近年では働き方が多様化し、サラリーマンが副業としてビジネスを展開したり、会社組織を飛び出して独立したりする人が増えています。個人事業主がさらにビジネスチャンス獲得を狙い、適切な節税を実現するには「法人化」がひとつの選択肢となりますが、適切なタイミングはあるのでしょうか。司法書士法人永田町事務所の加陽麻里布氏が解説します。

働き方の多様化で「法人設立」を考える人が増えている

近年では、フリーランスとして独立する、あるいはサラリーマンとして勤務しつつ副業するなど、働き方の多様化が進んでいます。個人事業主として登録するべきか、それとも会社として法人を設立するべきか…といった相談が、筆者の元にも多く寄せられるようになりました。

実際、個人事業主やフリーランスから「法人化」を検討する方が増えていますが、その背景には、2023年10月1日から導入された「インボイス制度」があります。

「個人事業主」とは、個人で事業を行い、事業所得を得る人を指しますが、これに対し「法人化」は、株式会社や合同会社といった法人を設立し、これまで個人が行ってきた事業を法人に引き継ぐことを指します。

集客や収入の安定しない段階では、ひとまず「個人事業主」として届け出をしておき、事業が軌道に乗ってきたタイミングで「法人化」に踏み出す…というのが一般的なパターンだといえます。

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法人化の「ベストタイミング」はいつか?

では、個人事業主から法人化するベストタイミングはいつなのでしょうか?

一般的には、下記の4つのタイミングがあると言われています。

〈1つ目〉年間所得が800万円を超えたとき

〈2つ目〉年間売上げが1000万円を超えたとき

〈3つ目〉株式などを発行して資金調達を検討したとき

〈4つ目〉法人としか契約できない取引先との契約締結を要するとき

それぞれについて、順番に見ていきましょう。

〈1つ目〉年間所得が800万円を超えたとき

「所得」とは、「収入」から「必要経費」を引いて「残った額」を指しますが、なぜ年間所得800万円が法人化のベストタイミングかというと、年間所得が800万円の場合、所得税率が23%に設定されているためです。

個人事業主に課される所得税は「累進課税」であり、所得が上がれば上がるほど税率が高くなっていきます。一方、法人は「比例課税」であり、資本金1億円以下にあたる法人の場合、税率は15%です。

そのため、所得が700万円を超えたあたりから法人化を検討し、800万円前後で法人化に踏み出す、ということをおすすめしています。

〈2つ目〉年間売上が1,000万円を超えたとき

年間売上が1,000万円を超えると、消費税の納税義務が生じます。そのため、年間売上が1,000万円、というのも法人化のひとつの目安といわれています。

個人事業主の場合、2期前、または1期前の特定期間1月1日から6月30日までの売上が1,000万円を超えた場合、課税事業者となります。

たとえば「令和5年の売上が1,000万円を超えた場合」、もしくは「令和6年の上半期の売上が1,000万円を超えた場合」には、令和7年には課税事業者として納税義務を負うことになります。

しかし、資本金1,000万円以下で法人成りをした場合、法人成りをしてから最長2年間は消費税が免除されます。

「個人事業主」と「法人」は、期間を切り離して考えるため、個人事業主と法人の経営者が同じ人であっても、法律上は別の人格と考えられます。そのため、法人成りをしても、個人事業主と法人の期間は別の事業者として考えらえます。

そのため、このタイミングで法人化すれば、最大2年間の消費税の納税免除が適用され、消費税の納税義務を免れることができるのです。

〈3つ目〉株式などを発行して資金調達を検討したとき

株式会社でなければ、株式を発行することはできません。そのため、資金調達を考えている場合には、法人化を検討することになります。

〈4つ目〉法人としか契約できない取引先との契約締結を要するとき

会社のなかには「個人事業主とは契約できない」としているところも相当数存在します。

筆者も司法書士事務所を経営していますが、個人事業主として司法書士事務所を経営していたときは、大きい取引先と契約ができないことが何度かありました。

そのため、ビジネスチャンス拡大を狙うなら、法人化が選択肢になります。