ロレックス投資の超基本「6世代ごとの違いと中古市場の評価」をプロが解説

―[腕時計投資家・斉藤由貴生]―

 腕時計投資家の斉藤由貴生です。

 高級腕時計で大人気の「ロレックス」でありますが、今、その全体像を把握するのはなかなか困難になっているかと思います。

 日本で「ロレックスブーム」といわれていた1990年代後半時点では、今よりラインナップ数がシンプルだったため、全体像を把握しやすかったといえます。しかし今では、世代、ラインナップ数が増えてしまったため、ロレックスの全体像を把握するのが難しくなっている部分があります。

 ということで今回は、ロレックスの各世代を解説。世代を把握することによって、ロレックスの全体像がだいぶつかみやすくなると思います。そして、全体像を把握することによって、「穴場モデル」を把握することや、「通な1本」を見つけることができることでしょう。

◆【4桁世代】一般的に手に入る中では最も古いモデル

 古い順にロレックス各世代を見ていきますが、最も古いといえるが『4桁世代』であります。

 本来、ロレックスの歴史においてこの『4桁世代』は最も古い世代というわけではないのですが、現在の中古市場で“一般的に手に入るモデル”という観点では、『4桁』がもっとも古いといって差し支えないといえます。

 4桁世代は生産期間が長く、「いつからが4桁」というのも難しいのですが、いわゆる4桁世代といえるのが1960年ぐらいからだといえます。1960年より前にも、4桁リファレンスを持つモデルが存在しているのですが、それらは“普通の4桁”よりもさらに前といった感じ。1960年代以降モデルよりも何かと『特別感』が強いため、“より古い4桁”と区別したほうが分かりやすいといえます。

 4桁世代を分けるならば、

 ・1950年代=より古い4桁

 ・1960年代~1980年代=4桁世代

 というようになります。

 また、1980年代には「80年代ヴィンテージ」といえるモデルが登場しているため、1980年代は、「4桁」と「80年代ヴィンテージ」が混在していることになります。

◆中古相場で評価されるモデルは?

 中古相場でみた4桁世代の特徴は、「スポーツモデルが評価されている」という点であります。デイトジャストやデイデイトといった非・スポーツ系は、最も安価な中古相場となっている一方、スポーツ系は、最新モデルよりも高値となっていることが珍しくありません。

 ただ、4桁世代のスポーツモデルは、1990年代後半には「いつかは手に入れたい憧れモデル」といった印象だったのですが、近年では、「マニア向け」といった側面が強くなっているといえます。

 4桁世代は、生産期間が長いため、同じモデルでも「パーツ交換の有無」や「仕様違い」で相場が異なるため、4桁世代に詳しい人でないと手が出しづらいのです。また、モデルによっては正規メンテナンスの受付が不可となっているため、そういった点でも玄人向けとなっているといえます。

 ですから、4桁世代は「以前ほど人気度が高くない」といえるわけですが、この世代ならではのクラシカルな魅力は、今でも全く失われていません。4桁を狙うには少し勉強する必要がありますが、調べて買う価値のある世代だといえます。

<特に高値(中古相場300万円以上のステンレス素材。以下同様。)となっているモデル>

・デイトナ:797万円~(特にポール・ニューマンは高値。推定5000万円以上)

・赤シード:525万円~

・ミルガウス:389万円~

・エクスプローラー2:346万円~

※『1950年代のより古い4桁』は、いずれも高値(300万円以上)だといえる

◆【80年代ヴィンテージ】どことなくクラシカル感が漂う

 80年代ヴィンテージは、生産終了から10年ぐらいしか経過していなかった1990年代後半時点ですでに「ヴィンテージ品」として扱われていました。型番自体は5桁で、見た目も5桁世代に近いのですが、どことなく「クラシカル感」が漂うのが80年代ヴィンテージの特徴だといえます。

80年代ヴィンテージに該当するのは、初代GMTマスター2の16760や、エクスプローラー2の16550。また、サブマリーナーでは168000という6桁品番まで存在します。

<特に高値となっているモデル>

エクスプローラー2 アイボリー文字盤:349万円~

◆【5桁世代】最も手が出しやすい中古品?

 1989年頃から登場したモデルが『5桁世代』に分類できます。

 この世代からが、近代的な世代だと身近に感じる人が多いのではないでしょうか。ただ、2024年現在の中古相場では、スポーツ系において5桁世代が最も安価となっている傾向があります。

 5桁世代はシンプル、かつ完成されたデザインが魅力的。また、4桁世代のような「年式による仕様違い」が少なかったり、正規メンテンナンスも受け付けているため、最も手が出しやすい中古品といえるかもしれません。

 ただし、年式による仕様違いは2つ存在。1つは、ブレスレットのバックル部分が「シングル」から「ダブル」に変更された点。もう1つは、発光塗料が「トリチウム」から「ルミノバ」に変わった点です。ほぼ全てのモデルが、1998年頃を境目にこういった変更を実施されています。

 2010年代前半頃までは、「ダブル」や「ルミノバ」といった“新しさ”が人気でしたが、今では人気要素は逆転。現在の価値観では「シングル」や「トリチウム」のほうが評価されているといえます。

 なお、デイトナの116520とデイデイトの118238といったモデルは、リファレンス自体は6桁でありますが、この『5桁世代』に分類できるといえます。

<特に高値となっているモデル>

・デイトナ16520:338万円~(200タキメーターといった初期世代が特に高値:約788万円~)

・GMTマスター2 16710 M番:298万円~

・サブマリーナー 16610LV ビッグスイス+ファット4:286万円~

※300万円以上に達していないが、それに近いモデルも紹介

◆【6桁世代(116)】斬新な要素も市場ウケはいまいち

 2004年にデビューしたデイトジャストとターノグラフからが『6桁世代』に分類できます。

『6桁世代』では、それまでのロレックスでご法度ともいえるような要素が採用されている点であります。例えば、ターノグラフはデイト表示が赤文字なのですが、これは近代的なロレックスではこの世代のみ。ちなみに、日本限定バージョンでは文字が文字と針が緑色。こういった色使いは6桁世代ならではだといえます。

 また、サブマリーナーの青文字盤(青サブ)やエクスプローラーの214270は、6桁世代ならではのデザインが市場では受け入れられなかったためか、どちらもモデル中期あたりでマイナーチェンジが実施されています。

<特に高値となっているモデル>

・デイトナ 116500LN:384万円~

・緑サブ 116610LV:273万円~

◆【126世代(現行モデル)】前の世代に対してムーブメントが一新

 2015年デビューのデイデイトを皮切りに、新世代ムーブメントを搭載したモデルが現行の126世代といえます。

 この世代が出るまで、リファレンスの桁数から『4、5、6』というように分類できたのですが、126世代からは法則が変更。『116610LN(6桁)』の次は、『1116610LN(7桁)』かと思いきや、『126610LN(116⇒126)』という変化になったわけです。また、ディープシーは2018年に126660が登場した後、2022年に再度モデルチェンジ。現行品は136660となっているわけですが、こういったことを見ると、今後は「136⇒146⇒156」というように世代が進んでいくのだと思います。

 ちなみに、ここでは分かりやすく「126」としていますが、モデルによっては「124」という場合もあるため、厳密には「x2x」世代といえるかもしれません。

 この世代の特徴は、116世代に対してムーブメントが一新されているという点。また、デザインは5桁世代の法則に戻ったといえ、116世代にあったような「赤色デイト」などは採用されていないといえます。

<特に高値となっているモデル>

・デイトナ 126500LN:484万円~

・オイスターパーペチュアル 124300 ターコイズブルー文字盤:379万円~

・GMTマスター2 126720VTNR(ジュビリー):320万円~

・GMTマスター2 126710BLRO:319万円~

 以上、ロレックス各世代をざっくりお伝えしましたが、GMTマスターシリーズを例とすると以下のように分類できます。

【より古い4桁】6542

【4桁世代】1675


【80年代ヴィンテージ】16760


【5桁世代】16710


【6桁世代(116)】116710LN


【126世代】126710BLRO

 Xなどを見ていると現行品に関心がある人が多いように感じますが、中古品に目を向けると、その選択肢は大きく広がります。ロレックスの各世代を知ることによって、より豊かな時計選びができるかと思います。

<文/斉藤由貴生>

―[腕時計投資家・斉藤由貴生]―

【斉藤由貴生】

1986年生まれ。日本初の腕時計投資家として、「腕時計投資新聞」で執筆。母方の祖父はチャコット創業者、父は医者という裕福な家庭に生まれるが幼少期に両親が離婚。中学1年生の頃より、企業のホームページ作成業務を個人で請負い収入を得る。それを元手に高級腕時計を購入。その頃、買った値段より高く売る腕時計投資を考案し、時計の売買で資金を増やしていく。高校卒業後は就職、5年間の社会人経験を経てから筑波大学情報学群情報メディア創成学類に入学。お金を使わず贅沢する「ドケチ快適」のプロ。腕時計は買った値段より高く売却、ロールスロイスは実質10万円で購入。著書に『腕時計投資のすすめ』(イカロス出版)と『もう新品は買うな!』がある