「ディオール」ウィメンズ コレクションのクリエイティブ ディレクターであるマリア・グラツィア・キウリは今回、パリ2024オリンピック競技大会およびパリ2024パラリンピック競技大会の開催にあたり、古代から現代に至るまで、スポーツにおける公平な競技の場を確保するために、偏見や障害を乗り越えてきたすべてのアスリートたちへオマージュを捧げるオートクチュールコレクションを発表した。
女性のエンパワーメントがキーワードに
GROUPSHOT © LAURA SCIACOVELLI © Faith Ringgold @acagalleries © Chanakya School of Craft
ショー会場となったパリのロダン美術館を彩ったのは、チャーナキヤの職人たちによって再現された、フェイス・リングゴールド (1930年〜2024年)の代表的なモザイク作品。女性アスリートたちが描かれたカラフルな背景が、ランウェイに登場したモノクロームのシルエットと見事な調和を演出した。
アーティストであり、フェミニスト、活動家、教育者でもあったフェイスは70年近くにわたり、アフリカ系アメリカ人のアイデンティティやジェンダー不平等に対する認識に挑戦し、疑問を投げかけてきた人物。政治的メッセージを込めたポスター作品『Freedom Woman Now』と『Woman Free Yourself』、物語性のあるテキスタイル作品『Windows of the Wedding #1: Woman』が飾られるだけでなく、来たるパリ2024オリンピック・パラリンピック競技大会へのオマージュとして、ロサンゼルスを走るメトロのシビックセンター駅から依頼を受けて彼女が制作したガラスモザイク作品『People Portraits』も再現された。
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「女性の身体の自由」を表現するディテール
©DIOR
コレクションは、苦労の末に手に入れた女性の身体に対する「政治的自由」を背景に誕生。これまでクチュールの世界にはなかった素材であるジャージーをゴールド、シルバー、ホワイトのメタルメッシュとして採用しているほか、超軽量のインナービスチェや、スポーツジャージも金ぱくやマイクロスパンコールで飾られるなど、スポーティな要素をモダンに取り入れた。
今回、多く見られたのはプリーツとドレープのアイテム。オリンピック発祥の地である古代ギリシャ、そしてローマに伝わる深い知恵からドレープのアイディアを導き出し、手作業で繊細な「パッサマンテリー」と呼ばれる伝統的な装飾技法を施している。
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ルックに合わせたグラディエーターサンダルが、古代ギリシャ神話に登場する伝説の女戦士部族「アマゾーン」を彷彿(ほうふつ)とさせ、力強さを感じさせる。
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「ル サージュ」で刺繍を施したドレスは、非常に繊細な「ヴェルミセリ(細長い装飾)」、「トラメ(縫い目)」などを使い、各国を象徴する旗をイメージさせるデザインで形成。アトリエで刺繍を担当する職人たちはそれをパズルのように組み合わせることで、各国間の結束を表現した。
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スイムウェアやボディスーツには、1920年代特有のスポーツウェアを表すストライプや小さな鏡で表現されたモザイク、シンプルかつミネラル感が溢れる刺繍が見られた。これは、シチリアの遺跡で世界遺産の「ヴィッラ・ロマーナ・デル・カサーレ」にあるモザイク画に描かれた女性アスリート像からインスピレーションを受けたもので、衣装だけでなく、スポーツが女性解放の重要な要素になったことを表現している。
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