バノフィーパイというお菓子をご存じでしょうか。バナナの入った甘いフィリングに、コーヒーの苦味が効いた生クリームがのった、このパイ。日本では知名度が低いですが、イギリスのティールームやカフェでは大人気の一品です。一度食べたら、また食べたくなる本場の味を、イギリス菓子研究家でパティシエのTomoさんに教えていただきます。
バナナとトフィーの甘い出合い
〈バノフィー(Banoffee)〉とは、〈バナナ(banana)〉と〈トフィー(toffee)〉を合わせた造語です。トフィーはキャラメルのようなもので、バナナとキャラメル、と聞くだけで、その美味しさが想像できるでしょう?
このバノフィーパイの最大の特徴は、コンデンスミルクを缶ごとコトコト煮て作る、トフィーソース。このキャラメルのような甘いソースを、ショートクラストペイストリーというパイ生地、日本で言うところのタルト生地に流し、バナナを敷き詰めて、その上にコーヒー風味の生クリームをたっぷりのせる。そして仕上げに、クリームの上に砕いたコーヒー豆をパラパラと振りかける。これが、バノフィーパイのオリジナルレシピです。
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パイ誕生の秘密
さて、この大人気パイはどのようにして生まれたのでしょう?
このパイが誕生したのは、1971年。ロンドンから南に下ったイーストサセックス州の小さな村、ジェビントン にある〈ハングリーモンク〉というレストランでのことでした。 店の新メニューを考えていた、オーナーのナイジェルさんとシェフのイアンさん。参考にしたのは、アメリカの〈コーヒートフィーパイ〉というものでした。そのパイをもとに、オレンジやリンゴなどを合わせて独自のパイを試作しますが、最終的に、これだ、と思ったのはバナナ。バナナがぴったりと合ったのです。
さて、この新しいお菓子を〈バノフィーパイ〉としてレストランのデザートに出したところ、これが大ヒット! それからというもの、イギリス中にバノフィーパイを模したものが出てきます。コーヒー風味の生クリームの代わりに普通の生クリームだったり、パイ生地が簡単にできるビスケットタイプだったり、上にかけてあるのが削ったチョコレートだったり。数々のバリエーションが生まれたのです。