15年以上コンビニで働き続ける店員「仕事は増え続けるのに賃金は…」本部への恨み節を吐露

 一般社団法人日本フランチャイズチェーン協会が6月20日に公表した「JFAコンビニエンスストア統計調査月報」によると、全国のコンビニ店舗数は5万5641店舗。国民にとってコンビニは身近な存在と言えそうだ。

 生活インフラとしてなくてはならないコンビニ、その大手3社のうち1つで働くRさん。15年以上コンビニ勤務を続けているのは、コンビニの仕事に愛着もあるからだという。仕事に誇りを持っているからこそ、コンビニ業界は改善に動き出して欲しいと語る。

◆コンビニで働いていると「いまだにバカにされる」

「本来、全国どこでも店舗のあるような大手の会社に勤めている、と言ったら給料は良くていいはずなんですよね。でも本部はスタッフを使い捨てでやってきてしまった。だからいまだに『コンビニで働いています』っていうとバカにされるじゃないですか。僕はコンビニは日本の誇りであって、スタッフは専門職だと思ってるんです。だからこそ待遇を適正にして欲しい」

「コンビニ店員だからバカにされる」という状況はいまではかなり改善されているようにも思える。しかし、当事者からするとその実感がないようだ。

「現場の人が報われてほしい、という思いしかないんです。2010年代から本部が徴収するロイヤリティも変わってなくて、店の売り上げの半分以上を持って行ってしまうんです。少し異常だと思います。吸い上げるだけで、全然人件費も出してくれないし」

 Rさんが語る“本部”への疑問を詳しく聞いてみた。

◆発注した覚えのない商品が何箱も届く

「そのエリア一帯の店舗を統括する本部のSV(スーパーバイザー)という役割があり、その同士のせめぎあいがあって……ノルマもあるみたいなんですが、ある日突然、店に発注した覚えのない商品が何箱も届いていたりするんです。そういうSVが勝手にやってしまう事例というのが、ここ数年増えてきている気がします。支払いは店舗の口座からですから、本来は店長を通して欲しいんですが、それもない」

 連絡もなく大量に届いたその商品は、キャンペーン品でもなんでもない“通常の商品”であったという。

「今売る必要もないもので……普通に考えて急激に売れるはずがないんです。ただ、その商品が本部の重点品目になっていたり、競合他社が力を入れていたりする商品だったりすると、こちらとしても売らざるを得ないから、大量に送られてくるんです。バックヤードだってそんなに余裕があるわけではないですから、休憩スペースにも保管したりして。正直、『なんてことしてくれたんだ』とは思いました」

 商品代、人件費、水道光熱費もすべて店舗持ちの中で、現場を知らないSVや本部の“暴走”にRさんもやや疲弊ぎみだ。

◆コーヒーの販売する種類が増えて大変

「レジで販売するコーヒーも……これまではコーヒーの種類は限られていたんですよ。それを材料は全く一緒なのに、本部の発案で名前だけ変更されて。コーヒーの専門店だってここまで聞かないだろう、というくらい質問を増やさなければならなくなってしまった。お客さんにとっても不親切ですよね。レジにかかる時間も増えてしまって、お客さんをお待たせしてしまう」

 お客さん全員がスタッフと手早くスムーズにやりとりできるわけでもないという。

「回答する手間が増えてイラついている方もいますし、中には言葉がしゃべりづらいお客様もいるんです。それでも全員のお客さんに聞かないといけないルールですから……。お客さんにも負担をかけている気がして。毎朝コーヒーを買ってくれる車椅子の方もいるので、余計な基準を増やしてしまって、本当申し訳ないなって」

 人件費が上がらない中、業務の大変さが増す一方のコンビニの仕事。Rさんは「日本人が誰もやりたがらない仕事になってしまった」と自嘲する。

◆大変だけどコンビニで働き続ける理由は?

「昔はひきこもりの方なんかが社会に復帰しやすい仕事と言われていたんですよ。仕事をある程度覚えれば楽しい仕事ではあったんです。それを本部が売り上げの半分以上吸い上げる形にしてしまった。人件費は出さない中で、一つひとつ丁寧に接客しろ、その一方で何もかも作業を早くこなしなさない、というのを同時にやっている。矛盾がすごいんですよね」

「大手3社のうちどこか1社が先手を切って改善しないと、他も追従しないだろう」と冷静に分析するRさん。本部への疑念は拭えないままだが、それでも15年以上コンビニ勤務を続けてきた。

「地域に密着しているので、接客する中でお客様のことも知ることができて、社会勉強にもなります。自分なりに接客して、感謝されるとやはり嬉しいというのもありますし、いろいろなことを短い期間で変えていけるところに面白味も感じています。提供するサービスも全く違う中で、お客様によって接客も使い分ける必要があるので、それらに短期間で対応している。僕は同じことを毎日繰り返す仕事が苦手なので、例え大変だったとしても、コンビニの仕事は合ってはいるんでしょうね」

 本部の“無茶振り”に対し、自身の柔軟性をフルに発揮しつつ対応してきたRさん。大手3社は現場のスタッフになにもかも“丸投げ”するのではなく、改善に動き出して欲しいところだ。

<TEXT/延岡佑里子>

【延岡佑里子】

障害者雇用でIT企業に勤務しながらの兼業ライター、小説家。ビジネス実務法務検定2級、行政書士試験合格済み。資格マニアなのでいろいろ所持している。バキバキのASD(アスペルガー症候群)だが、パラレルキャリアライフを楽しんでいる。Xアカウント名:@writer_nobuoka