高齢ドライバー8割「運転に自信あり」 75歳以上による「死亡事故」増加も…免許返納は“右肩下がり”の現実

4日午後、埼玉県熊谷市で小学1年生の女の子が車にはねられ、意識不明の重体となっている。女の子は集団下校中で、青信号の横断歩道を渡っていた。

この事故では、車を運転していた84歳の男が過失運転傷害の疑いで現行犯逮捕されており、警察に対し「ひとつ先の青信号と見間違えた」などと供述しているという。

5日配信の「TBS NEWS DIG」によれば、男の娘は取材に対し「家族は、父に免許を返納したほうがいいと言っていた」と話したそうだ。なお男は、今年3月に免許を更新していた。

75歳以上のドライバーによる「死亡事故」増加傾向

高齢ドライバーによる交通死亡事故は、近年増加傾向にある。警察庁が3月に公表した「令和5年における交通事故の発生状況について」によれば、昨年1年間で75歳以上のドライバーが起こした交通死亡事故は384件。免許人口あたりの発生件数は、75歳未満の約2倍に上る。

その人的要因としてもっとも多いのは、ブレーキとアクセルを踏み間違えるなどの「操作不適」。75歳未満のドライバーに比べて顕著に多い要因となっている。


警察庁「令和5年における交通事故の発生状況について」より

ところが、高齢ドライバーの8割近くが「運転に自信あり」と回答したとのデータがある。NEXCO東日本が公開している「逆走・免許返納に関する親子の意識調査」によれば、65歳以上のドライバーが運転について「とても自信を持っている」「自信を持っている」と回答した割合は76.0%(男性80.7%、女性50.1%)。年代別には、66~69歳73.5%、70~74歳75.0%、75歳以上79.4%と、年齢が高くなるほど「自信あり」と答えた割合が高くなっている。

さらに「免許を返納しても良いと思う年齢」についても、65~69歳「76.8歳」、70~79歳「79.7歳」、80歳以上「82.5歳」と、徐々にその年齢が上がっていることが分かる。

熊谷市の事故で逮捕された男のように、家族が「免許を返納してほしい」と願っても、「自分はまだまだ現役だ」と考える高齢ドライバーは少なくないのかもしれない。

同調査では、子ども世代(30~50代)の80.0%が親に「運転が危ないと伝えたことがある」と回答した一方、65歳以上の高齢ドライバーの75.9%が「子どもから(運転が危ないと)伝えられたことがない」と答えている。

運転免許返納は「右肩下がり」

警察庁によると、75歳以上による運転免許証の自主返納は、池袋暴走事故のあった2019年に35万428件(前年29万2089件)とピークだったが、それ以降は右肩下がりとなっている。昨年は26万1569件と、池袋暴走事故が発生する前年よりも少ない件数にとどまった。


警察庁「運転免許の申請取消(自主返納)件数と運転経歴証明書交付件数の推移」より

75歳以上の免許保有者は、2023年末時点で728万2757人。今後さらに増えることは想像に難くないだろう。

運転免許証の自主返納“促進”に必要なこと

警察庁「運転免許証の自主返納に関するアンケート調査結果」(2015年)では、75歳以上の人を対象に「自主返納者のために必要な支援と情報」を聞いている。ここでもっとも多かった回答は、「交通機関の発達」「交通手段に関する支援の充実」「交通手段に関する支援制度の情報提供」だった。

都心部ならまだしも、公共交通機関が充実していない地域でマイカー中心の生活をしてきた人たちにとっては、運転免許証を返納した後の生活への不安も「自分はまだまだ現役」という気持ちの後押しとなっているのかもしれない。

高齢ドライバーによる事故は大きな話題となりやすいが、これは人々の憂慮の表れとも言えるだろう。国や自治体には、最優先事項のひとつとして対策に取り組んでもらいたい。