今回の「FPに聞きたいお金のこと」は、50代女性からの「在職老齢年金」に関する質問です。年金受給を開始する65歳以降も働く人が増えていますので、「在職老齢年金」は多くの人に知っておいてもらいたい制度です。
50代女性の相談内容
老後のことを考える時に「在職老齢年金」という言葉をよく見聞きするのですが、どのような仕組みなのでしょうか?また、なるべく損をしないようにしたいのですが、どのような働き方をすると得になるのでしょうか?
(広告の後にも続きます)
在職老齢年金と支給停止の仕組み
貯金箱と電卓
【画像出典元】「stock.adobe.com/Dragon Claws」
年金をもらいながら働くと年金の一部または全額が支給停止になるというのが「在職老齢年金」制度です。よって、「なるべく損をしたくない」「できれば得をしたい」という気持ちはよく分かります。ぜひ制度をしっかり理解して、より良い働き方を模索してください。
まず在職老齢年金の仕組みについて確認します。年金は2階建ての制度になっていますが、以下の2階建て部分「老齢厚生年金」が支給停止の対象となります。つまり、基礎年金部分である「老齢基礎年金」は在職老齢年金の対象ではないため全額支給されます。
在職老齢年金による年金支給月額の計算式は以下のようになります。
基本月額と総報酬月額相当額との合計が50万円を超える場合
基本月額-(基本月額+総報酬月額相当額-50万円)÷2
※50万円は令和6年度の支給停止調整額
少し分かりにくいので一つずつ見ていきます。
基本月額は年金の2階建て部分で、老齢厚生年金を月換算した金額です。総報酬月額相当額というのは1カ月あたりの給与です。ただし、賞与が支給されている場合は賞与も1カ月あたりに換算します。例えば月額給与が30万円で賞与が120万円の場合、賞与を1カ月あたりに換算すると120万円÷12=10万円となりますので、総報酬月額相当額は30万円+10万円=40万円となります。
在職老齢年金による調整が入るのは、「基本月額と総報酬月額相当額との合計が50万円を超える場合」です。50万円を超えた場合は超えた金額のうち1/2が支給停止となります。
例えば、基本月額が15万円、総報酬月額相当額が40万円の場合は合計が55万円となりますので、5万円超えたことになります。この超えた額の1/2、つまり2万5000円が支給停止となります。
よって、この場合における月額の老齢厚生年金は下記の計算で12万5000円となります。
基本月額が15万円、総報酬月額相当額が40万円の場合
15万円-(15万円+40万円-50万円)÷2=12万5000円
50万円を超えない場合は調整が入らず、年金に影響はありません。つまり働きながら全額年金を受け取ることができます。