娘のことは助けてあげたいが…A夫婦のホンネ

A夫婦は、このように苦しい状況にある娘のことが気がかりな様子です。

「娘と孫を助けたい気持ちはありますが、私たちも自分たちの生活でいっぱいいっぱいで、援助することが難しくて……。なにか手伝いに行きたいなとは思いますが、同じ関東といっても東京までは交通の便も悪く、お金も時間もかかってしまいます。

自分の子どもが辛い状況なのに放置していると言われても仕方がありません。ただ、生活保護を受けていれば最低限の生活は保障されていると思うので、その点は離れていても安心できます。もちろん、いつまでもこのままではいけないとは思うのですが……」

FPとの面談時、浮かない表情でA夫婦はそうおっしゃいました。

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なかなか抜け出せない生活保護の「沼」

愛する娘をどうにかしたいと考えるA夫妻ですが、A夫妻は月19万円の年金を受給しながら生活している身です。

総務省の令和5年度家計調査報告書によれば、65歳以上の夫婦のみの無職世帯における家計収支は、平均で収入(年金など)が24万4,580円、支出が28万2,497円となっています。A夫婦の収入は平均以下ですから、2人が自分たちの生活でいっぱいいっぱいというのもうなずけます。

Bさん自身も、このままではいけないとは思いつつも、食事や住居、医療などの基本的な生活ニーズが満たされていることの安心感は大きく、自立への1歩を踏み出せずにいます。

お金について相談できるような友人もいないそうで、A夫婦が電話したところ、Bさんは涙ながらに次のように答えたといいます。

「少しずつでも仕事するほうがいいことはわかってるんだけど、子どもを預けるところがないの。また生活が不安定になれば私もピリピリしてしまうし、子どもの笑顔を奪ってしまうのが申し訳なくて……」。

一度生活保護を受給すると、就労して自立しようと思っても、

■低賃金の仕事しか見つからず。働くより生活保護を受けているほうが経済的に安定する

■保育所の空きがなく、子どもを預けることができないため働くことが困難

など、さまざまな理由で思うように働けず、長きにわたって生活保護から抜け出せないというケースも少なくありません。

しかし、人生をもう少し俯瞰して見てみると、生活保護を受けたままでは将来、子どもの進路などにも影響を与える可能性が考えられます。生活保護のメリットは活かしながらも、だんだんと生活基盤を整え、自立するための準備を進めることが大切です。