優美な時計、さりげないデザイン、ジェンダーレス、新作時計のトレンドに注目

今春、スイスで開かれた「ウォッチズ&ワンダーズ ジュネーブ(WWG)」では、華やかな女性用の腕時計も数多く発表された。ここ数年、ケースサイズの小型化が進み、男女共用で着けられるジェンダーレスな商品が増えたことも影響しているのだろう。それらの中から要注目の新作を紹介しよう。

男と女のラグジュアリー・タイム

パテック フィリップはラグジュアリーウォッチの名作「ゴールデン・エリプス」の新作に、現行コレクションで初めてメタルのブレスレットを組み合わせた。チェーン・スタイルの繊細なブレスレットはローズゴールド製。363個のパーツから成り立ち、300個以上のリンクが手作業で組み立てられ、サイズ調整も可能だ。装着感も肌に吸い付くような滑らかさ。シックなエボニーブラック・ソレイユ文字盤とのコンビネーションが絶妙で、男女で共用しても違和感のないドレスウォッチに仕上がっている。


「ゴールデン・エリプス」パテック フィリップ(パテック フィリップ ジャパン・インフォメーションセンター)/03-3255-8109

ヴァン クリーフ&アーペルは「レディ アーペル ブリーズ デテ ウォッチ」で、メゾンの培ってきた技術を駆使し、自然を称える新作を披露した。8時位置にあるボタンを押すと、プリカジュール・エナメルで表現された2羽の蝶が飛び立ち、文字盤上の花や茎を揺らしながら時を告げる仕掛け。このメゾンならではのロマンチックな一本で、女性の優雅さを引き立てる。


「レディ アーペル ブリーズ デテ ウォッチ」ヴァン クリーフ&アーペル(ヴァン クリーフ&アーペル ル デスク)/0120-10-1906

シャネルは今年、クチュールの世界に焦点を当てた新作を披露した。例えば、「プルミエール リボン クチュール」は、採寸に使うメジャーをモチーフにした2連のブラックレザーストラップを組み合わせた。3時位置にはマドモアゼル・シャネルのチャームをセットして、遊び心も感じさせる一本だ。


「プルミエール リボン クチュール」(数量限定)シャネル(カスタマーケア)/0120-525-519

エルメスは女性用のスポーツウォッチとも言える「エルメス カット」をリリース。サテンとポリッシュ仕上げの円形のケースは奇をてらわないデザインで、1時と2時位置の間に設けたリューズがアクセントになっており、仕事や旅先でも映える守備範囲の広い腕時計だ。ケースの直径は36ミリで、シンプルなステンレススティール製のモデルは男性が着けても似合いそう。


「エルメス カット」エルメス(エルメスジャポン)/03-3569-3300
photo: ©Joël Von Allmen

ロレックスの「デイデイト 40」もケースの直径が文字通り40ミリあり、男女で共用できそうなモデルだ。バゲットカットのダイヤモンドをあしらった、新しい文字盤にはマザーオブパールが使われているが、派手さはなく、3列リンクのプレジデントブレスレットとの組み合わせがそこはかとなく気品を感じさせる。


「デイデイト 40」ロレックス(日本ロレックス)/0120-929-570

タグ・ホイヤーからもユニセックスで愛用できる一本を見つけた。「タグ・ホイヤー カレラ デイト」の新作。1963年に発表された初代カレラを踏襲し、36ミリのケース径で3モデルを発表。中でも、コッパーダイヤルのモデルはシックな雰囲気で、スーツ姿の男性がビジネスで着けても違和感がない。


「タグ・ホイヤー カレラ デイト」タグ・ホイヤー(LVMHウォッチ・ジュエリー ジャパン タグ・ホイヤー)/03-5635-7030

大判の時計で知られるウブロもケース径38ミリの「ビッグ・バン インテグレーテッド タイムオンリー」をリリース。クラシックなイメージが強調され、商品のビジュアルでも男女が同じ時計を着けているクリエイティブとなっており、この新作がジェンダーレスであることを強調した。


「ビッグ・バン インテグレーテッド タイムオンリー キングゴールド」ウブロ(LVMHウォッチ・ジュエリー ジャパン ウブロ)/03-5635-7055

装いと同様、時計のデザインも「らしさ」を強調しないジェンダーレスが進んでいるようだ。これ見よがしではない「クワイエット・ラグジュアリー」な意匠が新作時計の大きな流れになっていることも影響しているのだろう。女性を機械式時計の市場に引き寄せるべく、その入り口となる男女共用で愛用できる時計の開発は今後も広がっていきそうだ。

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優美な時計を、優美な場所で

WWGは「パレクスポ」と呼ばれる広大な見本市会場に加え、ジュネーブ市内に点在する各メゾンのブティックなどでも独自のイベントが開かれるようになり、4月前半は、街全体が「時計一色」に染まる。さらにWWG に参加していないメゾンもこの時期に合わせ、独自の会場で新作を披露している。

レマン湖畔の高級ホテルで展示会を行ったのはブルガリ。「セルペンティ トゥボガス」で、建築家の安藤忠雄さんとコラボレーションした限定モデル=08を見せた。ブルガリのアンバサダーの森星さんがこのモデルを着けた動画も公開されて注目を集めた。さらにケースの厚さがわずか1.7ミリの「オクト フィニッシモ ウルトラ COSC」=09も発表。優美なモデルから超絶時計までメゾンの幅広い開発能力をアピールした。


ブルガリのアンバサダーの森星さんが着用した「セルペンティ トゥボガス 安藤忠雄 限定モデル」ブルガリ(ブルガリ ジャパン)/0120-030-142


「オクト フィニッシモ ウルトラ COSC」ブルガリ(ブルガリ ジャパン)/0120-030-142

グッチは、アルプスを一望できるジュネーブ市内の瀟洒(しょうしゃ)なヴィラを借り切って、新作を見せた。今回発表したのが「グッチ 25H ミニッツリピーター」。三つのハンマーを備え、異なる音で時刻を示す「カリヨン」タイプの複雑機能を搭載し、ブランドのハイウォッチメイキングにかける「本気ぶり」をうかがわせた。


「グッチ 25H ミニッツリピーター」グッチ(グッチ ジャパン クライアントサービス)/0120-99-2177

フランク ミュラーもジュネーブ郊外にある自社アトリエで新作を披露した。中でも注目を集めたのが「グランド セントラル トゥールビヨン スケルトン ダイヤモンド」。中央に直径17・7ミリの巨大なトゥールビヨンを配置し、スケルトン仕様にすることで複雑な機構の華やかな美しさが際立った。


「グランド セントラル トゥールビヨン スケルトン ダイヤモンド」フランク ミュラー(フランク ミュラー ウォッチランド東京)/03-3549-1949

interview & text: Naohiko Takahashi

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