「外国人への生活保護支給反対」選挙ポスターが北区各所で破損される “公職選挙法”違反の罰則は?

過去最多となる56人が立候補した都知事選。7月7日(日)の投開票日に向けて、各候補者たちが街頭演説や討論会を行うなど、選挙戦は白熱している。

その最中、北区では“異変”が起きている。各所周辺の掲示板で、特定の候補のポスターが破かれているのだ。

赤羽、十条、志茂…北区の各地でポスターが破損

6月24日、Xに「北区の西が丘から十条・東十条周辺で、18番に掲示されたポスターが破かれている」と投稿された。

6月末、本稿記者が北区最大の繁華街である赤羽に赴き、駅周辺を確認したところ、南口付近や赤羽小学校、赤羽公園などの各所に設置された掲示板のいずれでも、たしかに「18番」に貼られていたポスターが破損されていた。


赤羽小学校付近 (以下、いずれも6月29日撮影/弁護士JP編集部)


赤羽駅南口付近


赤羽公園付近

また、赤羽駅から東に徒歩で15分、閑静な住宅地である東京メトロ志茂駅周辺でも、なでしこ小学校やゆりの木公園、わかば児童遊園やレジャー施設「元気ぷらざ」などの付近に設置された掲示板で、やはり「18番」のポスターが破かれていた。


ゆりの木公園付近


なでしこ小学校付近

“ほぼ全裸”ポスターでも物議をかもした河合悠祐候補

破かれたポスターは、いずれも「ジョーカー議員」として有名な河合悠祐候補のもの。

アメリカンコミック「バットマン」の悪役「ジョーカー」に仮装した河合候補が外国の地下鉄と思わしき乗り物に乗車している写真と、「外国人への生活保護支給反対! うちの家に、よその子まで食わせる余裕なんかない。」との公約が記載されている。

今回の都知事選では、河合候補は複数種類の選挙ポスターを用意。地区ごとに内容を変え、「男女のデートの割り勘化推進」「一夫多妻制を導入します」「動物殺処分ゼロ! 保健所に来た犬・猫ちゃんは永田町の敷地内に放し飼いにします」などと記載したポスターを各所に掲示している。

「表現の自由への規制はやめろ」と記載したほぼ全裸女性の写真を掲載したポスターの掲示は大きな物議をかもした。現在は、警視庁から「迷惑防止条例違反にあたる」との警告を受けたことから、河合候補は“ほぼ全裸”ポスターを撤去している。

「選挙ポスター破り」の罰則は?

選挙ポスターを破損する行為は「公職選挙法」225条2号に違反する。

法定刑は4年以下の懲役もしくは禁錮、または100万円以下の罰金だ。

記者が確認できた範囲では、破られていたのは「外国人への生活保護支給反対」ポスターのみである。

Xでは「何者かが組織的にやってると思われるのできちんと検挙するべき」との声もあった。しかし、現時点で、詳細は不明だ。

候補者たちの「過激化」や「私物化」に、有権者が取るべき態度

“ほぼ全裸”ポスターを筆頭に、河合候補が作成したポスターは過激で挑発的な内容のものが多い。

また、「NHKから国民を守る党」が寄付者に掲示枠を提供した結果、無関係の人物や動物などのポスターが掲示される事態も起こった。女性専用風俗店のポスターも掲示されていたが、警視庁が「風営法に抵触する」と立花孝志党首に警告を行い、別のポスターに貼り直された。

選挙ポスターの内容の「過激化」や、候補者による掲示板の「私物化」の問題を受けて、個々の有権者はどう考えればいいのだろうか。

選挙制度に詳しい杉山大介弁護士によると「民主主義では制度的に『愚行権』が許容され、問題ある人物との共存が求められる」という。

また、今回の都知事選では、そもそも制度として想定されていない選挙ポスターの利用法などが見られる。

「しかし、選挙ポスターに関する問題を“良くないものだ”と皆が思っているのであれば、社会は健全な状態だといえます。

現在起こっている問題にも、制度の設計を修正し続けることで対応できるでしょう」(杉山弁護士)

選挙では、立候補者たちと共に、民主主義の社会に生きる有権者たちの資質も試されている。