ずっと血圧が低かったのに更年期前後から高血圧になった、という女性は少なくありません。これは女性ホルモンの減少やストレスも血圧を上げる要因となるため。更年期高血圧の仕組みを、高血圧・糖尿病などの生活習慣病を専門とする工藤内科院長の工藤孝文先生に聞きました。

監修/工藤孝文先生
工藤内科院長。福岡大学医学部卒業後、アイルランド、オーストラリアへ留学し、帰国後、大学病院などを経て現職。糖尿病・ダイエット指導・漢方治療を専門とし「ガッテン!」(NHK)、「世界一受けたい授業」(日本テレビ)等メディア出演多数。『疲れない大百科』(ワニブックス)、『おいしく飲んでみるみるやせる 緑茶コーヒーダイエット』(日本実業出版社)等著書多数。

そもそも「高血圧」はどんな状態?

血液が血管の壁を押す圧力のこと。高血圧は血管障害の要因に



心臓は収縮と拡張を繰り返しながら、1日に約10万回も血液を押し出します。血圧とは心臓から押し出された血液が血管の壁を押す圧力のことをいいます。

血圧値は以下のように分類されます。血圧は収縮期血圧(最高血圧)が120未満、拡張期血圧(最低血圧)が80未満が正常とされています。正常高値血圧は、高血圧の一歩手前で注意が必要なレベルのことをいいます。高血圧にはⅠ度、Ⅱ度、Ⅲ度の3段階に分けられます。

■成人における血圧値の分類(mmHg)

分類診察室血圧診察室血圧家庭血圧家庭血圧収縮期血圧
(最高血圧)拡張期血圧
(最低血圧)収縮期血圧
(最高血圧)拡張期血圧
(最低血圧)正常血圧<120<80<115<75正常高値血圧120-129<80115~124<75高値血圧130-13980ー89125~13475~84Ⅰ度高血圧140ー15990ー99135~14485~89Ⅱ度高血圧160ー179100ー109145~15990~99Ⅲ度高血圧≧180≧110≧160≧100※日本高血圧学会「高血圧治療ガイドライン2019」より

※血圧は条件によって変化するため、病院・クリニックなどで測る血圧を診察室血圧、自宅で自分で測る血圧を家庭血圧と呼びます。

血圧の単位はmmHg(ミリメートル・エイチジー)。水銀式の血圧計の目盛りに基づいていて、目盛りが1mm上がると「1mmHg」となります。

水圧に換算すると、水銀の比重は水の13.6倍なので、最高血圧が120mmHgであれば噴水なら約1.63mの高さまで吹き上がる計算に。高血圧ラインである最高血圧140mmHgは噴水で約2.17mの高さになります。

高血圧とは、それほどの強い圧力が毎日血管にかかっている状態。血液の勢いで血管はダメージを受け、内壁が傷ついたり弾力が失われて硬くなったりして、動脈硬化などの血管障害につながります。

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更年期高血圧の特徴は?



高血圧は体質、塩分の過剰摂取、運動不足、肥満、加齢、ストレスなどさまざまな要因が重なって起こります。「更年期」もそうした要因の1つ。厚生労働省の調査によると、高血圧症有病者の女性の割合は、30代=4%、40代=12.7%、50代=36.3%と年齢が上がるにつれて上昇しています(平成22年 国民健康・栄養調査結果の概要)。

更年期高血圧は女性ホルモンや自律神経のバランスと関わっているため、頭痛やめまいといった不調を伴うこともあります。ストレスで一時的に血圧が上昇するなど、不安定でメンタルに左右されやすいのも特徴の1つ。

そのため閉経後、更年期症状が落ち着いてくると、血圧が改善される人もいます。