韓国の東南部に位置し、慶尚北道(キョンサンプクト)を代表する都市、安東(アンドン)は、韓国の中でも昔から続く独特な雰囲気の味わえる場所として知られている。韓国の精神文化に触れながら、安東とその周辺の魅力あふれる人気スポットを紹介する。(取材協力:韓国観光公社)
頭も心も空っぽに。思いにふける大邱(テグ)の「思惟園(サユウォン)」
思惟園の入り口にて
安東から高速バスで約1時間半の大邱(テグ)にあるのが、人気スポットの「思惟園」だ。
自分を振り返って深く考える、 真の「思惟」がコンセプトの庭園。「建築界のノーベル賞」とも呼ばれるプリツカー賞を受賞したポルトガルの代表建築家、アルヴァロ・シザをはじめ、韓国・日本・中国のアーティストによって創造された空間だ。
大ヒットした韓国ドラマ『涙の女王』のロケ地として有名となり、今では予約しないと入れないほどに。ドラマのロケ地としての魅力だけではなく、それ以上に訪れる価値がある、自然と建築物の調和を楽しみたい。
ウォーキングを楽しめる思惟園の一本道
入園すると、一本道を囲うように生い茂った植物たちが迎えてくれる。緑豊かな自然環境の中を歩く癒やしの場「K-ウェルネス観光地」として人気を集めているという。コースは複数あり、全体を回りきるには3時間ほどかかる。
思惟園では素足でウォーキングを楽しむエリアがちょっとした人気
麻の布を敷き詰めた道はふかふかしており、日本語で「おばさん」を意味する“아줌마(アジュンマ)”の間では素足で歩くことがはやっているそうだ。靴を脱いで素足で大地に触れ、自然と自分が一体となった気持ちが味わえるという絶好のアーシングスポットだ。
「忘憂亭」という名のトイレも思惟園ならでは
「忘憂亭」という名の黒い建物があったので立ち寄ってみると、なんとトイレだった。単に用を足すだけではなく、悩みを忘れるというコンセプト。秋は紅葉も楽しめる。精神を休めるというテーマのために細部も怠らない。
高台からの思惟園の眺め
ウォーキングを楽しみ、今までたどってきた道を眺める。日光に温められた木のベンチに座りながら、小鳥のさえずりと小川のせせらぎに耳を傾ける。山のひだを目でなぞり、ほのかに漂う花の香りを楽しんで、改めて「思考の場」を五感で体感できる。
ヨガや瞑想ができる絶景スポット
ドラマで話題になっている「思惟園」だが、担当者によると今後はドラマ撮影を予定しておらず、本来の哲学を理解してもらい、長く愛してほしいという。ここで静かで穏やかな時を過ごし、日頃の心身の疲れもとりのぞきたい。
エンタメ、ポップカルチャーが人気の韓国も、朝鮮王朝から築き上げられてきた歴史や守り抜かれた精神文化を体験できる場所にあふれている。そんな場所に身を置き時の流れを感じながら、心のデトックスをするのもいいかもしれない。まだまだ知られていない場所を訪ね歩き、さまざまな「発見」を楽しんでみては。
text: Haruka Watanabe
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