今の「いい仕事」が、将来も「いい仕事」のままとは限らない

皆さんは、「いい仕事」と言われると、どんな仕事を想像するでしょうか? こちらも明確な定義はありません。しかし、明確に定義が決まっていないからといって、「いい仕事」自体が存在しないわけではなく、人によって条件、形が違うというだけに過ぎません。

その中でも、一般的な特徴として、①やりがいがある、②将来性がある、のが「いい仕事」だと言われることが多い印象です。

①のやりがいについては、何にやりがいを感じるかは人によって異なるので、定義が難しいです。やりがいを決定する要素は非常に多く、業界・業種・分野といった大きなすみ分けから、どのような関わり方をするかといった職種、さらには仕事の進め方も関係します。これにはOB/OG訪問等での深い業界研究や企業分析が必須となるため、「働きがい」を考えられるのは就活の中盤戦以降です。

また、②の将来性については、2022年11月の生成AIの登場により、多くの仕事がAIに取って代わられると言われていますので、こうしたAI等で自動化することのできない仕事は、将来性が高い仕事だと考えられています。ですが、これは本当でしょうか?

たとえば、生成AIの登場前は、警備員や運転手、工場作業といった定型的な繰り返し作業が中心のブルーカラー的職業が取って代わられると言われていました。ところが、生成AI登場後はむしろ人の気持ちを汲んだりクリエイティブな作業をしたりするホワイトカラー的職業こそAIが代替できる、ブルーカラー的職業は肉体というアナログが必要だから「職人の技」は再現できないのでは? と論調が変わりました。

今はまだ、専門性の高い知識が必要な仕事こそ将来性がある、と思われていますが、AIに代表される技術的進化により、知識やスキルの陳腐化が急速に進行しています。プログラミングこそ将来性がある、つぶしが利くと考えて新卒でプログラマーになった私でしたが、20数年経った現在ではAIがプログラミングを自動生成してくれる時代になりましたので、単なるプログラマーの仕事はすでに減少しつつあります。

10年後の未来の経済や企業の動向を正しく予測できる、そんな人や手法は存在しません。将来性があるに違いないと、特定の仕事を選んだとしても、数年後に後悔している可能性は十分にあります。少なくとも私たちが想像している将来とはまるで違うものになる、そうした認識で就活を進めていきましょう。

森田 昇

10回転職したキャリアコンサルタント・中小企業診断士

何の資格も技術もないまま就職氷河期の1998年に大学を卒業、社会人となる。新卒入社した当時のITブラック四天王を3年で辞めた後、2社目は1ヵ月で、3社目は2ヵ月で退職。サラリーマン生活20年間で10回の転職を経験し、年収の乱高下を味わうも「ちょいスラ転職®」と「就活の技法」で生涯収入の最大化へと着実に近づいている。著書に『売れる!スモールビジネスの成功戦略』(明日香出版社)、『年収300万円から脱出する「転職の技法」』(日本能率協会マネジメントセンター)がある。