大航海時代に活動したコロンブスに扮したメンバーらが、類人猿にピアノを教えたり、人力車を引かせたり…。男性3人組バンド「Mrs. GREEN APPLE」の新曲「コロンブス」をこんな内容で表現したミュージックビデオ(MV)に批判が相次ぎ、レコード会社などが謝罪して公開停止する事態になった。
視聴すれば、すぐに類人猿=先住民を連想させるだけに、「そもそも何でこの企画が通るの?」と疑問がくすぶっている。謝罪では、「公開前の確認が不十分」などと説明するだけだった。
500万年以上前に、旅の道中で類人猿たちと出会うストーリー
南海に浮かんだ島に、黄色い屋根の家が見え、Mrs. GREEN APPLEメンバー3人がその家を訪れるシーンから、MVが始まる。3人は、それぞれコロンブス、ナポレオン、ベートーヴェンといった偉人たちに扮した。
家の中では、類人猿の家族ら6人がソファに座って、ホームパーティーをしていた。
その後、メンバーらと6人との交流が始まり、家の中で、メンバー3人がバンド演奏を披露し、みなで踊りまくる。仲良くなると、ベートーヴェン役がピアノを教えたり、ナポレオン役が馬に乗る練習を指導したりする。外の世界では、ベートーヴェン役が乗った人力車を1人に引かせるシーンもあった。
また、類人猿たちがテーブルの卵を立てられないでいると、コロンブス役が卵を立てて見せていた。これは、アメリカ大陸の「発見」を誇示する「コロンブスの卵」と呼ばれるエピソードを表現したらしい。
パーティーを楽しんだ6人がソファの上で寝静まったころに、メンバーらが去って行くシーンでMVが終わっている。
このMVは、「もしも生きた時代の異なる偉人たちが一緒に旅をしたら?」との想定で、500万年以上もの時を越えて旅の道中で出会った類人猿たちとのホームパーティーを楽しむストーリーだという。
MVが2024年6月12日夜に公式ユーチューブチャンネルで公開されると、その内容について、X上で疑問の声が上がった。
「猿人は先住民/奴隷がどーしてもよぎるよ…」「英雄として称賛する歴史観って、一昔前のものでしょ」「ヤバいと思わなかったの?そもそも何でこの企画が通るの?」
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制作意図が伝わらずに誤解?レコード会社は「発表がすべて」
ただ、コロンブスの歌詞では、類人猿から人類が分かれたともされる「500万年前」に寄り道をしたという内容が書かれている。コロンブスがアメリカ大陸を「発見」したのは15世紀のことで、MVでは、まったく違う時代が描かれていた可能性もある。
このことから、批判について、「本人たちはその視点からMVを作っているわけではないと思う」「500万年前に立ち寄った異世界ファンタジーとして楽しめば良いのでは」との指摘も一部で出ていた。
ネット上で騒ぎになったことを受けて、レコード会社のユニバーサルミュージック合同会社とバンドの所属レーベルEMI Records、所属事務所Project-MGAが6月13日昼過ぎ、公式サイトなどでニュースリリースを連名で出した。
そこでは、「歴史や文化的な背景への理解に欠ける表現が含まれていた」として、MVの公開を停止したことを明らかにした。このMVについて、「当社における公開前の確認が不十分」だったと説明して謝罪し、「今後はこのような事態を招くことのないよう細心の注意を払い、皆様にお楽しみいただける作品をお届けしてまいります」と締め括っている。
MVは、500万年以上前の設定として描いたようだが、騒ぎになったのは、その意図が伝わらずに誤解を招いてしまったということなのだろうか。とはいえ、批判も予想されるような内容になっており、社内などでチェック体制はできていたのだろうか。
ユニバーサルミュージック合同会社の広報担当者は13日、J-CASTニュースの取材に対し、「基本的に公式サイトに出ていることがすべてです。歴史や文化的な背景への理解不足や公開前の確認が不十分だったことに尽きます」とだけ答えた。先住民団体などから抗議は来ていないという。
このMVは、コカ・コーラのキャンペーンソングにもなっている。製造・販売する日本コカ・コーラは、「多様性の尊重」を公式サイトで掲げており、その中には、「人や国の不平等をなくそう」とのキャッチフレーズもあった。同社の広報にも取材したが、13日19時までに回答は得られなかった。