日経平均は最高値更新「プロが実際に買った&狙っている」高配当銘柄。株価の上昇も見込める

◆日経平均が最高値を更新、その理由とは


 7月9日の東証は力強く、日経平均の終値は、4万1580円17銭。東京証券取引所に年初のような活気が戻ってきた。

 3月につけた日経平均の史上最高値を6月の最終週から再び力強くトライし、株式市場は再び活況に満ちている。それも、今年の3月までの株式市場の高騰は、主に半導体関連を主軸にしたものであったのだが、この6月以降のものは、それ以外の幅広い銘柄にも買いが入った。本当の全面高である。そのため、やっとTOPIXも、1989年12月の史上最高値を更新した。

 アメリカはエヌビディアを中心とするAI関連から、ナスダックを中心に史上最高値をつけているが、日本では3月以降は低調だった半導体関連だけでなく、グロース株まで買われるようになったというわけだ。

 きっかけは6月まで売り越してきた海外勢が再び日本株を買い越していることだ。なぜ彼らが戻ってきたか。

 その理由については、さまざまな憶測が流れているが、バイデン大統領とトランブ前大統領の第1回テレビ討論会のあとで、ドナルド・トランプとバイデンとの支持率の差が拡がり、トランプ政権の可能性が高まったこと。

 となると、中国との貿易摩擦が再び激化する可能性があるということから、中国株投資へ再び見直しが入ったというのが有力だ。

 中国はそれでなくても、EUから今後の輸出品の主軸としようとしていたEV車に対して、中国政府の不当な補助金によって作られた低価格車と判断され、大幅な追加関税をかけられた。中国は、欧米資本主義諸国とロシアやグローバルサウスなどの間で賢く立ち回っているように自らは思っているかもしれないが、欧米諸国との溝はますます深まっている。

◆英仏、二つの国政選挙が無事に終結

 また、この5月末から6月にかけては、主要国に政治的な不透明感が増し、マーケットを覆った。すなわち、英国、フランスで突如実施されることになった二つの国政選挙である。それが無事に終わり、これらの不確定要素が消えただけでなく、心配されたフランスでの反EUの極右政権の台頭もなんとか抑えることができたことも大きい。

 第1回投票で極右の国民連合(旧国民戦線)がフランス政治の中枢を奪うのではないか。それによって、イギリスの離脱のあと、ドイツとフランスの両国で何とか保っている欧州連合の絆が空中分解する可能性が心配されたのだ。

 この懸念がひとまず収まっただけでなく、イギリスで政権を取った労働党政権が掲げる経済政策の柱の一つは、EUとの関係修復である。

 また、欧米強硬派だったライシ前大統領の突然のヘリコプター墜落事故による死去で行われることになった、イランの大統領選挙で穏健派が勝利したことも、世界への安定感を増す。もちろんウクライナとガザ情勢はあるし、何といっても4か月後の秋のアメリカの大統領選挙もある。しかし、フランス、イギリス、そして、イランでの不確定要素が収まったことは大きい。

◆日本の株式市場、夏場はどうなる?


 こうして7月は夏枯れ相場になるどころか、活況を示す日本市場であるが、このまま8月を迎えることができるのであろうか?

 少なくとも7月後半に入ると、市場は7月末に予定されている日本銀行の政策決定会合での利上げと、アメリカ連邦準備制度理事会での利下げに対する姿勢に注目するようになるだろう。

 さて、そんな中で、日本の株式市場で注目を集める銘柄のキーワードはなんであろうか?デイトレやスイングトレードをする向きは別として、3月からの日本株の主役のひとつは、高配当銘柄と魅力的な株主優待だった。

 証券会社が発表する新NISAの人気銘柄ランキングでも常に上位につけている。3月以降の株価が上がらない中でも、多くの投資家が買い続けてきた。この流れは今後も続くだろう。

 しかし、そこには大きなジレンマがある。高配当株が人気を集めて買われるごとに、当然のごとく株価は上がり、配当利回りはどんどん低くなっていくことだ。

◆株価が上がると配当利回りが下がるジレンマ

 高配当株の筆頭だった、JT(日本たばこ/2914)など、かつては7%台もあった配当利回りが4%ぎりぎりまで下がってしまった。JTの配当は増配が続いているのだが、それ以上に株価が上がってしまうのだ。

 私がJTの投資を本格的に始めたのは2023年だったが、平均的な購入株価は3000円ほど。単元で30万円程度で配当利回りは6%台半ばだったものが、2024年には株価は4500円まで上がった。

 JTの権利付最終日は6月と12月。1株あたりの配当は194円と高い。高い配当をもらい続けるべきか、含み益をそのまま放置するのではなく、売却して実現益として手にするべきか? 多くの投資家も悩む課題だ。

 私は結局売却することにした。

 JTはかつて2016年から約4年間、株価が下げ続けたという過去がある。さらに、長期的に、果たしてたばこ産業は成長していくのだろうか?と考えると大きな疑問が残った。

 私は、たばこ産業が成長産業だと考えて投資したのではなく、高配当銘柄だから投資したのだ。そして、私は2024年の5月に最後まで所有していた100株も売却し利益を確定させた。

◆投資のプロが狙う高配当銘柄

 株式投資は買うのも難しいが、それ以上に売り時を見定めるのは難しいものだ。

 売却した資金の一部で、今やJTよりも配当利回りの高い、日本製鉄(5401)を購入することにした。7月1日の終値ベースで、JTの配当利回りは4.39%、日本製鉄は4.63%なのだ。

  

 鉄鋼は経済低迷に苦しむ中国での過剰生産によって世界的な価格は低迷している。決して絶好調ではないのだが、日本製鉄には株価を押し上げる可能性のある材料がある。

 それは、USスティールの買収だ。基本的な合意がなされたまま、先に進まないのは、ご存知のように、アメリカ大統領選挙の両候補者から、この買収に対してネガティブな発言が出ているからだ。しかし、簡単にこの買収話がポシャると考えている関係者は多くない。

 また、日本製鉄だけでなく、鉄鋼の大手3社は軒並み配当利回りがいい。日経平均に採用されているJFE(5411)は同じく7月1日終値で4.68%、神戸製鋼(5406)も4.46%と、ともに4%を大きく超えている。

 日本製鉄以外にも投資をした。それは、自動車会社だ。

 日野自動車の不祥事もあってライバル会社のいすゞ自動車(7202)は業績を上げてきた。最初にいすゞを買ったときは自動車会社の中での配当利回りの良さだったが、それは今も健在で4.2%ほどある。

 また、一時2000円台もあったものの、最近1700円まで落ちているホンダ(7267)は配当利回りが4%もある。ホンダの1株利益は207円ほどあり、対する配当の68円は無理した水準ではない。PERは8.19、PBRは0.7と指標も悪くない。何しろ二輪車では世界首位の企業なのだ。ということで、ホンダもJTの売却資金で購入した銘柄の一つだ。

◆フィンテックに強い丸井グループも

 また、日経平均採用銘柄の一つ、丸井G(8252)は今もっとも気になっている銘柄の一つだ。20世紀は物販が中心だったが、今やフィンテックにも強い企業でもある。

 長年培った顧客層の厚さ、与信などのノウハウもあるのだろう。

 金融が軒並み伸びている中で、もっと上昇していいのではないかと考えている。

 また、過去の配当実績を見ていると、実質的な累進配当政策の銘柄と言っても過言でない。株価のトレンドは、上下を繰り返しながらも月足を見れば、2020年に底を打ち、上昇トレンドの中にあることもわかる。

 週足や日足に視点を変えて、上下波動の下のほうで拾ってみることにした。配当利回りは4.5%を上回る水準にあることが打診買いをしてみる決定打になったのだ。

 日本の株価は歴史的な高水準にある。

 しかし、これからも一直線に右肩上がりで上昇すると断言できない以上、株価上昇でのキャピタルゲインも狙え、また、思ったように株価が上がってくれない局面でも高配当のインカムゲインを楽しめる両面作戦を狙える二刀流の銘柄に注目していきたいと考えている。

※株式投資はご自分の判断と責任に基づいておこなってください。

<文/佐藤治彦 チャート/googleファイナンス>

【佐藤治彦】

経済評論家、ジャーナリスト。1961年、東京都生まれ。慶應義塾大学商学部卒業、東京大学社会情報研究所教育部修了。JPモルガン、チェースマンハッタン銀行ではデリバティブを担当。その後、企業コンサルタント、放送作家などを経て現職。著書に『つみたてよりも個別株! 新NISAこの10銘柄を買いなさい!』、『年収300万~700万円 普通の人が老後まで安心して暮らすためのお金の話』、『しあわせとお金の距離について』、『安心・安全・確実な投資の教科書』など多数 twitter:@SatoHaruhiko