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●年間700杯以上を食べ歩く“ラーメン官僚”こと田中一明氏が、日本全国のローカル・ラーメンの最新事情&行く価値のある名店をご紹介します。
全国各地のラーメンシーンを余すところなくご紹介する本企画。前回は大阪のラーメン事情について4回にわたって記事にしたが、今回は栃木県のラーメンシーンをとり上げたい。
栃木県は、大きく5つのエリアに分けられる。那須、日光、県央、県東、県南だ。県庁所在地は県央にある宇都宮市で、北関東最大の都市として盤石の地位を確立している。県人口189万の約3割に及ぶ51万もの人口を抱える宇都宮市は新幹線の停車駅であり、2023年8月にはライトレール(「宇都宮ライトレール」)が開通。現在は、ライトレール沿いに新しい飲食店が続々開業するなど、ますます活況を呈している。
エリアごとに個性が異なる栃木県のラーメン
そんな栃木県は、ラーメン的にも、実に“面白み”のある県だ。特筆すべき特徴をざっくりと述べれば、以下の4点が挙げられる。
1.那須エリアには、福島県のご当地麺「白河ラーメン」の実力店が数多く存在する。(「白河ラーメン」の総本山である福島県白河市と地理的に近接するため)
2.宇都宮等の県央エリアでは、ジャンルを問わず、多種多様なラーメンが提供されている。栃木県を代表する有名店の多くも、このエリアに集中する。
3.県南エリアの佐野市は、ご当地麺「佐野ラーメン」の総本山である。
4.小山市や栃木市でも、多様なラーメンが提供されている。県内外にその名を轟かせる話題店も、複数存在する。
これら4点が、栃木県ラーメンシーンの概要だ。より端的に言えば、北部は「白河ラーメン」、佐野市は「佐野ラーメン」の宝庫であり、ご当地ラーメン成分は十分。宇都宮市、小山市、栃木市では、色んなタイプのラーメンを食べることができる環境が整っており、かつ、実力店の数も潤沢。これが、栃木のラーメンシーンの現在地だ。
個人的には、県の南北に全国的な知名度を有するご当地麺「白河ラーメン」と「佐野ラーメン」の集積地を擁する点は、栃木県の大きな強みだと思う。私も、これまでに何十回となく同県を訪れ、「白河ラーメン」と「佐野ラーメン」に舌鼓を打ってきた。
しかし今回ご紹介するのは、県央エリアの宇都宮にあるお店『らあめん厨房 どる屋』。同エリアでも屈指の人気を誇る名店の魅力をご紹介していこう。
宇都宮でもトップクラスの人気店『らあめん厨房 どる屋』
冒頭で申し上げたとおり、宇都宮は、「各店舗が提供するラーメンのジャンルが多種多様」という特徴がある。
「県外のラーメン好きが栃木県で最初に訪問すべき店」として名前が必ず挙がる『花の季』、箸が立つほどスープが濃厚なつけ麺が若者を中心に強い支持を得ている『村岡屋』、神奈川県の淡麗ラーメンの名店『支那そばや』にルーツを有する『心麺』、創作色の強いハイレベルな1杯を安定的に提供する『麺藏藏』など、上位人気店の顔ぶれを見ても、各々が繰り出す1杯の味わいは千差万別だ。
また、宇都宮市は北関東最大の都市で、人口に比例するかのようにラーメン店の数も多い。当然のことながら、店舗間の生存競争も熾烈を極める。他のエリアであれば十分営業していけるだけの実力があっても、営業場所に宇都宮を選んだばかりに、他店に競り負け閉店の憂き目に遭う店舗も少なくない。
そんな宇都宮において、1996年の開業以来、一度も脱落することなくトップクラスの人気店として君臨し続けるのが『らあめん厨房 どる屋』である。同店を切り盛りする落合店主は、独学で『どる屋』を開業し、その腕一本で同店をスターダムにまで押し上げたスゴ腕だ。
「黄金の鯛塩バターらーめん」
イチ押しは「黄金の鯛塩バターらーめん」。「鯛らーめん」シリーズは、以前から「限定商品」として提供されていたが、2022年、晴れてレギュラー商品へと昇格。「黄金の鯛塩バターらーめん」も、そのバリエーションのひとつ。「ラーメンに西洋料理のエッセンスを採り入れたい」と、かつて辻調理師専門学校の門を叩いた店主が、試行錯誤を経てたどり着いた研鑽のたまものだ。
鳥取県境港で獲れた天然の鯛を一夜干しし、素材が有する等身大のうま味だけをクローズアップ。熱気球のようにふんわり膨らみ、軽やかに宙を舞う鯛の芳香は、その匂いを嗅いだだけで忘我の境地へと陥ってしまうほど魅惑的。
フランスのエシレ村で造られる発酵バターがスープへと溶け出すにつれて、スープのコクとうま味が右肩上がりに増幅していく点も、ドラマティックだ。鯛のクセや生臭さを、ここまで綺麗に取り除くことに成功した“鮮魚ラーメン”は珍しい。
「百聞は一食に如かず」。未訪の方はぜひ一度足を運んでみてもらいたい。
●SHOP INFO
店名:らあめん厨房 どる屋
住:栃木県宇都宮市中央2-8-6
TEL:028-649-5917
アクセス:東武宇都宮駅から徒歩10分
●大阪ラーメン編はこちらから
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●著者プロフィール
田中一明
「フリークを超越した「超・ラーメンフリーク」として、自他ともに認める存在。ラーメンの探求をライフワークとし、新店の開拓、知られざる良店の発掘から、地元に根付いた実力店の紹介に至るまで、ラーメンの魅力を、多面的な角度から紹介。「アウトプットは、着実なインプットの土台があってこそ説得力を持つ」という信条から、年間700杯を超えるラーメンを、エリアを問わず実食。47都道府県のラーメン店を制覇し、現在は各市町村に根付く優良店を精力的に発掘中。