引っ越しの際は、ついつい新しい住まいにかかる費用だけを考えてしまいがちです。
しかし、賃貸物件から引っ越す前には「退去費用」が発生します。
退去費用が発生することも念頭に置いておかないと、引っ越し費用が足りなくなってしまう可能性があります。
引っ越しをする時は初期費用に加え、退去費用がどれくらいかかってくるのかを把握しておくことも大切です。
今回は、賃貸物件を退去する時に発生する費用相場、退去費用についての注意点などをご紹介します。
引っ越しを検討している方はもちろん、今後退去する時の参考にしたい方は、ぜひ最後までご覧ください。

賃貸物件の退去費用とは?

そもそも賃貸物件の退去費用は、何のために支払わなければならないのでしょうか?
賃貸物件を借りると、入居者に「原状回復義務」が課せられます。
退去費用は、その原状回復をする時に欠かせない「設備の修繕費用」や「ハウスクリーニング費用」に充てられるものです。
まずは原状回復に加え、設備の修繕・ハウスクリーニングはどういったものなのかをご紹介します。

原状回復義務って何?

退去費用は原状回復と深い関係があることから、退去費用について理解を深めたい場合は原状回復についてもしっかりと把握しておくのがおすすめです。
原状回復とは借りていた部屋を退去する際、入居時の状態に戻すことを言います。
原状回復義務では通常損耗や経年劣化など、入居者が負担する必要のない傷・汚れが定められています。
例えば「冷蔵庫やテレビの背面に黒ずみ(電気ヤケ)ができてしまった場合」などは、通常損耗として判断されるため、修繕費を求められることはありません。
しかし、故意や過失による損傷を修繕する場合は、入居者が負担することになります。
故意や過失と判断されるのは、「設備を間違った使用方法で使い、壊してしまった時」や「結露を放置し、カビやシミが大きくなった時」などです。
つまり、故意や過失と判断されてしまうような損傷、汚れなどに気を付けて生活することで、入居者が負担する金額を抑えられます。

設備の修繕費

設備とは、エアコンや給湯器、ガスコンロ、壁、床、ドアなど、ありとあらゆるものを指します。
賃貸物件に備わっている設備のほとんどが生活に欠かせないものであるため、使用頻度が高く、普通に使っていても劣化していきます。
しかし、先ほどもご紹介したとおり、正しい使用方法で使っていれば修繕が必要になった場合でも、修繕費は大家さんが負担することになるでしょう。

ハウスクリーニング費用

賃貸物件では退去時に、部屋全体の清掃を専門会社に依頼します。
キッチンやトイレ、浴槽などの水回りはもちろん、床やエアコン、ベランダなどの清掃を行います。
清掃だけでなく、傷がついてしまったり汚れてしまったりした壁、床の張り替えなどが必要な場合も、ハウスクリーニング費用として請求されます。
ハウスクリーニングについて知ると、傷や汚れがなければハウスクリーニングは不要なのではないかと考える方がいるかもしれません。
しかし、どれだけ部屋や設備を綺麗に使っていたとしても、設置していた家具や家電などをすべて運び出しただけの状態では、次の入居希望者も入居を躊躇ってしまうでしょう。
次の入居者が気持ち良く住み始めるためにも、自分が使ってきた設備や部屋を綺麗にしなければならないのです。

原状回復は自分でしてもいい?

少しでも退去費用を抑えたいと、自ら原状回復を行おうと考える方もいるのではないでしょうか。
専門業者に依頼せずとも、簡単な修繕であれば対応できることがあるかもしれません。
しかし、自ら原状回復を行うと、それがトラブルの元となってしまうケースがあるのです。
例えば、契約書に「原状回復は必ず業者に依頼する」といった旨が記載されている場合です。
契約書に書かれていることを守れなかった場合、契約違反とみなされてしまいます。
最悪の場合、損害賠償請求されてしまう可能性もあるでしょう。
他にも、原状回復に失敗して状況が悪化したことにより、退去費用が膨れ上がってしまうケースもあります。
自力での原状回復はリスクが大きく、かえって負担が増えてしまうことも少なくありません。
もちろん、掃除などの簡単な作業を行うことは問題ありません。
しかし、退去費用を最小限にしようと、無理に原状回復を行うことは避けた方が良いでしょう。

(広告の後にも続きます)

敷金と退去費用の関係

退去費用は、入居時に支払った敷金から差し引かれるのが一般的です。
つまり、退去費用のほとんどは既に支払い済みなのです。
しかし、設備や部屋の状態が悪く、原状回復にかかる費用が大きくなってしまった場合は、退去費用が敷金を上回る場合があります。
もちろん、敷金の範囲内で原状回復ができれば、余ったお金が返還されます。
ここで注意したいのが、入居時に敷金を請求されなかった場合です。
賃貸物件の中には、敷金なしで入居者を募集しているものもあり、そういった物件は初期費用が抑えられると人気です。
ただし、入居時に原状回復に充てられる費用を支払っていないため、退去時には修繕費やクリーニング費用を請求される可能性があります。
敷金なしの物件であっても、初期費用にクリーニング代が組み込まれているケースもあるため、余裕を持って退去できるよう、契約書や見積書をしっかりチェックしておきましょう。

敷金が全額返ってくることはある?

入居時に敷金を支払っている場合、退去費用がかからないケースは少なくありません。
では、敷金が全額返還されることはあるのでしょうか?
敷金の返還額は、「支払った敷金」から「原状回復にかかる費用」を差し引いた金額です。
退去費用がかからなければ全額返還されますが、先ほどもご紹介したように、どれだけコツコツと掃除・整備をしていても、ハウスクリーニング代は請求されることがほとんどです。
そのため、敷金が全額返ってくるケースはほとんどないと考えられるでしょう。
敷金の注意点としては、家賃を滞納した時に敷金から差し引かれてしまう可能性がある点が挙げられます。
滞納して家賃が引かれている場合、退去費用として使える敷金の額が少なくなってしまいます。
そうなると敷金が返還されるどころか、追加で退去費用を支払わなければならない状況になってしまうため、日頃からしっかりとお金を管理しておくことが大切です。