世の中には、驚くような迷惑行為を平気でやる人がいる。同じような人が複数集まると、さらに脅威となることは言うまでもない。今回は、戦後間もない1948年から軽犯罪法違反とされている「立ション(立ち小便)」に悩む日野由子さん(仮名・40代)から話を聞いた。
やさしくて理解のある夫と結婚した由子さん。堅実な夫が結婚前から貯金してきたお金を頭金に、新築住宅を購入することになった。子どもを切望していた由子さんが新築住宅を購入するいちばんの条件は、実家に近いこと。
◆建売住宅の裏側に自動車修理工場
「ちょうど実家近くで、幽霊が出ると噂のあった施設が取り壊され、建売住宅として十数戸売り出されているのを見つけました。いわくつきの建物があったときとは雰囲気もまるで違う。周囲は静かで、日当たりもよく、閑静な住宅街という印象でした」
周辺には同じ時期に売り出された新築の建売住宅が多く、不動産屋も「古くから住んでいる口うるさい人もいない」などと耳打ちする。購入したい住宅の前に年季の入った個人経営の自動車修理工場があるのも把握していたが、顧客が出入りする正規の出入口は道路側。
「住宅側は修理工場の裏側でした。裏側にも簡易な扉はありましたが、扉のすぐ前にはフタのない溝。不動産屋さんも『いまは使っていないのでは?』と言うし、溝が工場と住宅街を隔てるカタチになっていたので干渉の心配はないように思いました」
◆工場の裏側から70代くらいの老人が…
そのような経緯があり、まだ売れていなかった自動車修理工場の裏側にある住宅の購入を決意。手続きを済ませて住むようになった。それが冬のこと。それから真冬のあいだは、新築の住宅で暖かく快適に過ごすことができた。
「でも少し暖かくなったある日、工場の裏口から70代ぐらいの老人が出てきたのです。工場の裏口には扉しかないので『裏口から出てきて、何をするんだろう?』という興味もありました。そして無意識にボーっと見ていたら、ズボンを降ろしはじめたのです」
そして、そのまま溝に向かって放尿……。掃き出し窓から見えたその光景に由子さんは驚がくし、放尿している男性から自分が見えている可能性も考えてサッとカーテンの陰に隠れたとか。しかも暖かくなってくると、ほかにも複数の老人が溝に放尿する姿を目撃するようになる。
◆ご近所トラブルに発展するのが怖くて静観
「私が住んでいる地域は田舎で山も多いので、山の中などで男性が立ション(立ち小便)しているのは何度か見たことがあります。でもそれも、私が本当に小さい頃。いまの時代に、当たり前のように溝へ向かってオシッコをする人がいるなんて驚きでした」
立ち小便は、れっきとした軽犯罪法違反。それを堂々と、複数人の男性がやっているのだ。由子さんはすぐに夫にも相談したが、「通報しても、オシッコだとそれまでに終わっているだろうし、我が家への実害もないからなぁ」と困惑するばかり。
「オシッコだけでなく、タバコを吸って工場へ戻る老人もいました。もちろん、タバコは溝へポイ捨て。動画を撮って警察に相談しようとも考えましたが、位置的に放尿の様子が見える住宅が限られていることもあり、ご近所トラブルに発展するのが怖くて諦めています」
◆なぜか気になって放尿を見てしまう
しかもある日、放尿をしている老人のひとりと目が合ってしまった由子さん。老人たちはそれ以降、由子さんを呼ぶかのように口笛を吹いてから放尿をするようになったという。そんな男性たちに嫌悪感や怒りを覚えつつも、気になってそっと覗いてしまうという由子さん。
「すごく嫌悪感を抱いているのに、気になって放尿を見てしまう自分のことも気持ち悪くて……。決して放尿する姿を見たいわけではないため、自分でも困惑しています。引っ越したくてもローンがたっぷり残っているし、通報も怖くてできないし、気がヘンになりそうです」
夫から、「昼間パートしたり友だちとランチや買い物に出かけたりしてみたら?」と提案されて由子さんも検討中とのことだが、まったく迷惑な話といえる。私たち自身も歳を重ねたとき、“迷惑老人”などと言われないようマナーを大切に常識的な振る舞いを心がけたいものだ。
<TEXT/夏川夏実>
【夏川夏実】
ワクワクを求めて全国徘徊中。幽霊と宇宙人の存在に怯えながらも、都市伝説には興味津々。さまざまな分野を取材したいと考え、常にネタを探し続けるフリーライター。Twitter:@natukawanatumi5