皆さんは「緑内障」という病気をご存知ですか? 日本人の失明原因の1位であり、40代の20人に1人は緑内障患者だといわれています。しかし、そのうちの9割は治療を受けていないそう。一体どういうことなのか。眼科医の田辺直樹先生にお伺いしました。
監修/田辺直樹先生(田辺眼科クリニック院長)
日本眼科学会認定専門医。札幌医科大学医学部卒業。名鉄病院、名古屋大学、知多市民病院で眼科医員、公立学校共済組合 東海中央病院で眼科医長を務めたのち、2004年に地元愛知県名古屋市にて、田辺眼科クリニックを開院。子どもからお年寄りまで幅広い目の悩みに対するきめ細かいケアに定評がある。
40代になると緑内障になる?
緑内障はゆっくりと進行している
緑内障とは、視神経が傷つくことで視野が欠けていく病気です。視野が欠けていっているにもかかわらず自覚症状がなく、発症から何年もたってから病院を受診する人もいるそう。
「若いうちは視神経が悪くなっていても、視野まで影響が出ていないので緑内障だってことに気付かないんです。年を重ねていくうちにだんだんと視野が狭くなってきて、緑内障であるということに気付くのです。
なので60代になると10人に1人が緑内障に罹患しているといわれています。
視野に影響が出ないと緑内障だと診断されないので、視野が狭くなってくる40代くらいから多く見られる病気だということになっています。
緑内障は急激に進行することはなく、ゆっくりと進行する病気なので視野が狭くならない間は気付きにくい病気なんですよね」(田辺先生)
40代の20人に1人が緑内障だとされているのに、そのうちの9割が治療を受けていないとのことですが……。
「そうなんです、自覚症状が出ないから病院に来ることがないんですよね。
健康診断や人間ドックで異常が見つかったり、視野が狭まって見えにくくなってようやく病院に来るという感じですね」(田辺先生)
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緑内障だと判断するには
検査が大切!
視野の変化以外で緑内障に気付くきっかけのようなものはあるのでしょうか?
「ありません。自分で視野が狭くなってきたと自覚するころには、もう緑内障がかなり進行している状態になっています。
自覚症状がなく緑内障が見つかるときは検査を受けたときです。人間ドックで再検査などになり、病院で詳しく検査を受けて緑内障だと診断されるケースは非常に多いです。
あとは他に目について気になることがあり眼科へ行ったら緑内障も見つかった、なんていうこともありますね。
病院で検査したりしない限り、緑内障の早期発見はかなり難しいです」(田辺先生)
緑内障に気付くには検査を受けるということが大切なのですね。どのような検査をおこなうのでしょうか?
「緑内障の検査は主に、
・角膜にセンサーや空気を当てる眼圧検査
・視神経の異常を調べる眼底検査
・視野の欠損を確認する視野検査
・眼底の神経の厚さを測るOCT検査
の4つです。
OCT検査というのは15年くらい前にできた検査方法です。眼底検査では神経の表面しか見られないことに対して、OCT検査では断面的に視神経を検査することができます。
眼底検査もおこないますが、神経の厚さまで見たほうがより詳細に検査することができるので、基本的にはOCT検査をおこなっています」(田辺先生)
検査は定期的に受けたほうがいいのでしょうか?
「まずは40歳を過ぎたら1回、眼科で緑内障の検査を受けてみてください。
健康診断では視力と眼圧しか検査しないことが多いんですね。オプションで眼底検査などを受けることもできますが、それを受ける人はあまりいません。
しかし、緑内障患者の7割は、正常眼圧緑内障という眼圧の数値は正常だけど視神経が傷んでいる状態です。この場合、眼底まで検査をしないと緑内障であることは判明しません。
40歳を過ぎて異常が見つからなければそのまま何事もなく生活できる人が大多数です。その後の定期的な検査も特に必要はありません。
緑内障は治療をしても完治せず、進行を遅らせることしかできません。検査での早期発見と継続的な治療をおこなえば失明する確率は下がります」(田辺先生)