日本口腔衛生学会の見解は

実際、番組で放送された情報についての日本口腔衛生学会の見解はどうか。

「虫歯菌(ミュータンスレンサ球菌)は、1歳半から2歳半頃までの間に感染する」との番組の説明について、6月6日にJ-CASTニュースの取材に応じた日本口腔衛生学会の担当者は、次のように指摘した。

「虫歯菌はこの期間に口の中に定着する(住みつく)と言われていますが、それよりも早い時期に感染している(口の中に入ってくる)可能性があります」

番組では親子間のキスについても触れているが、二川教授が感染の主な原因として挙げたのは、離乳食の口移しやフーフーと冷ますときの唾液の飛散だ。こうした原因についても、離乳食の口移しなどで感染する場合があるとしつつ、「赤ちゃんが親の腕に抱かれていて、それで話しかけると唾液が飛ぶこともあるでしょう」とし、離乳食が始まる以前に感染する可能性を示した。

さらに、「この十数年で科学的な常識になりつつあること」として、虫歯の原因菌がミュータンスレンサ球菌だけではないことも挙げる。

「そもそも口の中には数多くの種類の菌がおり、ミュータンス菌以外にもむし歯の原因になる菌がいます」

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「科学的な事実は、時間とともに変わっていくことがあります」

「2歳半までにミュータンスレンサ球菌に感染しなければ生涯虫歯にならない」との説明についてはどうか。

日本口腔衛生学会は、「ミュータンス菌が検出されないむし歯患者が存在するということが論文で報告されています」と説明。さらに、ミュータンスレンサ球菌以外の菌を原因とする虫歯は、2歳半以降にも感染することがあるため「誤りだと考えられます」とした。

今回の番組で放送されたような情報が広まっていることを受け、日本口腔衛生学会は積極的に情報発信を続けていきたいとした。

「ミュータンス菌の感染は、当時としては感染を防げば良いという考えがありました。しかし、その後、『ミュータンス菌が親から感染することがあるのは事実だが、感染を予防するのが難しい』ということが分かってきました」

と経緯を説明。「どのような分野でも、科学的な事実は、時間とともに変わっていくことがあります」とする一方、「すべての人の認識が一瞬で変わるようなことはございません」という。「私たちとしては引き続き、情報発信をしていきたく考えております」とした。