ポールバセットさんとバリスタのコーヒーセッション【後編】


ポールバセットさんが来日し、「Paul Bassett 永田町店」で開かれたトークセッション。後半はポールさんがエスプレッソドリンクを作り、参加したバリスタたちが飲むコーヒーセッションの様子と、バリスタの感想、そしてCafeSnapの大井が最後にポールバセットさんに直接インタビューした内容をお届けします。

 

ポールバセットさんが作るエスプレッソドリンク

日本のバリスタの前でコーヒーを作るポールさん。マシンの準備も入念に、バリスタたちと会話をしながらエスプレッソ、カプチーノ、カフェラテなどを作っていきます。ポールさんの所作を見つめ、出てくるカップを即座に味わうのはバリスタのみなさん。ひとくちひとくち味わうたびに様々なコメントが飛び交いました。

 

参加したバリスタたちの感想

・池田 準さん(Paul Bassettブランドマネージャー)

日々行っているエスプレッソカリブレーションに関して今までやってきている味づくりに間違いがない事を再確認できました。国内外で活躍している卒業生たちとのディスカッションも内容が濃く、それぞれのブランドの方向性と自身のコーヒースタイルを再確認しているように感じました。

オーストラリアでのポールのコーヒー作りへの探求心とコーヒービジネスへの考え方は、日本の「Paul Bassettの現在」とも共通する点が多かったです。今後も「Paul Bassettのエスプレッソ」をどれだけ多くのお客様に飲んでいただけるかを考えながら突き進むべく、後世育成に努めて店舗展開を進めていきます。


・鈴木 清和さん(GLITCH COFFEE & ROASTERS)

ポールが変わらずポールのスタイルを貫いていて、今の僕にとって意味のある再会となりました。今の僕の考え方はポールとは異なる部分もあるけれど、ポールの考え方を再度吸収することで、ポールが納得する自分のコーヒーをまた考えたいと思いました。国ごとにコーヒーとカルチャーは深く繋がっているので、自分の好きなコーヒーを理解してもらえるようにカルチャー自体を作っていきたいです。

・佐々木 修一さん(PASSAGE COFFEE)

常識やトレンドに縛られず、コーヒーの哲学を追い求めている彼の姿を思い出しました。「エスプレッソはこうであって、ミルクはこうであって」という抽出やコーヒーへの考え方で影響を受けた部分がありました。久しぶりに飲んだポールのカプチーノは熟考された作品のようで、私自身これからも美味しい一杯への探求に向き合い続けたいと再認識させてくれました。


・吉田 一毅さん(Life Size Cribe)

もともと憧れて惚れたスタイルを改めて想起させてもらえた時間でした。自分たちが好きだったものの“原点が何か”を認識することで、自分たちがこれからやるコーヒーやカルチャーとの向き合い方を、もう1度考えるよいきっかけになりました。

・小坂田 祐哉さん(Raw Sugar Roast)

Paul Bassettのコーヒーをきっかけに、長い月日を経てもこうして繋がり、集まれることが素敵だと感じました。

・塚田 健太さん(Coffee Bar Gallage)

変わりゆくコーヒーカルチャーの中でも、ポールがいまだに自分のスタイルを貫いているのがすごくかっこよかったです。


・土橋 永司さん(ignis)

珍しくみんな緊張していましたね(笑)。やっぱかっこいいなって思いました。初めて見た時からそうでしたけど、 変わらずずっと憧れの存在だなって思えるのはすごい、隣に座っていてそう思いました。僕もそういう人間でありたいです!

・石川 篤希さん(swamp)

ポールさんはコーヒーもビジネスも自分のやっていることに信念を持っていて、卒業生も方向性は違えど、マインドは同じのような気がしました。みんなキラキラしていました。自分も負けてられません(笑)


・青木 正浩さん(元Paul Bassettバリスタ・コーヒーコンサルタント)

日本のコーヒー業界を牽引している個性豊かなPaul Bassettの卒業生たちの集まりに参加させていただき、改めて20年近くも前からバリスタ世界チャンピオンのお店が日本にあって続いているのは、とてもスゴいことだと感じました。

・畑 天斗さん(Paul Bassett永田町 バリスタ見習い)

池田さんをはじめ、憧れである歴代の卒業生と共に、その始まりであるポールバセットとお話できたこと、大変光栄に思いました。感銘を受けるお話ばかりでした。今一度、コーヒースタイルを見直すきっかけとなり、改めてコーヒーが好きになり、この仕事を始めて、ポールバセットに入ってよかったと思いました。

 

トーク&コーヒーセッション後のインタビュー

ここからはCafeSnapの大井がトーク&コーヒーセッションを終えて、インタビューした内容をお届けします。

大井:今日はありがとうございました。まずそもそものところで、約20年前に「Paul Bassett」は日本に上陸したわけですが、どのようなきっかけでカフェをオープンすることになったのでしょうか?

ポールさん:ワールド・バリスタ・チャンピオンになった後、日本の企業から機会をいただきました。クオリティの高いものを作るクリエイティブな人たちと、新しくて面白いことにチャレンジできる。しかもオーストラリアとは異なるマーケットとカルチャーの中で。それはとてもエキサイティングなことだと思いました。


大井:今日参加したポールパセットの卒業生たちは、自分をしっかりと持った個性が強い方が多くて、コーヒー業界やコーヒーカルチャーに大きな影響をもたらしている人たちばかりです。そのことについてはどう思いますか?

ポールさん:ありがとうございます。今日会えたみんなの活躍を見るとすごく誇らしく思います。オーストラリアと日本ではコーヒーのマーケットが異なります。それでも自分が彼らによい影響を大きく与えられたことを嬉しくも思うし、同時に恐縮もしています。

それでもやっぱり嬉しいです。インスパイアされたと言ってくれる彼らたちが、“自分のコーヒーの道”を歩み出し、彼ららしいコーヒーを続けていること、それをとても幸せに思います。


大井:日本のバリスタをトレーニングした際に、覚えていることはありますか?

ポールさん:日本のバリスタからはトレーニング中にもプロとしての精神、細部へのこだわり、クラフトマンシップを感じました。そしてそれは日本の文化からくるものかなと思いました。日本では職人技に多く出会うことができます。今日ここにいたバリスタたちに対しては特にそう思います。

大井:トークセッションの中で、何度も“マーケット”のことを話されていましたね。

ポールさん:非常に重要だと思うのは「お客様は誰なのか」を理解することです。世界中、コーヒーに情熱を注ぐ人はたくさんいますがビジネスを成り立たたせて安定した経営ができないと、コーヒーを作ることが困難になり、終わりを迎えることになってしまいます。それは避けたいですよね。


大井:日本に上陸した2000年代前半と今で、コーヒー業界は何が変わったと思いますか?

ポールさん:ひとつは、サードウェーブコーヒーのムーブメントによって、コーヒーの素材そのものに大きな注目が集まるようになりました。

もうひとつは、マーケットです。マーケットはその国の文化や歴史によって異なり、オーストラリアでは1950年代にイタリア人がエスプレッソを持ち込んで大きな影響力があったので、長い期間、深煎りが主流です。

その後、シアトル系コーヒーが上陸してカフェ文化や西洋化が一気に広まりました。西洋化はステイタスの象徴でした。そしてそれは雪だるま式に膨らんでいきました。

重要だったと思うのはシアトル系コーヒーが登場したことでカフェカルチャーが浸透したことです。日本だけでなくアジア全体に西洋文化のマーケットが生まれました。今、私たちそのマーケットの中にいます。だからそれは大きな変化だったと思います。


大井:参加したバリスタの中に、ポールさんは昔から「Coffee is a journey.」と言っていたと聞きました。

ポールさん:みんなそれぞれの旅をしています。そこで大事なのは「自分自身に問いかけること」だと考えています。

みんな基礎的なコーヒーのスキルや知識は持っている。それはもちろん必要なことです。ただアーティストがそうであるように、スキルを学んだら今度はそれをキャンバスの上でどのように表現したいのか、どんなキャンバスで何を作りたいのかを考える必要があります。それが「どんなコーヒーを作り出せるのか」に繋がっているように思うのです。

今日はみんなに会えて嬉しかったです。ありがとうございました。

 

<主催>

Paul Bassett 永田町店

新宿、渋谷に続く3店舗めとして2024年3月にオープン。同店を手掛ける株式会社ワイズテーブルコーポレーションは「XEX(ゼックス)」やイタリアレストラン「SALVATORE CUOMO(サルヴァトーレ・クオモ)」などを運営している。

住所:東京都千代田区永田町2-13-10 プルデンシャルプラザ 1F

営業時間: 9:00 – 17:30(LO) ※11:30~14:00はテイクアウトのみ

定休日:日曜日、祝日定休

アクセス:東京メトロ「赤坂見附駅」より徒歩約1分、東京メトロ「永田町駅」より徒歩約3分

HP: https://www.paulbassett.jp

 

Photo: Shintaro Yoshimatsu

Interview & Writing: Ayako Oi