキッドタイプのものを使用。フェイスパウダーなどの粉物をパフにとって使うときは、右手で右頬、左手で左頬につける。手を交差してしまうと左右のバランスがわからなくなってしまうからだ。マスカラをぬる時は皮膚につかないように目の周りに保護テープを貼るなど、工程の随所に工夫が施されている。
山岸氏によるデモンストレーションの様子
茂田氏が「はじめて見た時、所作の美しさに感動した」と語っていたが、指先を複数本使いアイシャドウを一気にぬりあげていく様子はまるで舞のよう。習得するまでに時間はかかったというが、山岸氏はフルメイクを15分たらずで仕上げるという。
デモンストレーションでは化粧訓練士を志望するスタッフたちが、その手法をすぐそばで学ぼうと必死にメモをとっていた。
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ブラインドメイクを広げるためにできること
ブラインドメイクの認知度はまだまだ低い。日本ケアメイク協会はSNSやメールマガジン、ネットラジオ、イベントなどを通じてこの取り組みを伝えている。
この数年はコロナ禍だったためイベントを大々的に行うことはできなかったが、今年は10月に東京と大阪でブラインドメイクのイベントを開催する予定。世界各国で行ってきた講習会も継続していくという。
©️Wakako Kikuchi
OSAJIとしては、どの店舗にもUBAがいる状態にするためにも、積極的に社内研修会をしていくそう。視覚障害者やその周りにいる人が店頭で安心して買い物できる環境を整えていく。
もし今あなたの周りでブラインドメイクを必要としている人がいたら、ぜひこの取り組みについて話してみてほしい。メイクをしたいと思う全ての人が、安心してメイクをできるように。
text: Azu Satoh
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