その土地でしか味わえない食や、ものづくりに出合うことは、旅における大きな楽しみのひとつ。さらに、その町に暮らす人たちが織り成すカルチャーに触れられれば、より一層、旅の思い出が心に刻まれるもの。訪れたのは、標高3000m級の山々が連なる北アルプス立山連峰の眺望が背景に広がる富山市。ここは「立山あおぐ特等席」といわれる。水などの天然資源や食が豊富で、暮らす人々も穏やか。この地では心なしか時の流れがゆっくりと感じられる。国内外の手工芸を扱う『林ショップ』を営む林悠介さんに聞いたおすすめの過ごし方とは。
Landscape_立山連峰”特等席”の町で過ごす至福の時間。
呉羽山の南部エリアとなる城山公園しらとり広場にある城山展望台(富山市呉羽町25)から眺めた立山連峰の夕景。さまざまな展望台がある市内では、呉羽山公園展望台が特に有名だが、林さんがおすすめするのは、ひとけも少ないこちらの展望台。「ちょうど手前に単線のJR高山線が走り、田んぼが広がり、その奥には神通川、市街地に住宅街、そして立山連峰と、ここから眺めると町の景色がグラデーションになっている様子が楽しめます」。日が沈みかけると、西日が山々に反射してピンク色に染まる。一方、朝は立山の方から日が昇り、時間で印象もまったく変わる。撮影をした5月初旬は、ちょうど水を張ったばかりの田んぼが鏡のように見える、美しい光景が広がっていた。
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Craftwork_機能性と佇まいを追求した作家の工房『流動研究所』と『お花畠窯』。
ミニマルで洗練された作品で人気を博すガラス作家、ピーター・アイビーさん。その工房『流動研究所』(富山市婦中町富崎4717−1)は、市の中心部から車で30分ほど走った長閑な集落にある。自宅と同様、工房も築70年ほどの古民家を自らデザインして改修した。
工程を重ね、ガラスの器を制作していく。工房の訪問や見学希望は事前予約が必要だが、ピーターさん曰く「今後は作業を間近で見られるような工房のオープンデーを設けたいと考えています」。
呉羽丘陵に位置する『お花畠窯』(富山市追分茶屋お花畠66)の陶芸家・高桑英隆さん。ふだん使いできる器や酒器、花器などを中心に作陶する。「凜とした中に、素朴な愛らしさがあって。絵付けもそうなのですが、独特の抜け感があるんですよね」と林さん。高桑さんの陶製の額縁に、林さんが中に飾る銅板作品を手がける共作展『陶額展』を開催するなど付き合いも深いという。
白磁や青磁が人気。工房には作品展示場も併設しており、購入も可能。