植物育成LEDライトの選び方

対象とする植物で種類を選ぶのがベスト

多肉植物

サボテンやユーフォルビア、パキポディウムなど、ドライで温暖な環境を好む多肉植物たちにとって、ジメジメした梅雨や冬の寒さは大敵。
屋内に取り込めばこれらを凌げますが、その間は植物にとって日照不足にならないの? 

その問題を解決してくれるのが育成ライト。

7号鉢(直径21cm)くらいまでの植物ならバルブ型1灯でOKですが、複数鉢ある場合はもう2〜3灯増やすか、あるいは広範囲を照射するパネル型を吊って一気に照射するのもよいです。

観葉植物


オリーブは本来は屋外管理の植物だが、育成ライトを使用すれば屋内でも観葉植物としてバランスよく育てることができる。  
Pix: barrel.plantlight/Instagram

常に屋内で管理する観葉植物は、部屋の向きによっては満足な日照を得られないことも。
お日様が好きだけど、過度な太陽光が苦手な観葉植物と育成ライトの相性は抜群です。

小さいガジュマルなどには小出力のスタンド型で可愛くディスプレイすることもできますが、高さが1mを超えるようなゴムの木などには、天井にダクトレールを設置し、スポットライトタイプで出力が高めの育成ライトで照射したりすることで、見栄えもショールームっぽくなりますし、何よりもバランスのよい樹形に育ってくれます。

ただし、植物との照射距離や角度によっては、育成ライトの照射が強すぎて葉焼けを起こす場合もあるため、取扱説明書に記載されている「推奨照射距離」などを必ずチェックしてからお使いください。

水生植物


写真の商品は写真の商品はマリンアクアリウムインスタグラマーの氏が監修したBARREL社製。

テラリウムなどで楽しむ水生植物。水槽内の水草の成長にも育成ライトが活躍してくれます。

水草など、水中の植物を綺麗に魅せるためには、各社、色味などの面で工夫をしているようですが、水中は赤などの暖色光よりも、青などの寒色光のほうが光が届きやすく、また水中の色も綺麗に見えるため、フルスペクトルで青が強めのタイプの育成ライトがおすすめ。

パネル型やバルブ型などさまざまなタイプの商品が販売されており、20〜45cmの水槽で1灯が目安となりますが、小型の水槽には小型のバルブ型をおすすめします。

なぜなら、テラリウムは光が強すぎると苔や水草も葉が焼けやすいので、小型のもので調光できるタイプや、リフレクター(反射板)を取り替えることで光を弱くするなど、小型のテラリウムには光量の調整ができるタイプのものを選びましょう。

家庭菜園


Pix:OMfotovideocontent/shutterstock.com

家庭菜園で育成ライトを用いる場合は、光合成の効率を重視したスペクトルの育成ライトがおすすめ。
具体的には、赤色660nm付近の波長が主体になったライトが最適です。いわゆる、点灯するとピンク色になる育成ライトですね。


Pix:Zapp2Photo/shutterstock.com

市場に出ているカイワレや豆苗、葉物野菜など、工場で大量生産する野菜の多くは、葉や茎の成長速度を高める赤色波長と青色波長をミックスしたピンク色の育成ライトを照射し、高率重視で生産しているケースが多いんですよ。

これにならい、家庭菜園にもピンク色の育成ライトを用いることで高い収穫率が期待できます。

果樹花木

収穫が楽しみな果樹や花木。屋外管理の植物も育成ライトを用いることで、収穫量や開花率のアップが期待できます。
特に、日照条件の悪い場所に植えてある果樹花木には相性がよいです。

ただし、屋外で使用するには、防水仕様の屋外用植物育成LEDランプであることが必須となります。

目安としては、前述の家庭菜園でも用いる600〜660nm付近のスペクトルが開花や結実に大きく影響する波長域となるため、購入する際はこの部分の波長域が強い育成ライトを選ぶとよいでしょう。


BARRELが販売している完全防水仕様の育成ライト(写真上)。
ただし、ソケット部分は防水ではないため、防水用の受け具を使用するかソケットが濡れない環境での使用が前提となる。

照明の色はさまざまだがインドアグリーンにはフルスペクトルがおすすめ

市販の育成ライトの光源は、大きく分けて、太陽光色(白色系)、電球色(暖色)、ピンク(青色単色球と赤色単色球のMIX)の3色があります。

この色の違いは、前述のようにスペクトルによって表され、太陽の光の色に近ければ近いほど太陽光のように白くなっていきます。


Pix:JOHN CHEESEBURGER FOTOG.

白といっても、単純に白い色ではない

確かに太陽の光は白く見えますが、白といっても単純に白い色というわけではなく、可視光線や紫外線、赤外線など、太陽から地球に届くさまざまな光や電波の波長がミックスされて、あのように白く見えるのです。

その中でも私たち人間が目で見て唯一、色として判別できるのが「可視光線」。
可視光線が網膜を刺激することにより、脳が波長ごとに色を判別しています。

この可視光域の色すべてが大なり小なり含まれた波長のことをフルスペクトルといい、鑑賞目的の園芸、即ちインドアグリーンではこのフルスペクトル仕様の育成ライトがおすすめです。

ではなぜフルスペクトルが最適なのか?

次項では、フルスペクトル育成ライトを業界で初めて作ったBARREL社に、フルスペクトルに関しての解説と、フルスペクトル植物育成ランプを選ぶうえでのコツや注意点を伺いました。

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BARRELに聞く、フルスペクトルってそんなにいいの? じゃあ、どうやって選ぶの?


解説:株式会社BARREL代表取締役 大門慎也氏

なぜフルスペクトルがよいのか?

フルスペクトルとは、400~750nmの可視光領域(光を目が認識できる領域)のすべての波長を含んだ光を指します。

記事前半でも解説されているように、植物は赤と青の光があれば基本的な光合成は行うことができます。
この2色は、葉や茎を作り上げるのに必須な光だからです。

そのため、以前は赤色の単色LEDと青色LEDを組み合わせて同時に発光してピンク色光になるLEDライトが育成ライトの定番でした。


イメージ(実際にBARREL社が販売していた商品ではありません)

しかし、赤と青の二色では、光合成の「量」はまかなえても、「質」までカバーすることはできません。

人間に例えれば、酸素と水さえあれば生きていくことはできますが、健康に生きていくためには、各種ビタミン群やカルシウム、鉄分など、さまざまな栄養素を取り込まなければなりません。

植物にとっての光も同様で、赤と青以外にも、黄色や緑、オレンジなど、さまざまな波長の光(=可視光線)があり、それらの光が混ざり合った光線を浴びることで、植物はより「質の高い」光合成を行うことができ、健康に育つことができます。

こういった多様な波長の光の集合体こそが「太陽光」であり、それを物理的に解析したものがフルスペクトルです。
そして、そのフルスペクトルをLED技術に応用したものが、フルスペクトル植物育成LEDライトです。

言ってみれば、フルスペクトルとは、光の世界のマルチビタミンのようなものですね。
そしてフルスペクトルLEDは、育成ライトを購入するうえでの一つの目安だといえます。

フルスペクトル光源が植物に与える影響

フルスペクトル育成ライトは、太陽光の成分を入念に研究して作り出された光です。
さすがにリアル太陽から放射される生の太陽光にはエネルギーの「量」の面では敵いませんが、「質」の面では、植物の成長にとって必要な光の要素がちゃんと盛り込まれているため、使用することで太陽光下と遜色ない成長の効果を得ることができます。

植物が受ける影響はフルスペクトルの調整により異なる

フルスペクトル光源には商品ごとに調整が施されており、それぞれに特性があります。

例えば弊社製品を例に取ると、青の波長が高めのAMATERASなどは、エネルギーの高い青色波長が植物の葉にストレスを与えるため、植物はそれに対し防御反応を取るために、必然的に葉が厚くなったり、硬くなったりします。

面白いもので、植物にとっては迷惑なものが、観賞する人間にとっては結果的に葉が引き締まった樹形になるなど、都合よく作用するのです。

観賞面だけでなく食用面でも、レタスなどの葉物野菜に人工光源を用いて作る際に、この作用が応用されています。
また、イチゴなど一部の果物もこの作用で糖度をコントロールしたりしています。


例:AMATERASのスペクトル。可視光域を含んだ光の中でも青の波長が強いことが分かる。

また、TSUKUYOMIのように、赤色の波長が高めに調整してある場合は、光合成が促進され、株全体の成長に大きく作用します。

これは、植物の中にある葉緑素(クロロフィル)が赤色の光を効率よく吸収するため、成長に欠かせないエネルギーへの変換効率が高まるからです。


光源の色の影響を受けないマニュアルホワイトバランス設定のもとで撮影。
光のエネルギーが柔らかなTSUKUYOMI(左)は光源が赤みを帯びているが、植物の見え方はAMATERAS(右)よりもナチュラルだ。

このため、AMATERASは樹形を自分好みに作り込みたい園芸上級者に適しており、TSUKUYOMIは植物をバランス良く育てたい初心者を含めたすべての方に適しています。

このように、フルスペクトルでもその中の色の波長の強弱により、植物が受ける影響が微妙に異なるため、色の強弱や質にも注視し、用途に合ったライトを選ぶとよいでしょう。


BARRELの主力商品、NEO TSUKUYOMI(左)と同社の名を世に知らしめたモニュメンタルな名作AMATERAS(右)。
写真の2つは筆者所有のもので、現在のAMATERASはNEO TSUKUYOMI(20W)のデザインと同じく放熱フィンが樹脂部まで伸びている。

何よりも、植物が最も美しく見える

BARREL社屋では、商品開発と研究のため設置された無数のフルスペクトル育成ライトが、煌びやかに植物たちを照らして出しています。
そのどれもがとても美しく、屋外の自然光下で見るのと変わらない色彩で植物たちが視界に飛び込んでくるのが分かると思います。

綺麗に魅せるには「演色」にも注目

育成ライトに限らず、ほとんどのLED照明器具にはパッケージに「演色性(Ra)」という値が記されています。

これは、その照明機器が、自然光が当たったときの色をどれだけ再現しているのかについて、JIS規格に定めた数値で表しているのですが、最大値が100(=自然光と同等)なので、AMATERASのRa96と、TSUKUYOMI、YEW(スタンドライト)のRa97は、ほぼ自然光下と同等に植物たちを照らすことができます

因みに、一般的な蛍光灯はRa50〜60です。

高価なものがよいのか、安価なものは良くないのか?

弊社がAMATERASを作ったときは、園芸の世界では「植物育成ライト」という言葉自体がまだなくて、Amazonで販売を始めたときも、どのカテゴリーに商品を置いたらよいのかがわからず、「ペット」など、かけ離れたところに登録をして販売していました(笑)

その後、育成ライトも一つのジャンルとして定着し、現在は各社とも活況を呈しており、値段の面でもチョイスの幅が広がったのは消費者には大変好ましいことだと思います。

ではその中で、値段による優劣はあるのか?

これは、あると思います。

弊社でも後続他社製品を調査分析したりしますが、主力商品のAMATERASやTSUKUYOMIに関していえば、光源の開発に対しては植物と光の専門家(氏)が監修していて、お互い納得がいくものができるまで一切妥協はしなかったため、植物のナチュラルな見え方に関しては先駆者であると自負しています。

また、熱を持ちやすい電源部に関しても一切の妥協をせず開発に時間を費やしているため、AMATERAS/TSUKUYOMIは後続他社製品に比べて圧倒的に熱効率がよいと思います。

安価な製品というのは、この電源の部分で性能が不安定なものが多いようですね。


入念な設計が求められる電源部分。

LEDは一般的に高寿命を謳っていますが、電源部の動作が安定していないとその寿命も短縮されます。
また、LEDは今までのフィラメントを用いた電球とは異なり発光部のみの交換ができないため、LEDが発光しなくなった場合は即ち製品自体の交換が必要となります。

家電製品は熱を持てば持つほどネルギー効率が悪くなるため、それは必然的に電気料金にも跳ね返ってきます。
もちろんAMATERASも長時間点灯すれば筐体が発熱しますが、12時間点灯し続けても、触っていられないほど熱くなることはありません。

基本的に育成ライトは8〜12時間の連続点灯を推奨していますので、電源部の安定性は育成ライトの性能を見る上で、重要なポイントと考えていただければと思います。

BARRELはすべての製品に対し、これら信頼性の担保を家電製品としては異例の3年保証(完全無償修理)で行っているので、使用時間で考えれば価格以上のパフォーマンスがあると考えています。

植物育成ランプは、照射する、ということだけで考えれば、値段の高い安いに関わらず一定の効果は期待できるものです。

しかし、「高品質な光をどれだけの長い期間照射し続けることができるか」「その期間をどう担保してくれるか」というところの指針として、価格は目安になると思います。そうした点も考慮しつつ製品情報やカスタマーレビューなどを読むと、自分にとってマッチする商品がどれかが見えてくると思います。

パワーで選ぶのは避けよう

育成ライトを選ぶ際、単純にハイパワー=よいとは考えないでください。

植物はそれぞれ光を取り込む量が決まっており、過剰な光は植物にダメージを与えます。
これを光阻害といい、光阻害が起こると植物は成長が鈍化し、最悪の場合は枯れてしまいます。

光阻害を防ぐ意味でも、育てる植物の自生地での環境などを事前にネットなどで調べ、植物の光の耐性を考慮し、それに合わせたライトのパワーを選びましょう。

一般的には、真夏の直射日光でも育つ植物には照射パワーが高めのライト、直射日光に弱い観葉植物などには照射パワーが中程度の育成ライトが向いています。

照射パワーが高めのライトは、植物の吸水と蒸散のサイクルも早めるため、水やりの頻度にも注意が必要です。

照射パワーの調整は、付属のリフレクターで可能

ライトの照射パワーは、リフレクター(反射板)を取り外して光を拡散させたり、ライトを植物から離して使用するなど、照射距離でも調整できます。


銀色に輝く部分がリフレクター。黄色い丸い部分がLED発光部。

ちなみにリフレクターを付けたり外したりするのは至って簡単。

下の画像は、リフレクターを付けた状態と外した状態を表したものですが、付けたものは中心部に照射パワーが集約されている様子が分かり、外した状態は照射が拡散され、広範囲に柔らかな照射が行われていることが分かります。

初心者の方は、AMATERASのような照射パワーが高めのライトをこのように調整しながら使うより、まずはTSUKUYOMIなどの照射パワーをバランスよく中程度で抑えたライトで慣れたほうが安全です。

慣れればハイパワーライトで樹形を作り込むことも

植物の中でも、サボテンや塊根植物、盆栽などは、ある程度の外的ストレスを与えることで、樹形が引き締まり、葉の密度がより高くなるなど、荒ぶった感じになります。


BARREL社の商品テストルームでも盆栽を用いた検証が行われていた。

育成ライトに慣れた方の中にはこの性質を活かし、パワーが高めな育成ライトを用いて照射距離や水やりのタイミングを細かく調整するなど、経験と技術を駆使して好みの樹形を作り上げる方もいます。

育成ライトは、出力ごとのクセやコツさえ掴むことができれば、さらに高度な園芸の楽しみ方もできます。

発芽したてや幼苗など、小さい株には低出力のほうがベスト。成株に至る前の小さい株はストレスに弱いので、光阻害を予防するためにも出力弱めのタイプで優しく育てましょう。

LEDライトは省エネ

LEDライトはエネルギー効率がよく、電気代も比較的安いです。
例えば、光のエネルギーが高めのAMATERAS(20W)を例に取ると、1日12時間使用しても、月に約263円、年間で約3,156円です。

育成ライトは少ない電力で効率的に光を供給できるので、とても省エネなんです。