ニュースで目にする住民税非課税世帯とは?

これまで見てきたように、住民税は均等割と所得割に分かれています。均等割は自治体が定めた基準の所得を超えると、所得の多い少ないにかかわらず納付が必要です。所得がない、もしくは少ない場合は均等割も免除され、住民税が非課税になります。ニュースなどで目にする「住民税非課税世帯」とは、その世帯全員が住民税非課税となっている世帯です。

図表:筆者作成

住民税が非課税になる世帯の基準

住民税が非課税になる基準は自治体によって金額が異なるため、今回は福岡市を例にとってみましょう。

(均等割も所得割も課税されない方)
生活保護法の規定による生活扶助を受けている方
前年中の合計所得金額が135万円以下(給与所得者の収入金額に直すと204万4000円未満)でその年の1月1日現在の状況で次のいずれかに該当する方
障がい者、未成年者、寡婦、ひとり親

前年中の合計所得金額が次の算式で求めた額以下の方
•    同一生計配偶者および扶養親族がいない方 45万円
•    同一生計配偶者または扶養親族がいる方
35万円×(同一生計配偶者+扶養親族数+本人)+21万円+10万円

上記の要件に該当すると住民税が非課税になり、世帯全員の住民税が非課税となる世帯が住民税非課税世帯となります。

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住民税の負担を減らすには? 


人によって違う税金の負担
【画像出典元】「stock.adobe.com/78art」

住民税や所得税を計算する際の課税所得を下げる効果があるiDeCoや生命保険料控除などの活用が挙げられます。iDeCoは掛け金の全額が所得控除の対象になり、住民税の節税効果があります。また生命保険料控除も課税所得を下げる効果があるため、節税目的で個人年金保険などを利用している人もいます。

またふるさと納税を利用するのも良いでしょう。実際は住民税の前払いになりますが、返礼品などを目的にして利用するのもおすすめです。

退職・転職を考える際に住民税で気を付けること

退職や転職を考える際に注意をすることはいろいろありますが、上述したように注意する点の一つに住民税の納付が挙げられます。

退職や転職の際に注意する点をいくつか挙げてみましょう

住民税は前年の所得に基づいて算出されるので、もし転職して給料が下がったり空白期間で収入がない場合においても、前年の所得に準じて納付しなければならない
会社からの特別徴収は12カ月にわたって平均した金額で納付するが、普通徴収は住民税を最大4期に分けて納付するので一回あたりの金額が大きくなる
自分で納付する普通徴収で納付期限を過ぎた場合、延滞税が課せられる
期限を過ぎても納付しない状態が継続すると差し押さえの対象になる
引っ越しの際に転出・転入届を出していなければ未納付の状態になりやすい
給与からの特別徴収が希望であれば手続きが必要
空白期間がなく転職し特別徴収が継続する場合、前勤務先と転職先で書類のやり取りがあるので、転職先を知られてしまう可能性がある。

住民税はそれなりに大きな金額になりがちです。また特別徴収で納付していると毎月の納付金額は平均化されていますが、普通徴収になると1期(=3カ月分)をまとめて納付するため、納付する合計金額が同じでも負担感が大きくなることも考えられます。

もし転職や退職などの関係で収入が減少し、どうしても住民税を納付できないようなことが発生したら、まずは市町村の担当部署に相談しましょう。相談がないまま滞納してしまうと、状況が悪化する可能性が高くなり、差し押さえなどに発展することもありえます。

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まとめ

毎月の給与明細で「住民税が高いなぁ」という気持ちになりますが、住民税は地域の行政サービスを行うために必要な税金です。そのため高額になっていますが、住民税が存在しない世の中では公共サービスを受けることができないともいえるでしょう。

会社員や公務員などの給与所得者は特別徴収という天引きの仕組みがあり、普段は納付方法を意識することは少ないでしょう。ただ転職や退職をすると会社が行ってくれている税金や、社会保険の手続きや納付する金額などを嫌でも意識することになります。また税金や社会保険に関連する手続きや費用の逃げ得はできません。もし手続きが終わっていない場合や納付することができないような事態があるのであれば、速やかに自治体などに相談するようにしましょう。

特に転職の場合は前職を退職後すぐに次の企業で勤務するのではなく、空白期間があると普通徴収になり自分で納付しなければいけないということもあります。また前年の所得をもとにしているため、転職後の給与が下がったとしても翌年5月までに納める必要がある住民税の金額は変わりません。以前であれば退職金を税金や当面の生活費に充てるということもありましたが、退職金制度を企業型DC(企業型確定拠出年金)に変更している企業では60歳未満での退職時に支給される金銭が何もないということも増えました。転職や退職をする際は十分に意識しておく必要があるでしょう。

住民税に関するQ&A

Q:休職中の住民税の取り扱いはどうなりますか?

A:休職期間が長期になるケースでは、特別徴収(天引き)から普通徴収に切り替えられることがあります。住民税は前年の所得に基づくため、休職期間中も納税の義務があります。

Q:転職先企業に住民税を天引きしてもらうにはどうすれば良いですか?

A:退職前に「住民税特別徴収継続届」を勤務中の会社で作成してもらい、転職先の企業に継続届を自治体に提出してもらうことで住民税の天引きが継続されます。