仏発サステナブルスニーカー、「VEJA」の新たな“循環”

まもなく20周年を迎えようとするフランスのサステナブルスニーカーブランド「VEJA(ヴェジャ)」は、既成概念を壊し続けることで、世界にファンを生み出し続けている。創業時から変わらず、地球環境や透明性に対して真摯な姿勢を持つ彼らが、新たな“循環”に取り組んでいる。

生産者とともに歩んできた「VEJA」のスニーカーのはじまり

もともとは金融業界で活躍していた、創業者のフランソワ・ギラン・モリィヨンとセバスチャン・コップ。転機となったのはリサーチで訪れた中国で、ファッションの生産の裏側を目撃したことだった。工場や住居スペースなど、劣悪な環境で生活させられている人々の姿に不平等さと落胆を感じ、2人で自らのブランドを立ち上げることを決意。「スニーカーでも環境を守るビジネスが可能である」ということを証明するため、5,000ドルずつ出し合い「VEJA」を設立した。

最初に彼らが足を運んだのは、スニーカーの原料となる天然ゴムの調達が可能なブラジルだ。熱帯雨林にある地元の協同組合と話をすると、ここでは森林を伐採して家畜を飼った方がお金になるという。そこで、ゴムの木を伐採せず樹液を採取する地元の天然ゴム採取業者と取り引きし、適正な報酬を払うことで、森林伐採を減らしたいと考えた。スニーカーのソールは石油由来のラテックスなどが主流だが、天然ゴムを用いている「VEJA」は、同社の広報の話によれば「他社に比べ、ソールには5倍の予算を割いている」という。また、アッパー素材のコットンも同じく、ブラジルで探し当てた環境再生型農法が叶う契約農家が育てるコットンを使用。原料を仕入れるだけにとどまらず、創業者だけではなく社員たちも現地へと赴き実際の現場を見て、話をすることで、継続的な絆を築いているのも同社のこだわりだ。


オーガニックコットンは生態系と調和を保つ「アグロエコロジカル」農法で生産。主にブラジルとペルーで調達している


ラバーの原料となる樹液はセリンゲイロと呼ばれるゴム樹液採取者が採取する。現在では、現地の1,200世帯以上が従事

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リペアという新たな循環を育む

若い層に端を発し、今ではヨーロッパだけではなく、アジアでも幅広い層にその認知は広がってきた。同時に彼らが今、本国フランスで力を注いでいるのが「一番の選択は、今履いている靴を大事に履き続けること」という理念のもと取り組むスニーカーのリペアサービスだ。

「VEJA」が最初にそれを実現させた場所は、フランス・ボルドーのエコロジーに特化した施設「ダーウィン」。ここでは「VEJA」のプロジェクトストアに併設する形で、靴のリペアカウンターが設けられている。他社の靴の修理も受け、難しいものは店舗中央のクリアボックスに収め、部品としてリサイクルする。ここでの成功を受け、現在リペアカウンターを設けたストアは全世界に6店舗あり、昨年パリ市内には新たな試みとして修理を専門とした「ジェネラルストア」をオープンさせた。靴の修理を専門とするだけではなく、靴のメンテナンス道具や、文房具から革小物といった世界から集めたクラフトマンシップが息づくプロダクトの販売、そして洋服の修理を請け負うコーナーも併設している複合型のスタイルがすでにパリでも話題となっているようだ。


パリのマルセイユ通り沿いにある「ジェネラルストア」の修理カウンター。木の温かみを取り入れた、モダンな空間


「ダーウィン」のストア。職人たちがその場で修理する姿も

創業者の一人、セバスチャンは「VEJA」の軌跡に、「20年前は孤立無援だったが、今では私たちの活動を理解し共感してくれる人や、同じようなビジネスをする企業も増えてきた」と語り、ブランドが大事にし続けてきた理念について聞くとこう答えた。「たとえば、リペアサービスも当初社内で疑問視する声がありましたが、始めてみるとそう言っていた人たちが『リペアしかない』と変わっていく。必要なのは反対をするのではなく、どんなに小さなことでもいいのでまずは提案をしていくこと。それが世界をより良く変える第一歩なのです」

VEJA
創業者のフランソワ・ギラン・モリィヨン(右)とセバスチャン・コップが2004年に設立したフランスのスニーカーブランド。現在はパリだけではなく、ヨーロッパ、アジアにも進出し、世界各国へと拡大。2018年には社会や環境に配慮した公益性の高い企業に与えられるB Corp認証を取得。2019年には農業や製造におけるフェアトレードについて評価するFair for Life認証を取得するなど、一貫したブランドの姿勢が支持を得ている。

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