占いサイト詐欺被害「年間2000件超」出会い系サイト“下火”で業者が移行か… 悩みにつけこむ「高額搾取」の“悪質手口”

「あなたは私にとって運命の人」などとうたってインターネット上で“占い鑑定”し、金銭をだまし取る「占いサイト詐欺」。その相談や被害は後を絶たず、中には2000万円もの高額被害に遭う人もいるという。幸せな人生を求める“心”をそそのかし、料金をだまし取る手口とはどのようなものなのか。

全国から2000件を超えるトラブルの報告

「スマートフォンにある日送られてきた“占いサイト”の広告をクリックしたことが始まりでした」

占いサイト詐欺の被害に遭ったというAさんは、きっかけをこう振り返る。

悩みを抱えていたAさんが「無料」という言葉に乗せられて占いサイトに会員登録したところ、Sと名乗る女性鑑定師からメールが届き、数通のやり取りをしたという。


実際にAさんに届いた「占い詐欺サイト」からのメール文面(一部)

「あなたのことを知りたく、『成就』という言葉を送ってください」と言われ、「成就」とメールを打って返信すると、それに対して鑑定文が届く。

「今考えれば不自然なやり取りだとは思う」というが、当時のAさんは疑いを持たなかった。

2日間の“無料期間”を終えて「もっと鑑定してほしい」と継続の鑑定料を振り込んだところ、連絡が一切絶えたという。

「私の被害は500円でしたが、それでもいい気分はしませんよね。だまされてから初めて調べてみて、こういう詐欺が多いのだと知りました」(Aさん)

インターネットを通じた消費者被害の相談も受け付けている国民生活センターによると、占いサイトに関連する相談の件数は、近年になって増えてきたという。

ここ数年を見ると、2020年は2131件、21年は2391件、22年は2544件の相談があった。23年は2070件と微減したが、それでも2000件を超える相談があり、「(トラブルが続いている)傾向に変わりはありません」(相談情報部・森澤槙子さん)。

出会い系サイトの業者が移行している

インターネットを介した各種詐欺等を告発する口コミサイト「鬼島の出会い系クチコミの鬼!」(https://onijima.jp)管理人で、占いサイト詐欺についても詳しい鬼島慶介氏によると、詐欺目的の占いサイトの数は現在120~150ほど。業者数は20~30ほどで、一つの業者が多いところで5、6サイトを運営しているという。

占い詐欺サイトを運営する業者の実態や、詐欺の手口はどのようなものなのか。

「結婚を考える男女から金銭をだまし取る出会い系サイトが下火になり、(業者が)ギャンブル系や占い系に分散しています。出会い系サイトとシステムが似ていて、そのまま利用、運営しているようです」(鬼島氏)

正当な占いサイトでは鑑定文1通あたりの金額を請求することが多いとした上で、鬼島氏は「悪徳なサイトではおまじないの言葉を1文字ずつ送らせ、送信のたびにお金がかかります」と説明する。

たとえば、「ごせんぞさま ごめんなさい」(12文字)の文章を1文字ずつ送らせ(1通送信につきおおむね1500円、12文字の場合計1万8000円)、高額を搾取する。

こうした被害者は高齢の女性に多いとされ、占い師を“信じて”何通もメールを送り続け、2000万円もの高額の被害に遭った人もいたという。

「実際に」「個別に」占ってもらえば立証は難しい

被害に遭った場合、振り込んだ“鑑定料”は取り戻せるのか。各種詐欺被害の救済に強い佐久間大地弁護士はこう語る。

「占いサイト詐欺の場合、取り戻せる可能性はあります。ただ、支払い方法によって、取り戻しやすさの傾向があります。

もっとも取り戻しやすいのはクレジットカードで支払った場合で、「業者側もクレジットカード会社や決済代行会社に目を付けられたくないので、返金の割合を比較的高く提示してきます」

同じ理由で「ネットライドキャッシュ」などの電子マネーも決済代行会社が間に入ることがあり、返金割合が高い場合が多いという。

一方、銀行振り込みは分が悪く、「協力を要請する先がなく、業者との交渉が決裂した場合に取れる手段が少ない。業者側もそれが分かっているので返金割合を低く提示してきます」(同前)。

ただし、佐久間弁護士はいずれの決済方法でも「全額の返金は難しい」といい、被害金を返金させるために、 “証拠”を取っておくことの重要性を強調する。

「支払った額が分かるもの、銀行振り込みの明細やクレジットカード決済の明細は必要です。詐欺を働いた相手の特定につながります。また、詐欺だと判断してもらうために文面のスクリーンショットも必要です。なるべく初回鑑定からの一連の流れがあったほうがよいでしょう」

なお、「一度でも“実際に” “個別に”鑑定してもらった場合」は詐欺とみなされない場合もあるため注意が必要だ。

「逆に、サイト内で複数のユーザーに対して同じような文言が届いている場合は、『実際には占いをしていないのに、占いをしているかのように見せている』として、不法行為にあたり得ると思います」(佐久間弁護士)

占い師が確実に存在しているのか調べて

前出の鬼島氏は、詐欺サイト・占い師について、「超能力者のように振る舞い、占いは未来を変える力がある、と強調してきます。また、周囲に他言しないようにとも求めてきます。自分がこれから占ってもらおうとしている相手は“存在しているのか”、 SNSなどで事前に調べてみるべきでしょう」とアドバイスする。

佐久間弁護士も「利用しようとしているサイトについて事前に調べることが、詐欺被害に遭わないためには重要かと思います。被害が出ているサイトであれば、情報が出てくることが多いです。また、『この文言を送れ』等と無意味な数字や言葉を執拗に送るよう指示してくる場合は、『おかしい』と考えたほうがよいでしょう」と助言する。

仕事や生活、将来のことなどを占ってもらいたい場合、まずはサイトや占い師の真偽を“鑑定”する目が必要ということだろう。