部長クラスの「ギラギラした野望」の背景は

――ところで、【図表2】の理想の賞与額と、実際の賞与額の差を表わしたグラフで、部長クラスの差が飛び抜けて大きいのはなぜでしょうか。

理想の額の平均がなんと212万円で、実際の額との差が約123万円もあります。課長クラス以下では差は30数万円しかありません。これこそ、部長クラスに「ギラギラした野望」を感じてしまうのですが。

朝比奈あかりさん 部長クラスは、回答者によって理想の額の幅が非常に大きいのが特徴です。平均値は212万円ですが、回答額を順番に並べて中央にくる中央値は、120万円です。平均値と中央値の差が110万円以上もあります。

課長クラス以下では、平均値と中央値の差は10~20万円ですから、部長クラスのバラツキが非常に大きいことは確かです。その理由は2つ考えられます。

――どういうことでしょうか。

朝比奈あかりさん 1つ目は、会社の規模の違いです。事業規模が大きく利益も大きな会社であれば、報酬額は平均よりも高いはずです。部長クラスの報酬の会社ごとのばらつきは、非管理職層の報酬のばらつきに比べて大きいことが予想されます。

2つ目は、部長職の業務範囲の違いです。業務範囲が広く経営にもタッチしていれば、会社の利益から自分の人件費(ボーナス額)を想像できるはず。しかし、1つの部局の狭い業務範囲ならそうはいかないかもしれません。

結局、同じ部長クラスでも、会社の規模と業務範囲の大小を掛け合わせた結果、理想のボーナス額に大きな差が出てきたと思います。

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たとえ賞与額低くても、自分の評価に納得感があれば

――ボーナスの額に納得感がないことと、自分に対する評価に納得感がないことの間に強い相関がある点が、調査の核心になっています。

そこから、転職を防いで従業員のやる気を高めるには、ボーナスの額を増やすのが理想だが、難しい場合は賞与額や評価に対して丁寧に説明すべきだと訴えています。具体的にはどうすればよいでしょうか。

朝比奈あかりさん 調査では、実際に自分の評価に納得した人たちの声も聞いているので、そちらをご紹介します。

「上司との面談で、今までの頑張りを高評価していただけて納得した。よかったと感じた」(女性20代)。「上司からのフィードバックがあり、どこが課題で、どこがよかったか、お話していただいた」(男性20代)。

「評価基準が明確になり、公表されるようになった」(男性30代)。「成し遂げたプロジェクトについて、適切なアドバイスがもらえた」(女性40代)。「会社の業績に関する説明があり、納得しました」(男性40代)。

といったふうに、上司から自分への率直な評価や、会社の業績を包み隠さず、心を込めて説明されると、納得する人が多いのです。

――ボーナスをバーンと出せなくても、丁寧に説明すると納得してもらえるということですね。その際、一番大事なことは何でしょうか。

朝比奈あかりさん 会社自身が従業員に公平・公正な評価を行なうことができるよう、しっかりしたシステムを作ることです。

なぜなら、人材の流動化が進むと、評価する人、される人が頻繁に変わることが当たり前になっていくからです。今後は、誰が評価する立場になっても、誰でも納得感を得られる評価ができるような制度をもつ会社が増えていくのではないかと考えています。

大企業だけでなく、中小企業も賃上げが進んでいると言われていますが、今回の調査では、6割の人が夏のボーナスには賃上げが反映されないだろう、と悲観的に答えています。それだけに、ボーナス前の直近の評価でいかに納得感を得られるようにするかが重要になります。