株価上昇だけを追い求める経営にはリスクも


Risk Management
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株価を引き上げるための代表的な手法の一つが、自社株買いです。自社株買いとは文字通り、自社の株を株式市場から買い戻すことを指します。自社株買いを行うことにより、株式市場に流通する株式が減少することになります。要は、投資家が買える株式の絶対数が減ることになるわけです。

モノの値段は需要と供給のバランスで決まります。自社株買いの実施前より株式の供給量は減るため、需要が変わらなければ必然的に株価は上昇するのです。また、自社株買いは買いやすいタイミング、つまり株価が比較的割安なタイミングで行われるため、その後の株価上昇を期待して投資家からの買い注文が入りやすくなります。結果的に、株価が上昇しやすくなるわけです。

ただし、自社株買いは巨額の現金が動くため、失敗した時の財務リスクは大きくなります。最近では、アメリカの航空機大手・ボーイング社の失敗が特に有名です。ボーイング社が株価上昇を狙って2014~2019年の間に行った自社株買いは総額で406億ドル。当時は1ドル=110円から120円だったため、1ドル=110円で計算しても約4兆5000億円もの資金を投入しています。

そのかいもあって、2014年初に140ドル程度だったボーイング社の株価は2019年3月1日には446ドルにまで上昇。ボーイング社の自社株買いは成功裏に終わったかのように見えました。ところがそんな矢先の新型コロナウイルスの流行。株価は急落し、4兆円を超える多額の現金を投入したにもかかわらず株価暴落により思ったようなリターンが受け取れず、ボーイング社は一時、債務超過に陥りました。

企業の価値を測る指標として株価は把握しているけれど、時価総額は重視していなかったという方も多いのではないでしょうか。株価とともに時価総額を把握することで、より正しく企業価値を測れるようになります。

時価総額を理解することは、投資を行う際のリスクを減らせることはもちろん、就職・転職時に企業の将来性を判断できるなど、投資家以外のさまざまな方にも多くのメリットがあることだと言えるでしょう。この機会にぜひ、注目してみてください。