接ぎ木で生み出された新感覚野菜苗トモッフェル(TOMOFFEL)
このように、2種の異なる植物を組み合わせるのは、決して新しい考えではありませんが、近年では野菜苗でも接ぎ木が多く普及し、カボチャを台木にしたキュウリ、ナス、スイカなどを一例に、たくさんの種類の接ぎ木苗があります。
さて、最近、ドイツの市場にはトモッフェル(TOMOFFEL)という新しい植物が登場しています。TOMOFFELという名前は、ドイツ語のトマト(Tomate)とジャガイモ(Kartoffel)を組み合わせた造語。このトモッフェル、なんと地上部ではトマトが、地下ではジャガイモが実るのです! 別名はTOM TATOで、こちらですでに商標登録もされています。
トモッフェルは新種ではなく、既存の植物を接ぎ木により組み合わせたもの。トマトの芽をジャガイモの枝に接ぎ木すれば、このようなことが可能です。生育としては、初めにトマトが育ち、実が実ります。それからしばらくするとジャガイモが育ち、収穫できるようになります。トモッフェル専用の鉢もあり、収穫が簡単にできてトマトを傷めないので、栽培してみたい人におすすめ。苗と鉢のセットを購入すれば、簡単に栽培をスタートできますよ。
いままでは別々の場所に植えるものであったトマトとジャガイモ。トモッフェルならば省スペースで2種類を栽培でき、バルコニーガーデンにも面白いアイデアです。もっとも、現時点では「面白いアイデア」という面が強く、さほど多くの収穫は期待できません。
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ドイツで人気のトマトたち
Gartenbildagentur Friedrich Strauss / Strauss, Friedrich
トマトはドイツでもとても人気が高く、趣味のガーデナーなど多くの人が栽培しています。サイズ、形、色、性質など、そのバリエーションの豊かさは膨大。一度トマトの品種バリエーションをいくつか集め始めると、つい蒐集してしまう中毒性があります。自分で育てれば、プチっと摘み取ってそのまま口に放り込むという喜びもひとしお。強健で育てやすく、増やすのも簡単ですよ。栽培中はあまり濡れないほうがよいので、雨風から守られる、屋根がある壁の前などでよく育ちます。
そんなドイツ中のトマト愛好家が頼りにしているのが、ドイツ南部、森と平野のはざまにある小さな農場。ここではおよそ1,200種の栽培用トマト品種、500種のチリやパプリカ品種を保有しています。一人の人物が、どうやってそれほどたくさんの種類を集めることができたのでしょうか?
ここのオーナーの方は東欧にルーツを持ち、子どもの頃から既にさまざまな品種を集めていました。当時、彼女は両親の農場を手伝い、長い冬に備えてたくさんの野菜の保存をしていたそう。ドイツに移住してからは、母国での経験や学んだことを生かし、また伝統品種も故郷から多数入手して販売しています。
美味しいトマトを味わうだけでなく、そのトマトが自宅の菜園にやってくるまでのちょっとしたエピソードや有名人にちなんで名づけられたストーリーなどを知ることができれば、より愛着が湧きますね。
日本でよく見かけるトマトとは一味違うトマトの仲間をいくつかご紹介しましょう。
ビーフステーキトマト
Gartenbildagentur Friedrich Strauss / Strauss, Friedrich
日本ではまだマイナーですが、ドイツなどではビーフステーキトマトと呼ばれる大きくて肉厚なトマトがよく栽培されています。例えば、Ochsenherzというトマトはドイツでとても普及している品種です。これらの種類は、大きくなって赤く色づくまでに時間がかかるのが難点で、私は栽培したことがありませんでした。収穫を待ちきれませんし、こうした品種は特に変わった味がしないので、ちょっとつまらないと思っていたからです。そのため、購入するのはもっぱら大玉トマトでした。
ところが先日、イギリスで有名なビーフステーキトマトMarmandeを食べる機会があり、この認識を覆されました。このトマトは肉のような食感と強い風味を持ち、サンドイッチに挟んだり、調理用にぴったり。そして、なにより驚かされたのが、これらのビーフステーキトマトは、しっかり熟すととても美味しいということ。1個のトマトで2人が十分食べられるので、コストパフォーマンスから見ても効率的です。