村田晴信が語る「ミラノと東京で模索した、日本人が作る素敵なドレスとは」

東京コレクションで、本場ミラノの風を吹かせているブランドがある。村田晴信が手掛ける「HARUNOBUMURATA」は、シーズンを重ねるごとに周囲の期待以上のコレクションを更新してきた。そんな若きデザイナーに、ブランドを立ち上げるまでの経緯を聞いた前編に続き、後編では東京を拠点にしながら市場に忖度せずミラノで培った手法で服作りを続けている理由、ドレスを通して表現したいことを聞く。

原点に戻ってみえてきたこと

——2024年秋冬コレクションは、写真家アウグスト・ザンダーのポートレート「Young Farmers」が着想源。2024年春夏シーズンの軽やかさから一転した重厚な世界観でした。何か心境の変化があったのでしょうか。

2024年春夏コレクションはエレガントな世界観をヒントに、美しいものを作ったシーズンでした。明確なゴールに向かって作っていきましたが、ある意味エレガントなものをヒントにエレガントを表現することでアウトプットは想像できる範疇だったのかもしれません。とても信頼している、ブランドをよく見てくれているアシュリーのvogue runwayのレビューでは、表現に物足りなさがあると指摘があったんです。既定路線の想像できる範疇のレベルのクリエイションでは、世界で戦っていくには不十分だとハッとさせられました。

次の季節は、挑戦して真逆な世界観からエレダントなものを作ろうと決めたんです。世界観を深く解釈して、自分のフィルターを通して表現する。ここ数シーズンは分かりやすいテーマで作っていたので、今回はショー直前までどうなるかをつかめず、不安に感じていました。難しいテーマに取り組むことでクリエイターとしてひとつステップを登ることができたと感じています。

——次のシーズンについては、どういった構想を持っていますか。

先日ブランクーシの展示を見に行ったのですが、本質を究極的に削ぎ落とした彫刻のアプローチに改めて感銘を受けて。エッセンシャルな美しさにどこまで近づくことができるか。ということに挑戦してみたいと考えています。

———イタリアと日本を活動拠点にしてきましたが、どういったデザイナーを目指していこうとお考えですか。

日本人の自分が作った服が海外でどう見られるのかを考えたときに、“すっと切れていく感じ”が期待されているのではないかと思っています。日本人デザイナーとしての強みはそこなのかなと。常に、その文脈の中でいかに新しい視点を与えるかが、世界に出ていく上で重要になってくる。常に模索しています。憧れていた世界だからこそ、正面から勝負したいと考えています。

——今後、やってみたいことを教えてください。

アトリエ兼ショップのような、サロン的なスペースを元麻布に作っています。これまでもショップと手を組んで、ドレスのオーダー会やイベントを開催してきました。お客さまと交流する機会を強化していきたい。クリエイションの背景もご覧いただけるような、体験を持ってブランドの世界観に触れてもらえたら。背景のある服は、同じドレスでも着用した時の高揚感がきっと高いと思うんです。

【前編】「ハルノブムラタ」デザイナーの足跡。ジル・サンダーで学んだブランドづくり

text: Aika Kawada

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