韓国の東南部に位置し、慶尚北道(キョンサンプクト)を代表する都市、安東(アンドン)は、韓国の中でも昔から続く独特な雰囲気の味わえる場所として知られている。韓国の精神文化に触れながら、安東とその周辺の魅力あふれる人気スポットを紹介する。(取材協力:韓国観光公社)
ソウルから高速鉄道(KTX/SRT)で2時間ほどの場所にある安東は、韓国の精神文化を育む儒教文化が栄えた場所として有名だ。一方、様々な韓国ドラマのロケやK-POPのスターの撮影にも使われるなど、韓国の今と昔の顔を併せ持つ、とてもユニークな地域でもある。
おとぎ話のような河回村(ハフェマウル)
河回村の家屋
2010年に世界遺産に登録された河回村は、人々の生活が現代にも息づく生きた遺産。家屋も外観の瓦屋根やわらぶきはそのまま残すことで景観を保ちつつ、現在の生活に合わせて室内は今風になっている。1999年にはイギリスのエリザベス2世(1926~2022年)、2005年にアメリカのジョージ・ブッシュ大統領(1924~2018年)、そして2019年にはエリザベス女王の次男アンドルー王子が訪問した観光地としても世界的に有名となった。
朝鮮で領議政(現在の首相に相当する位)を務めた韓国の伝統的な氏族「柳氏」が長い歳月をかけて形作ってきた村で、韓国の伝統的な生活文化と建築様式を知ることができる。
河回村を囲う洛東江
韓国最長の川である洛東江が村の周りを囲むようにS字を描いて流れていることから「河回村」と呼ばれており、村の家々は洛東江の方角に向いて建てられている。
河回村の中心部に位置する御神木とその前にたたずむ和やかな表情の仮面彫像
村の中心部は少し高くなっており、 そこには樹齢600年以上の立派なケヤキがそびえ立つ。この御神木は子どもを授かり、出産と成長をもたらすと伝わっており、人々は祈りを捧げていた。
河回村にある建物
石垣に覆われ、ひっそりとたたずむ建物は可愛らしい。長く受け継がれるこの街並みは、まるで物語の世界のようだ。
建物の入り口にある「穴」
村の奥まで歩いていくと、建物の入り口に掘られたようにも見える穴のある家に出会う。かつて村が繁栄した際に財産や地位のある村人たちは自分たちだけが豊かな暮らしをしていてはいけないと、人々が受け取れるようにその中にお金などを入れていたという。まさに韓国の精神文化を象徴する家だ。
仮面を販売する店
また河回村に伝わる仮面劇も有名だ。上下関係が厳しい社会の中で、仮面をつけるとみんなが平等になり、自分より位が上の人に普段言えないことも話すことができるとして重宝されたらしく、両班(貴族)階級をこき下ろすようなコミカルな内容の仮面劇が伝承されている。劇で使われる仮面はこの地が生んだ名産品として販売されている。
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「月映橋(ウォリョンギョ)」でひと味違った体験を
韓国最大規模の木柵橋「月映橋」は安東市を代表する夜景ポット。韓国観光公社が選んだ「夜間観光100選」の一つ。ここでは月の形をしたムーンボートに乗って、非日常な景色を堪能できる。
月映橋の夜景
慶尚北道安東市象牙洞と城谷洞をつなぐ安東湖にかけられた月映橋は2003年に開通した。長さ387メートル・幅3.6メートルの、橋の真ん中にある月映亭は、夜景を写真に収める人でにぎわうスポット。近くにはゆったりとくつろげるカフェやお土産店も。
月映橋の近くにあるカフェ「月映堂(ウォリョンダン)」
日没後のムーンボート(写真左)と月映橋
美しい月映橋は、この地域に暮らしていた夫婦の永遠の愛の物語が伝わる橋として有名。そんなストーリーに思いをはせながら、街の喧騒から離れてムーンボートに乗る。好きな音楽を聴きながら自分だけの世界を作って楽しむのもいい 。ひんやりとした湖の上で特別な時間を。 桜の時期はまた一段ときれいだそうだ。
夕暮れのムーンボートと月映橋