アメリカでは近年、再び大規模なレイオフが起こっています。今年に入ってからもその大きな波は続いており、テック系企業を中心に大規模な人員整理がされている模様です。即日解雇も珍しくないアメリカですが、レイオフされた場合に生活費はどうなるのでしょうか? 日本のように失業保険はあるのでしょうか? 今回はアメリカの失業保険事情に迫ります。

大規模レイオフが進むビッグテック業界

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Amazon、Dell、Google、Microsoft、PayPal、Zoom…。2022年末から23年初夏にかけて、テック系企業で大規模なレイオフのニュースが続きました。そして今年に入ってからもテック系全体で、再びレイオフが活発化しています。ニューヨークに住む筆者の周りでも、長年務めたテック企業でレイオフの対象になったという人がちらほらいます。

報道されている具体的な人数は、Teslaが3300人規模、Microsoftが1900人規模、eBayが1000人規模、Salesforceが700人規模、Amazonが500人規模、Googleが数百人規模と凄まじい人数です。

米ビジネスインサイダーによると、例えば今年4月にレイオフが始まったTeslaでは、従業員専用SNSでレイオフを予告する投稿があり、それを見てレイオフを知りショックを受けた従業員もいるようです。

ほどなくして社内メールでイーロン・マスクCEOから従業員の10%以上を解雇する計画が伝えられ、数時間のうちに実際にメールを受け取って解雇されたことを知った従業員もいたとか。ほかにもテスラの社内システムへのアクセスが遮断されたり、出社に必要なIDカードキーが使えなくなったことで自分が解雇されたと気付いた従業員もいたといいます。

大きな成長志向から効率志向へと移ったかのように大胆なレイオフを進めるこれらのビッグテック。生き抜くのが厳しいこの業界では慈悲や恩情なんて言葉がないことを物語っています。

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解雇された場合の失業保険はどうなっている?

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会社に解雇された場合、失業保険給付金はどうなっているのでしょうか?

失業保険給付金 (UI) はアメリカの場合、州によって多少異なります。UIの請求をすることができるのは、例えばニューヨーク州ではレイオフの理由が事業規模の縮小など会社都合であり、UI申請者の過失でないことが前提です。また過去18ヵ月間にわたって州内で働き、失業した場合などに限られるなど細かくルール化されています。また就労が即可能な状況で、求職活動に積極的であることが申請者に求められます。

UIはニューヨーク州の場合、最長26週間にわたって受け取ることができます。この期間も州によって異なり、ミズーリ州など8週間の州もあるそうです。UIの額は失業前の給料に応じて異なりますが、週あたり約100~500ドル(約1万5700円~7万8000円)が一般的なようです。UIの収入は課税対象となります。

例えばニューヨーク州で2024年6月1日にUIの申請をしたとすると、過去に遡って四半期ごと(例えば2023年10~12月など)の賃金が3300ドル(約51万8000円)以上であることなど、いくつかのルールが定められています。

また自らの意思で退職した場合もUI受給の対象になり得る場合があるそうです。米CNBCによると、例えば一部の州では、自宅から離れた場所への転勤を雇用主から求められ、それに応じることができないために退職を選んだ場合、またはパートナーが転勤になった場合に退職を選んだ場合、UI受給の資格があるそうです。

またアメリカ国籍を有していない場合でも受給対象になり得るという情報もあります。

いずれにせよ専門家によれば、多くの人が申請前から「自分はUI受給の対象外」と諦める傾向にあるといい、「失業をした場合は自分で判断せずまずは迅速に申請を試してみること(生活費の全般を賃金に頼っている人こそ)」が推奨されています。

ニューヨーク州の資料にも「確信が持てない場合でも申請することをお勧めします。会社から『UI受給の資格なし』『補償対象外』と通告された場合でも申請してください。担当部門が資格の有無を独自に評価します」と書かれています。前職で賃金をそれほどもらっていなかった場合も、生活が困窮するようなケースでは何らかの救済措置を提示してくれることもあるかもしれません。申請を諦めないことが大切です。

UI申請はオンラインや電話で行うことができます。オンラインでUIを概算できる便利なツールも。