学情が企業・団体376社の人事担当者から回答を得た調査によると、2024年度の採用活動における「新卒採用」と「キャリア(中途)採用」の割合を「5対5」と答えた企業等が22.4%を占めた。

「キャリア採用が新卒採用より多い」と答えた企業等(計30.6%)と合わせると53.0%となり、「新卒採用がキャリア採用より多い」企業等(計45.1%)を上回る。少子化で新卒採用の難易度が高まる中、キャリア採用が活性化していきそうだ。

伝統的日本企業のNECでも「ほぼ半々」

調査では、キャリア採用の人数は前年度と比べて変更するか、との問いには「前年度と特に変化なし」が41.8%。「前年度よりも増やす予定」の32.2%と合わせると、「前年度以上の人数のキャリア採用を行う」企業が4社中3社にものぼる。

キャリア採用において採用人数を増やす年齢層(複数回答可)は、「20代後半(26~29歳)」が70.2%と最も多く、次いで「30代」が57.9%、「20代前半(25歳以下)」が45.5%と続き、「40代」と答えた企業も19.8%あった。

この調査結果に、人材サービス企業で転職支援を行っているAさんは「まさにこのような傾向で、いま企業は動いていますね」とコメントする。

「たとえば、新卒に人気の高い日本の伝統的な大企業であるNECの採用計画でも、2024年度実績見込みは、新卒採用が680人、キャリア採用が640人とほぼ半々となっています。5対5と答えた企業が突出していた傾向に、ほぼ当てはまります」

ただし、同じようにデジタルサービス企業への変革を進める富士通は、2024年度のキャリア採用の計画数が2,000人以上と、新卒採用実績見込み800人を大きく上回っている。この違いはどこから来るのか。

「富士通がキャリア採用で増やそうとしているのは、主にコンサルティング領域の人材で、システムインテグレーターからの脱却の遅れを取り戻すべく人材獲得を急いでいる印象です。NECは2004年に傘下入りしたアビームコンサルティングが絶好調で、すでにグループ業績を牽引しています」

参考
https://jpn.nec.com/press/202403/20240321_03.html
https://pr.fujitsu.com/jp/news/2024/03/19.html

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新卒や生え抜き人材では「変革の牽引は困難」

今後もキャリア採用は増えていくのか。Aさんは「当然そうなる」という。

「まず20代の若手の場合、多額の予算が積まれている割に人手不足が著しいDX領域に、比較的高い給与で募集されることが多いです。とはいえ、決められたことをする『兵隊』としての需要という点は、従来と大きく変わるものではありません」

変化が起きているのは、30代後半から40代の脂の乗った世代で、実際に企業の「変革」に携わった経験のある人材だという。この層は採用人数としては相対的に少ないものの、需要が非常に高くなっている。

「各企業は中期経営計画に『事業ポートフォリオの変革』、すなわち中期的に企業が生き残るために戦略を大きく転換し、事業の組み合わせを変えようとしています。そのためには、既存事業における『生産性の飛躍的向上』に加え、『新規事業の創出』を推進しなければなりません。しかし変革を牽引することは、社内の既存人材では困難と考える企業が多いのです」

新たな変革を行う場合、新たな視点や専門性が必要になるが、既存の人材は発想が固まっていて柔軟な提案を行うことが難しく、リスキリングにも限界がある。人間関係のしがらみで、他部署に厳しい指摘を行えない場合もある。

「日本の政策も外圧に弱いといわれますが、企業の戦略転換にも『他社の血』が必要になるんです。これまでは波風立てずに従来のやり方をうまくこなしてきた人が評価されてきたのですから、生え抜き人材では変革は難しい。新卒を採用しても既存路線を脱却できない。変革推進人材をキャリア採用で確保する流れは、しばらく続くでしょうね」