企業のエンジニア採用担当者に対し、自社におけるDXの取り組み状況を尋ねたところ、「すでに取り組みを開始しており、具体的な施策を実行している」と答えた企業は46.0%と、半数を割り込んでいることが分かった。

「取り組みを開始しているが、検討や実証実験段階である」とする企業は22.1%、取り組みの「計画段階」にある企業は11.7%、取り組みの「計画なし」とした企業も20.2%を占めたという。

「業務効率化/省人化」を目指す企業は多いが

この調査は、AKKODiSコンサルティングが、従業員300名以上のエンジニア採用担当者1060人を対象に実施したものだ。

「計画なし」を除く回答者にDXの目的を尋ねたところ、「業務効率化/省人化」が最も多く、実行段階にある企業では86.0%がこれを目的とした取り組みを行っている。

次いで「コスト削減」が53.6%、「売上拡大」が30.3%、「基幹系システムの刷新、再構築」が28.3%、「顧客接点強化(CS/CX)」が21.7%と続いている。

この結果に、メーカーでDX推進を担当しているAさんは「やっぱりほとんどの日本企業では、本格的なDXなんて無理なのかもしれませんね」と肩を落とす。

調査結果によると、DXを推進している企業のほとんどが「業務効率化」どまりだ。しかしAさんによると、この程度では「本来のDXとは呼べない初歩段階」だという。

「DXとは、デジタル技術を活用した『企業変革』を指す言葉です。イノベーションによって業績を飛躍的に向上させたり、将来にわたって企業が生き残るための『事業ポートフォリオの変革』を伴ったりするものです。しかし、調査結果を見る限り『業務改善』に毛が生えたものしか手掛けていない」

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「単なるデジタル化」にはとどまらないDX

経産省が2020年2月に発表した「DXレポート2」によると、デジタル化には3つの種類がある。1つ目が「アナログ・物理データの単純なデジタル化」としての「デジタイゼーション」、2つ目が「個別の業務・製造プロセスのデジタル化」としての「デジタライゼーション」だ。

経産省が推進したいのは、3つ目の「DX(デジタルトランスフォーメーション)」だ。個別業務にとどまらない「組織横断/全体の業務・製造プロセスのデジタル化」を目指すところが、デジタライゼーションと違うところ。

また、「『顧客起点の価値創出』のための事業やビジネスモデルの変革」もDXの狙いのひとつで、単に内向きの業務改善ではなく、デジタルによって新規事業やサービスを生み出し、売上向上を目指す取り組みとなっている。

もちろん、デジタイゼーションやデジタライゼーションも、DXを進めるうえで必要なステップ。しかしAさんによれば「たぶん多くの企業では、デジタイゼーションの先に進むことは難しい」という。

「その理由は、トップがDXに真摯にコミットメントしないからです。組織上は社長をトップに置いたDXの会議体が置かれていたとしても、実際に推進するのは『DX推進室』などのスタッフ職任せ。これでは『改革』はできません」

Aさんは「極端な例」として「工場の自動化、無人化」を挙げる。本来であればトップが宣言し、その息のかかった取締役や執行役員が生産部門のトップとなってDXの取り組みを先導し、その推進をDX担当スタッフが支える形になるべきだ。

しかしAさんの会社では、社長は「DXをやるぞ」と宣言したものの、あとはスタッフに仕事をやらせ、会議でも報告待ちに徹している。仕方がないので、Aさんは生産現場に赴いて「DXを推進しますので、現状の業務プロセスややり方を調査させてください」と頼みに行くが、担当者は非協力的だ。