結婚するカップルが減少し、結婚しても式を挙げない「ナシ婚」の若い世代が増えるなか、なぜか結婚式場の売り上げが絶好調だという。

東京商工リサーチが2024年6月26日に発表した「全国112社『結婚式場業』業績調査」によると、大手結婚式場を中心に業績が急回復し、増収企業が7割に達し、純利益はコロナ前を上回る勢いだ。

いったい、最近の結婚事情はどうなっているのか。自ら新婚まもない調査担当者に聞いた。

業績が急回復、利益はコロナ前を上回る勢い

厚生労働省の「令和5年(2023)人口動態計月報年計(概数)」によると、2023年の婚姻件数は47万4717組(前年比6.0%減)だった。2022年はコロナ禍の婚礼自粛などの反動で3年ぶりに増加に転じたが、長期的には少子化の影響を受け、結婚するカップルが減少し続けている。

そんななか、東京商工リサーチの調査(2023年1月期~12月期決算)は、5期連続で売上高が判明した全国の結婚式場運営業112社が対象だ。

112社の2023年の売上高合計は3477億600万円(前期比13.2%増)で、2年連続の増収だった。コロナ禍前の2019年(4007億6900万円)の9割弱(86.7%)まで迫っている。

2023年の当期純利益は149億3200万円で、2019年を上回り、コロナ前を超えたほどだ。コロナ禍の2021年を底に、大手の婚礼取扱件数が増加したことが大きい【図表1】。

売上高の増減をみると、2023年の増収は72社(構成比64.2%)に対し、減収は16社(同14.2%)、横ばいが24社(同21.4%)だった。2022年の増収は66社(同58.9%)だから、2023年は5.3ポイントアップで増収トレンドになっている【図表2】。

最終損益別でも2023年がいかに好調だったかがわかる。

2023年まで5期の利益が判明した41社でみると、黒字は28社(構成比68.2%)、赤字は13社(同31.7%)で、利益では黒字企業数が2019年とほぼ同じ水準になり、コロナ前に戻したかたちだ【図表3】。

東京商工リサーチでは、こう分析している。

「結婚式場は固定客やリピーター客が見込めない業態で、新規客獲得への戦略が重要になる。少子化や晩婚化、コロナ禍を契機にした地味婚などでマーケットが縮小し、多様なプランやプロモーション戦略の工夫で各社とも生き残りをかけた競争が続いている。
一方で、結婚支援マッチング事業に着手する自治体の出現など、新たな取り組みも活性化している。縮小する市場で、ビジネスチャンスをどう取り込み業容拡大に繋げるか。各社の経営戦略が試されている」

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豪華な海外挙式、家族内輪の挙式と二分化の傾向

それにしても、結婚するカップルの減少という致命的な市場規模の縮小のなか、結婚式場はどうやって利益を回復したのか。J‐CASTニュースBiz編集部は、調査をもとめた東京商工リサーチ情報本部情報部の櫻井浩樹さんに話を聞いた。

――そもそも、少子化で結婚人口も減り続けているうえ、式を挙げないカップルが増えています。そんなマーケットが縮小している状態で、しかもリピーターがいない業界で業績が急回復していることが非常に不思議です。その理由は、ズバリ何でしょうか?

櫻井浩樹さん 2023年は新型コロナが5類に移行し、延期や自粛していた結婚式などのイベントを開催しやすい環境になったこと。また、結婚式場の売上高を牽引する企業の多くが飲食店、ホテルなどの事業多角化を展開しています。

インバウンド消費などの需要を取り込めたことが業績回復に寄与したと考えます。

――そこを詳しく聞きますが、疑問点が3つあります。A:対象の結婚人口は減っているが、結婚式の数そのものは増えているのか。B:1回あたりの結婚式で上げる収益が増えているのか。C:式そのものではなく、結婚関連のほかの事業で稼いでいるのか。

この3点について、いかがでしょうか。

櫻井浩樹さん まず、Aですが、経済産業省の資料(特定サービス産業動態統計調査)では、婚礼の取扱件数は2023年度が7万139件で、コロナ過の2020年度の3万2755件の2倍以上に増えています。これは先送りされていた婚礼がコロナの落ち着きによって、一気に挙式されたと考えます。

次にBですが、平均初婚年齢の上昇により、結婚式にかける費用が増加傾向にあります。ただし、海外で2人だけで挙式したり、家族内輪だけの挙式になったりと、二分化しています。

最後にCですが、1回あたりの結婚式での収益増と、結婚関連のほかの事業で稼いでいることが今回の調査結果に表れたと考えています。