「クローゼットを開けたら人が…」特殊清掃人が“困った遺品”を激白。一番面倒なのは…

 超高齢社会に突入し、日々孤独死が増えていっている。2024年の警視庁のデータによると、年間約6.8万人が自宅で孤独死を迎えることになるという。そうなると、どうしても向き合わなきゃいけない問題としては、遺品をどうするかだ。一緒に暮らしていない家族が引き取るのか、それとも全てこちらで処分してもいいのか。

 都内を中心にさまざまな現場で特殊清掃を手がけるブルークリーン株式会社で働きながら、特殊清掃の実態を伝える登録者5万3000人以上のYouTubeチャンネル「特殊清掃チャンネル」を運営している鈴木亮太さんに現場作業で出てきて対応に困った遺品について話を聞いた。

◆クローゼットを開けたら“人”が!

 毎日、現場を清掃したり、遺品を整理していると、とんでもないモノに遭遇することは多々あるという。処分に困るものからびっくりして引いてしまうものまでさまざまだ。

「この前担当した現場で、ウォークインクローゼットを開けたら、急に人が現れたんです。『うわっ!』と最初は驚いたのですが、よく見ると人間の姿をしたリアルな人形でした。ラブドールと呼ばれているやつですね。こういう人形は高級なので業者に売ったらお金になるかとは思うのですが、なんせ中古品でどのような使い方をされてたのかわからないので……適切な形で処分します」

 そのまま捨てると、問題があるようで表面のシリコンを削り、骨組みを分解して、素材ごとに分けて適切な処理場へ運ぶようだ。その姿は見るも無残な形になる。

◆家族みたいな感じで大切にしていた

「ラブドールを解体してるときは、本当にやってはいけないことをしている気分になり、胸が痛みます。現場でラブドールを見かけることは多いのですが、キレイだったので、使い方としては性的に使用するのではなく、一緒に暮らしているという感覚だと思います。家族みたいな感じで大切にしているようでしたね。ソファに座りっぱなしになっていたり、ハンガーラックとして使ってたり。どうやら、洗濯した服を干すために使っていたようですね。ちょっと変わった使い方だなと思ったこともあります」

 孤独死の現場となると、一人暮らしの欲望が詰まった部屋になっていることは多い。大量のアダルトビデオ、アダルトグッズなど、依頼を受けた家族に報告できないような物もたくさん出てくるようだ。

「カバンや段ボールにパンパンにアダルトグッズが入っていて、先端が黄色く汚れている時があったんですよ。これは完全に使用済みだなと……。そういう時は心に来るものがありますね、自分で自分に使ってたんだろうなという所まで想像してしまって。そういう現場だと探せば探すほどいかがわしいものばかり出てくるんですよ。ビデオなんかも、タイトルが凄いものが多く、世間は広いなと感じます。個人の趣味の範囲なので自由だと思うのですが」

◆注射器やパイプが見つかることも

 いかがわしい品などはご家族に報告をするか迷うようだ。依頼主が精神的に不安定になっている場合もあるので、かなり気を使わなくてはいけない。なるべく依頼主や遺品の元持ち主のプライバシーを侵害しないように一線を引くように心がけている。だが、どんなものでも残しておいてくださいと言われた場合は遠慮なく依頼主へと渡すことになる。

「違法薬物を接種するために使うであろう注射器やパイプなどが見つかることもあるんですよ。現物は出てこないのですが。そういうのも勝手に捨てると問題なので、一度、依頼主のご家族に許可を取るときは心が痛みますね」

 そういった過激なもの以外に、皆が口をそろえて出てきて欲しくないと言う遺品がある。

「出てくると一番面倒なのが、耐火式の金庫です。大きければ大きいほど困ってしまいます。中に何が入っているかわからないし、大抵カギがどこにあるかわからず開けられないんですよ。そういう場合はカギを探して開けてから壊さなきゃいけないので、カギの大捜索が始まるんですよ。依頼主の許可を取って壊すという選択肢もあるのですが、壊すこともかなり大変なので……。また、現在は使用禁止のアスベスト素材で作られた金庫とかもあるので、自分たちだけの判断ではどうにも出来ない場合が多いです」

◆切っても切ることができない根深い問題

 基本的に金庫は、大きい工場へ持って行って処分するのだが、一台100キロ以上もある場合が多いので運び出すのにひと苦労だ。場合によっては、提携業社と共に油圧リフトやクレーン車を用いて作業を行う。

「どんな部屋でも、どんな遺品が出てきても僕たちはとにかくキレイにするのが仕事ですし、依頼主さんも悩みを抱えて依頼してくることが多いので、なるべく今の心境から少しでも前に進めるようなお手伝いができたらいいなと思っています。基本的には依頼された内容にきちんとコミットすることに全力を尽くしています」

 孤独死問題と遺品問題は切っても切ることができない根深い問題である。一人暮らしの場合は、なるべく遺品になりそうなものは早めに整理をするか、残された者に負担が行かないような生きざまを心がけるしかないのであろうか。

<構成/山崎尚哉>

【特殊清掃王すーさん】

(公社)日本ペストコントロール協会認証技能師。1992年、東京都大田区生まれ。地元の進学校を卒業後、様々な業種を経験し、孤独死・災害現場復旧のリーディングカンパニーである「ブルークリーン」の創業に参画。これまで官公庁から五つ星ホテルまで、さまざまな取引先から依頼を受け、現場作業を実施した経験を基に、YouTubeチャンネル「BLUE CLEAN【公式】」にて特殊清掃現場のリアルを配信中!趣味はプロレス観戦