日本では数多くの女性パティシエたちが働いています。女性パティシエが年齢とともに減少していく、厳しい世界。その中でも紆余曲折を経ながらそれぞれの幸せとそれぞれの人生を歩むシェフたちがいます。そんな菓子職人として、令和の時代を生き抜くシェフたちの人生を追いかけていきます。

店舗で営業するスタイルだけではなく、オンライン販売がお菓子の販売の主戦場に変わっていった令和の時代。様々な作り手が増えた中でも、今回はまるでアートのような、そして童話のようなストーリー性を感じさせる作り手にフューチャーします。

今回取材させていただいたのは、田中知彩都さん。モデル業から食の世界へ転身し、フードスタイリストとしてお菓子のケータリングやコラムの執筆、またテーブルまわりのスタイリングなど、その活動は多岐に渡ります。現在はアート×お菓子を掲げ、色と童話のケーキ「Color Story Cake」を立上げ活動をされています。

その美しいお菓子の数々の秘密と、作り手になったきっかけやストーリーについてお話を伺いました。

お菓子の常識を覆す色。そして「Color Story Cake」の物語的な美しさ

オリジナルのお伽話から色のケーキを表現するというプロジェクトから生まれたブランド「Color Story Cake」。お菓子の作り手として、田中知彩都さんが。Story tellerとして崎間りえさんが参加するプロジェクトで、二人で一つの作品が生まれます。

ちょっとダークでファンタジーな世界観と、絵本から出てきたような画作りにファンも多いです。主な販売は、不定期でのオンライン販売とたまにイベントでの販売会やワークショップを通じてその世界を広げています。

更に印象派モネの個展用に絵画をイメージした琥珀糖を作るなど、アートとお菓子をミックスさせたクリエイションは作り手として注目されています。

またお菓子は身体に優しい素材を使い、色合いも着色料は一切使用せず、すべて自然由来の素材や食材から表現しているそう。

ストーリーのディレクションをしている崎間りえさんとは、モデルの仕事を通じて知り合ったんだとか。青色が好きだった崎間さんから「青いケーキが食べたい」とオーダーが。そこがスタートだったそう。

オーダーは色だけにとどまらず物語へ。“森の中にいて。森の中の妖精が雨上がりに見る空の色”。せっかくだから作品撮りしてみよう思い、初回の作品のストーリーと絵が完成して、次のカラーへとプロジェクトは進んでいったそう。

新しいお菓子の道を切り開く、田中知彩都さん。もともとモデルをしていたというキャリアからどうして食の世界に入ったのでしょうか?

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おばあちゃんに買ってもらった「醗酵機」が食の未来を拓く

田中さん「16歳の時からモデルの活動をしていて、大学も東京でした。東京で学生をしながら、モデルの仕事や体型維持のストレスもあり休日は家に引きこもりながらの生活で、唯一の楽しみが毎日パンを焼くことでした。当時は学費もありましたし、裕福な生活ではなかったものの私がパンに夢中になっているのを見て、おばあちゃんがパン生地作りに欠かせない醗酵機を買ってもらったんです。そこから本格的なパン作りの勉強が始まりました。

そこから学校を卒業したあと、フードコーディネーターの資格を取得したり、皆さんもご存じのパリのベーカリー『メゾンカイザー』で修業しました。その後、小さなベーカリーを開くことにしました。」