お気に入りのレストランに行くとき、意外と迷うのが洋服選び。
もちろん自分が一番きれいに見えて、気分があがる服がいい。さらに欲をいえば自分の個性が透けて見えるような、とっておきの一着を身にまといたいもの。
そこで本連載では、都会のグルメシーンを彩るファッションを紹介する。
今回登場するのは港区エリアに長く住む大橋美沙季さん。彼女が選ぶ思い出のレストランと装いを見ていこう。
▶前回:六本木の隠れ家鮨店に行くなら、華やかでシンプルな装いがおすすめ!美人経営者のコーデ術
大橋美沙季さん。神奈川県出身の30歳。明治大学卒業後、大手損保会社に就職。エステサロン勤務を経て現在は個人事業主として活動。
よく行くエリアはもっぱら港区全般。西麻布を中心に週4回は外食するほどの食通。趣味はサウナとピアノ。
港区らしいグルメな夜を過ごすとき
@『Merachi(メラキ)』
彼女が選んだ思い出のレストランは、西麻布交差点にほど近いイタリアン『Merachi(メラキ)』。
シェフの杉本功輔さんはイタリアをはじめとする海外で8年間修業したのち、銀座の一ツ星『FARO』でのスーシェフの経験を持つ凄腕。2021年現在の地に同店をオープンした。
多くの高級店がひしめき合うエリアで、繊細かつ愚直な料理に魅了された客がまた客を呼び、3年目を迎えた現在は既に予約困難店に。
『ミシュランガイド東京2024』に新設された「セレクテッドレストラン」にも選出されるなど、西麻布屈指の実力店だ。
そんな『Merachi』と、美食を求め港区を練り歩く大橋さんとの出合いは必然だ。グルメ仲間と同店へ訪れたのがきっかけだった。
「イタリアンの新店開拓をするなかで、とても記憶に残ったお店がここ『Merachi』でした。お料理が抜群に美味しいのはもちろん、とても素敵な雰囲気でお店の方も感じがよく、印象深かったんです。
私がいただいたのは土曜日限定のコース(¥20,000/2024年7月31日で終了)。前菜も一つひとつポーションが小さめながらしっかりしていて、たくさんの種類を楽しめました。そして大好きな白子やうに、パスタも3種類あって……。『こんなにいいお店があったんだ!』と、かなり感動しました」
そんな彼女の“グルメな夜”のファッションに早速フォーカス!
私の名店服①
ニットワンピース/「ロイヤルパーティー」
大橋さんが選んだのは、体のラインを妖艶に魅せるタイトなシルエットのワンピース。
左肩のオーガンジーリボンがアクセントになり、西麻布の夜にふさわしい華やかさをプラスする。
「夏らしい爽やかなイメージを意識しました。タイトですっきり見えるところがお気に入りのワンピースは、体の両サイドに黒のラインが入っていてワンポイントに。さらに黒バッグを合わせて全体を引き締めました」
お洒落イタリアン店でも浮かないように全体をシックにまとめながら、スリットからは程よく肌見せを。
私の名店服②
ブラックラムスキンが美しいLady Dior/「ディオール」
締め色で使用したのが「ディオール」のアイコニックなバッグ「レディ ディオール」。ブラックのラムスキンに「カナージュ」ステッチの質感は唯一無二の存在だ。
大橋さんは5年前に購入してからというもの愛用中だとか。
「都会でディナーをするときは、必ず小さめサイズのバッグを選びます。仕事では絶対に使用できないこのミニマム感に高揚を感じるので(笑)。
ブランドでいうと、『ルイ・ヴィトン』や『プラダ』ではなく、『ディオール』や『シャネル』がいい。ちょこんと持てるサイズ感のミニバッグが多くて好きなブランドです」
私の名店服③
ヴィンテージ アルハンブラ ペンダント/「ヴァン クリーフ&アーペル」
四つ葉のクローバーに着想を得た幸運のシンボル「ヴィンテージ アルハンブラ」。もはや説明不要な(!?)東カレ的王道ジュエリーの登場である。
約2年前に購入し、色はカーネリアンをセレクト。
「日頃からよく身につけるアイテムです。赤(カーネリアン)は、周りの友人とあまり被らないところも嬉しいポイント」
全身をモノトーンでまとめながら、顔周りのジュエリーにビビッドな色を持ってくるのは今すぐまねしたいテクニックだ。
彼女にとっての名店服とは
大橋さんの周りにいるグルメ仲間は、年齢や肩書、性別も多岐にわたる。
「経営者、会社員、インフルエンサー、元々芸能界で活躍していた方など、本当にいろいろ。みんな歩んできた人生が違うので、バックグラウンドやそれに基づく人生観を話す時間が楽しいですね」
そんな彼女にとって“名店服”とはどんな存在なのだろうか。
「ファッションはなりたい自分になるための一番の近道アイテムだと思います。
『綺麗な女の子になりたい』と思ったときに、ヘアメイクを勉強してダイエットや美容医療をして……だと時間もお金も必要じゃないですか。でもファッションはその瞬間に変身できる。
お洒落をしてお気に入りのレストランに行くことで、そこでの思い出に彩りが出ますね」
◆
デートをするときと女性同士で会うとき。それぞれ服装を変えますか?と聞いてみると「まったく変えないです」と即答。「スタイルが悪く見えるパンツは似合わない。いつもスカートにヒールです」と自らのスタイルを貫く姿勢は潔く格好いい!
これから経験してみたい“名店服”は、「シャネル」を身にまとい『ベージュ アラン・デュカス 東京』へ。思いっきりドレスアップをして『ジョエル・ロブション』や『スガラボ』へ。
「私ミーハーなんです」と笑うが、そんな野望こそがディナーシーンをさらに艶やかにするだろう。
私の思い出のレストラン
『Merachi(メラキ)』@西麻布
シェフ杉本功輔さんのルーツは、20代の7年半を過ごしたイタリアにある。
「イタリアのように肩肘張らない空間で食事をして、でも味とサービスはしっかりしている。そんな料理店をここ西麻布で作りたいと思いました」(杉本シェフ)
現在はおまかせコース(¥15,000・サ別)と土曜日限定のボリュームコース(¥20,000・サ別)を提供しているが、実は8月よりコース内容が一新。気になるその内容は――。
まずおまかせの小前菜3品。前菜・パスタ8種の中から好きな4品をセレクト。さらに4種ずつあるメインとドルチェから1品ずつ選び、全9品で¥16,000(サ別)というもの。
これには「おまかせメニューだけでなく、お客さま自身が食べたいものを楽しんでいただきたい」という杉本シェフならではの思いが込められている。
そんな彼が開店当時より「名刺代わりの料理」としているのが「アンチョビのブルスケッタ」だ。
「僕が料理人として最初に働いたのが南イタリアのサレルノという街でした。これはサレルノの郷土料理で、うちのスペシャリテです」と杉本シェフ。
バターが塗られたバケットの上にアンチョビを乗せて口へ運ぶと旨みがふわっと広がり、食指が動く。ここから展開されるコースの満足を予感させるのだ。
「揚げ衣にはウォッカを入れています。高温の油でウォッカがすぐに蒸発することで、その気泡がサクサクとした軽い食感を生み出す。
実山椒のタルタルは、和の要素を取り入れながらケッパーなども組み合わせてイタリアンにしています」(杉本シェフ)
想像以上のサクフワ太刀魚と鼻から抜ける実山椒の香りで、魅惑的なマリアージュに。
“モリーカ”とはイタリアの料理でパン粉を細かく炒ったもの。ニンニクとローズマリーで香りをつける。
「イタリアのふりかけですね。カリカリしているので食感のアクセントになります」(杉本シェフ)
料理はすべてコース(¥15,000~/2024年8月1日より¥16,000・サ別)の一例。
使いやすさ抜群のアラカルト営業も見逃すな!
コース終了後、毎日20時30分からはアラカルト営業をしているのも押さえておきたいポイントだ。
これは「好きなものを好きなだけ食べたい」という常連客の要望に応えたもの。同時に「予約が取れない店になりたくない」とシェフは言う。当日電話をして訪れるのも、もちろん行き当たりばったりにふらりと覗いてみるのもOKだ。
居心地、使い勝手ともに抜群な店は、西麻布ではかなり稀少である。
「僕、いい意味で西麻布っぽくないと言われるんです」と朗らかに笑う杉本シェフ。この親しみやすさこそが、同店が食にこなれた客を魅了し続ける要因だろう。
そんな彼の野望を聞いてみると「もう一度海外で挑戦したい」。西麻布の地から世界へ旅立つ日は、もうすぐそこかもしれない。
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撮影/品田健人