夢の億万長者を目指して一攫千金にかけるか、100万円~5000万円の高額金を狙うか。
1等と前後賞を合わせて7億円のサマージャンボ宝くじと、同5000万円のサマージャンボミニが2024年7月8日から発売された(8月8日まで)。
どんな組み合わせてジャンボとミニを買えばよいのか。確率と統計の専門家で、宝くじの大ファンでもあり、研究リポートを数多く発表している篠原拓也さんに「攻め方」を聞いた。
損得だけ考えると、一番賢い買い方は「1枚だけ買う」
<夢の億万長者か?現実の数千万円か? 「サマージャンボ」どう狙う…「宝くじ研究家」がすすめる組み合わせ(1)>の続きです。
――ところで、20~30年前になりますが、友人たちが十数人で宝くじを連番で買い、当たったら全員で分け合うという方法を試したことがありました。私は、1人で宝くじを楽しみたいので参加しませんでしたが。
それぞれが購入した番号を幹事が控えておき、仮に1等や7等が当たっても、すべて均等に分配するというやり方です。
多くの人間でまとめ買いをすれば、それだけ1等、2等があたる当たる確率が高まり、儲かるのではないかという計算ですが、こういう方法は儲かる可能性が高まりますか。
篠原拓也さん う~む。興味深い方法ですが、問題点が2つありますね。
まず、税金の問題。宝くじでは当せん金に所得税はかからないのですが、それを分配するとなると贈与税が発生する可能性があります。
贈与税の問題を差し置いても、損得の面で問題が生じます。当たる確率が高まっても、儲かる可能性が高まるとは限らないのです。むしろ、損をする可能性のほうが高まります。
――どういうことでしょうか。
篠原拓也さん 1枚300円の宝くじの期待値(平均賞金額)は約140円です。1枚買うごとに約160円損をするということです。だから、宝くじは平均的には、たくさん買うほど損をする額が大きくなる仕組みになっています。
友人グループが1等の当せん金をとった場合だけを考えられるのならば話は別ですが、平均的には損をする額が大きくなっています。じつは、損得の面だけで考えると、一番損が少ない賢い買い方は「1枚だけ買う」ことです。損が160円だけで済みますから。もっと賢い買い方は「買わないこと」です(笑)。
ただ、友人グループの方法から、実際に米国であった「宝くじを全部買ったら儲かるか?」という買い占めの出来事を思い出しました。
※参考:「宝くじを全部買ったら儲かるか?」
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「宝くじを全部買ったら儲かるか?」の顛末
――それは面白いですね。どんな計画ですか。
篠原拓也さん 1990年代、米バージニア州では、1口1ドルの数字選択式宝くじ(ロト)を販売していました。
購入者が1から44までの数字から6つを選び、すべて当たりの数字と一致していたら1等になります。当せん者がいなければ、1等の当せん金はキャリーオーバーになり、次回に繰り越されます。キャリーオーバーが続くと、莫大な当せん金額となります。
ロトの組み合わせは約700万通り。つまり、約700万ドル(現在のドル円相場で11億2000万円)あれば全部のくじの購入が可能になります。この点に目をつけ、宝くじ購入シンジケートが結成されました。彼らは2500人以上の人々から資金を募り、キャリーオーバーが積み重なる機会を待ちました。
1992年2月、2700万ドル(43億2000万円)のキャリーオーバーが発生した段階で、シンジケートは全部買いに動きました。ところが、購入途中でトラブルが発生、約500万通りしか購入できませんでした。
――結局、どうなったのですか。
篠原拓也さん もし、購入していないくじから1等が出たら大失敗です。また、1等のくじが複数出るリスクもあり、そうなれば1等を当てても当せん金は大きく目減りしてしまいます。
幸運にも、購入した宝くじの中から1等が出て、しかも1等はその1枚だけでした。シンジケートは2等や3等なども合わせて総額3000万ドル(48億円)以上を受け取りました。しかし、現在は数字選択のパターン数が増えており、全部買いは極めて困難になっています。
ラッキーだったとしかいいようがありません。大量買いなどという突拍子もないことを考えずに、ささやかに「宝くじ愛」を発揮して、心のドキドキ、ワクワクを楽しんでほしいと思います。